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Baa,Baa,Baa. | Week of Apr 3, 2026
【Weekