Baa,Baa,Baa. | Week of Apr 20, 2026

【Weekly Picks】フードトレンドは「色」で決まる

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。

The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。

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Weekly Headlines

  1. フードトレンドは「色」で決まる

  2. バーはどこまで社会を支えるのか

  3. モールマキシング:Z世代がモールに戻る理由

  4. YSL Beautyが示す遊び方の変化

  5. 「すべてがアパレルになる」時代

  6. ビューティーブランドの「バッグチャーム」トレンド

  7. The New York Timesは「専門性の高い人材」にベットする

  8. 米国のレコード売上高が1983年以来初めて10億ドルに達した

  9. アメリカで広がる麻雀ブーム

  10. SXSWはいかに都市のソフトパワーとなったか

1. フードトレンドは「色」で決まる

フィリピン原産の紫芋「ウベ」の流行は、現代のフードトレンドが「味」よりも「SNS映え」によって駆動されることを象徴していると言える。現地では古くから親しまれてきた食材だが、アメリカでは長らく一般的ではなかった。それが近年、鮮やかな紫色という視覚的インパクトによって注目を集め、急速に広がった。背景にあるのは、食品業界における激しい差別化競争だ。企業はSNSや世界中の食文化から新たなフレーバーを発掘し、期間限定商品として次々に投入する。こうした手法は、「新しさ」を求め、それを共有することに価値を見出すミレニアル世代やZ世代に強く訴求する。その結果、消費者は常に「次の流行」を追い続けるようになるが、この競争はハイリスクでもある。ヒットすれば大きな売上を生む一方で、外れれば短期間で市場から姿を消すことになる。さらに近年は、異なる味を掛け合わせる「マッシュアップ」や、抹茶やキムチ、黒ごまといったアジア食材への関心の深化も進んでいる。興味深いのは、多くのウベ風味が実際の芋ではなく、食品化学によって再現されている点だ。味さえも効率的に設計される一方で、見た目の魅力だけが先行し、フィリピン由来という文化的背景が十分に認識されないという懸念もある。ウベの広がりは、食が単なる味覚体験から、視覚と共有を前提とした「コンテンツ」へと変化している現代の消費構造を浮き彫りにしている。

2. バーはどこまで社会を支えるのか

米国のバー業界では、ホームレス問題やメンタルヘルス危機、薬物依存といった社会課題への対応が、現場の重要な役割として浮上している。アトランタのバー「The Porter」では、オーナーのホジキンソン氏が近隣の路上生活者と日常的に関わりながら、緊急時には救急を要請し、非緊急時にはPAD(Policing Alternatives & Diversion Initiative)へとつなぐ判断を迫られる。ニューオーリンズの「Twelve Mile Limit」でも、精神的に不安定な来客に対し、危険性を見極めつつ可能な限り対等に接する姿勢が重視されている。こうした現場対応の背景には、警察や医療に依存した従来の対処では、当事者が再び路上に戻るという循環を断ち切れないという認識がある。そのため近年は、de-escalationやメンタルヘルス対応を学ぶトレーニングが広がり、バーテンダーの対人スキルを地域ケアへと応用する動きが進んでいる。ピッツバーグなどでは行政と連携した教育も整備されつつあり、こうした流れの中で、バーの役割は「問題のある客を排除する場」から、「地域社会の一員として安全と尊厳を守る場」へと再定義されつつある。各店舗が独自の指針を模索する中、バーは単なる酒場を超え、社会課題と向き合うコミュニティの拠点へと変化し始めている。

3. モールマキシング:Z世代がモールに戻る理由

現在、米国のZ世代の間でショッピングモールが再び熱を帯び始めている。かつて「死んだ」とまで言われた空間が、いまやiPhoneに疲れた若者たちにとって、リアルな体験と社交を同時に楽しめる場として再浮上している。この動きは「モールマキシング(Mallmaxxing)」と呼ばれ、TikTokとの相互作用によって拡大している。インフルエンサーの投稿に触発されて来店し、購入品を「HAUL」として発信、その投稿がさらに来店を呼ぶ──そうした循環が消費を加速させる。この動きを牽引するのが、EdiktedやPrincess Pollyといったオンライン発ブランドだ。若者はSNSで見たトレンドを、実際に試すために店舗へ向かう。店舗側もまた、フォトブースや滞在性の高い試着室を設け、発信を前提とした空間へと進化している。こうした場は、単なる買い物の場にとどまらない。親世代にとってはノスタルジーを喚起し、子の世代にとっては「発見」を競い合う舞台となる。さらにモール自体も体験型施設へと転換し、業績はコロナ前を上回る水準に回復している。重要なのは、若者がデジタルから離れているわけではない点だ。むしろリアルな体験をコンテンツ化し、共有し、承認を得る──その一連のプロセスこそが、現代の消費の核を成している。

4. YSL Beautyが示す遊び方の変化

マドリードで開催されたYSL Beauty初のブロックパーティは、Z世代のナイトライフの変化を象徴する出来事だった。午後4時から10時までというデイパーティー形式は、健康や睡眠の質を重視する若者のウェルネス志向を色濃く反映している。深夜まで遊ぶのではなく、生活リズムを崩さずに楽しむ──いわゆる「スリープ・マキシング(sleep-maxxing)」の広がりが、その背景にある。夕暮れ前の柔らかな光の中、音楽と人の熱気が満ちる会場は、すでに深夜のクラブに匹敵する高揚感に包まれていた。こうした志向は、美容のあり方にも変化をもたらした。日中の自然光の下では、重厚なコントゥアリングよりも、素肌感を活かしたナチュラルな仕上がりが映える。YSLのメイクアップアーティストは、日焼け止めによる肌保護を前提に、「Touche Éclat」のような軽やかなアイテムで輝きを添え、目元や口元で個性を際立たせる「表現としてのメイク」を提案する。デイパーティーは単なる節制ではない。華やかさを保ちながら、翌日に負担を残さないための合理的な選択でもある。Z世代は退屈になったのではなく、より持続可能で生活に調和した楽しみ方へとシフトしている。その意味でこの試みは、現代における洗練された遊び方の新たなスタンダードになりつつある。

5. 「すべてがアパレルになる」時代

アパレル業界では現在、アクティブウェアと一般衣料の境界が曖昧になり、「すべてがアパレル化」する大きな再編が進んでいる。VuoriやFableticsといった新興ブランドはデニムなど新領域へ拡張し、同時に伝統的ブランドもアクティブ市場へ参入するなど、相互浸透が加速している。背景には、消費者の関心が「高機能性」から、快適さと汎用性を備えた日常着へと移行していることがある。実際、消費は特定カテゴリに集中するのではなく分散し、アクティブと非アクティブの中間に位置するカジュアルウェアが支持を集めている。こうした環境下では、従来の定番商品だけでは成長が難しく、シルエットやスタイルの変化に対応した継続的な商品革新が不可欠となる。Lululemonの伸び悩みも、市場全体の停滞というより、こうした変化への適応力が問われている側面が大きい。さらに、現代の消費者はシーンごとに異なる装いを楽しむ「ペルソナ」を持ち、ブランドには単一カテゴリではなくライフスタイル全体を提案する力が求められている。ただし、無秩序な多角化はブランドの核を曖昧にするリスクを伴う。その典型例として、True Religionは顧客実態を見直し、価格や販路を再設計したうえでカテゴリーを拡張し、現在では売上の約60%をデニム以外が占めるまでに至った。重要なのは、こうした拡張が企業の一方的な意思ではなく、顧客から「その領域に踏み込んでよい」という許可を得られているかどうかである。OnやFableticsのようにトレンドを的確に捉えたブランドが成長していることからも明らかなように、成否を分けるのはブランド側ではなく消費者の選択だ。あらゆるブランドが「何でも売れる」時代において、持続的な成長を支えるのは、顧客理解に基づく拡張と絶え間ない商品革新にほかならない。

6. ビューティーブランドの「バッグチャーム」トレンド

ビューティー業界で広がる「バッグチャーム」トレンドは、商品を「使うもの」から「身につけて見せるもの」へと転換しつつある。背景には、Glossierに代表されるようなブランドマーチャンダイズ文化や、Hailey Bieberによるリップケースのヒット、さらにファッション領域におけるバッグチャーム流行がある。加えて、不安定な社会環境の中で自己表現や遊び心を求める消費者心理も、この流れを後押ししている。こうした文脈の中で、ビューティーブランドは商品そのものをアクセサリー化し始めた。ボディケアブランドのCyklarは香水オイルに装着可能なシリコンカバーを展開し、新規顧客の獲得につなげている。また、TouchlandはHello KittyやCrocsとのコラボケースで話題を呼び、商品を「見せる存在」へと転換させた。さらに近年は、ケースを付加するのではなくCocokindやLaneigeのようにパッケージ自体にリングを内蔵する「Wearable Beauty 2.0」へと進化している。こうした設計は携帯性を高めるだけでなく、可視化による自然な口コミを生み出す点でも有効だ。今後もトレンドの継続が見込まれる中、ブランドには単なるノベルティに留まらず、機能性とブランド一貫性を備えたプロダクト開発が求められ始めている。

7. The New York Timesは「専門性の高い人材」にベットする

The New York TimesのCEOであるMeredith Kopit Levienは、同社の成長を支えるコアとして、「高品質なジャーナリズム」と「生活に入り込むサービス群の統合」を挙げる。ニュースを核に据えながらも、Wordleをはじめとするゲームやスポーツ(The Athletic)、料理、商品レビュー(Wirecutter)といった領域を束ねることで、ニュースの有無に左右されない接点を生み出し、利用の習慣化を実現してきた。これらは付加価値ではなく、それぞれが独立した高品質なプロダクトであり、結果としてブランド全体を「信頼できる情報のスタンダード」へと押し上げている。同時に同社は、プラットフォームのアルゴリズムに依存するのではなく、ユーザーに指名されて訪問される「目的地(デスティネーション)」としての地位を重視する。これは、露出や集客を外部に委ねるのではなく、直接的な関係を築くことで価値を確立する戦略でもある。AIに対しては、OpenAIやPerplexityとの訴訟を通じて権利保護を主張する一方、社内では積極的に活用を進める。ただしその前提にあるのは、人間の専門性と編集プロセスこそが価値の源泉であるという認識だ。情報が氾濫する時代において、むしろ「人が作り、検証したコンテンツ」の信頼性は際立つ。さらに、Wordleのように同じ体験を共有するコンテンツや、スポーツにおけるファンダムといった「共通の話題」がコミュニティを生む点にも着目する。広告事業もこうした高品質なコンテンツとエンゲージメントを背景に回復している。最終的に同社の強みは、「価値あるプロダクト」と「揺るがない価値観」を同時に磨き続けてきた点にある。それは、アルゴリズムやAIが支配する時代において、情報の信頼性と意味を守ろうとする試みと言える。

8. 米国のレコード売上高が1983年以来初めて10億ドルに達した

2025年の米国音楽産業は、総収益115億ドルと過去最高を記録した。成長を牽引したのはストリーミングとヴァイナル(レコード)である。とりわけストリーミングは95億ドルと全体の82%を占め、有料会員数も1億人を超えるなど、市場の中核を担う存在となっている。一方、ヴァイナルも19年連続で成長を続け、売上は1983年以来初めて10億ドルを突破。伸び率こそ鈍化したものの、安定した需要を維持している。この動きを後押ししたのが、テイラー・スウィフトの『Life of a Showgirl』をはじめとするヒット作であり、人気アーティストの存在が市場を強く牽引した。現在、米国は世界のヴァイナル収益の約5割を占める最大市場となっている。こうした背景には、音楽を単に聴くものではなく、「所有する体験」として捉える価値観の再評価がある。実際、ヴァイナルはCDの3倍以上の売上を記録し、フィジカル市場の主役へと浮上した。結果として、音楽消費は、利便性を担うストリーミングと、体験価値を重視するヴァイナルという二極構造へと再編されつつある。こうした多層的な消費行動が、音楽産業全体の持続的な成長を支えている。

9. アメリカで広がる麻雀ブーム

現在、アメリカでは麻雀が大きなブームを迎えている。かつては高齢者の娯楽と見なされていたこのゲームは、パンデミック以降、「対面でつながるための装置」として再評価された。ニューヨークの地下バーからコネチカットの高級リゾートまで、場を変えながら広がり、いまや世代や人種を横断する社交インフラとなっている。背景にあるのは、スマートフォンやSNSに疲れた人々の欲求だ。4人で卓を囲み、視線を交わしながら進む麻雀は、戦略と運が絡み合う濃密なコミュニケーションを生む。若いアジア系アメリカ人にとってはルーツを再発見する手段であり、セレブや富裕層にとっては知的な没入を楽しむゲームでもある──異なる動機が、この一つの遊戯に流れ込んでいる状況だ。その文化的イメージを象徴的に可視化したのが、映画『クレイジー・リッチ!』における対決シーンだろう。洗練された駆け引きと静かな緊張感は、麻雀が単なる遊びではなく、文化や関係性を映し出す装置であることを印象づけた。一方で、ブームの拡大は商業化も招いている。高額な牌セットや意匠の改変をめぐっては「文化の盗用」との批判も浮上する。しかし多くのプレイヤーにとって麻雀は、運と実力の狭間で思考を研ぎ澄ます「健全な中毒」だ。デジタル疲れの時代において、このゲームが生み出しているのは、単なる流行ではない。世代と文化を越えて、人と人を再び結び直す場なのである。

10. SXSWはいかに都市のソフトパワーとなったか

テキサス州オースティンで開催されるSouth by Southwest(SXSW)は、一都市を世界的ブランドへと押し上げた「ソフトパワー」の代表例といえる。1987年の開始以来、この祭典は中規模都市だったオースティンを、エンジニアや投資家、クリエイターが交差する場へと変えてきた。毎年3月になると、街は一時的に「世俗世界のダボス会議」を思わせる様相を帯びる。その核心にあるのは、一方的な宣伝ではなく「体験」によるブランディングだ。世界中から集まる人々は、食や音楽、街の空気を味わいながら、偶発的な出会いの中でビジネスを動かしていく。そうした高揚感の中で生まれる個人的な成功体験は、「オースティン」という都市の記憶と結びつき、持続的なイメージを形成する。都市はイベントではなく、「経験の舞台」として記憶されるのである。こうした特性を背景に、近年では各国政府や企業が経済外交の場としてSXSWを活用するようになった。加えて、広大なテキサスのスケール感や独立性と、オースティンの進歩的で創造的な文化が同居する独特のコントラストも、訪問者に「発見」の感覚を与えている。商業化やコスト高騰といった課題はあるものの、それは成功の裏返しに過ぎない。約40年にわたり蓄積されてきたこの取り組みは、都市間競争が激化する現代において際立った存在感を放ち続けている。他の都市に問われているのは、同様のフェスを模倣することではない。自らの文化的土壌を信じ、世界に開き続ける仕組みを、時間をかけて育てられるかどうかである。

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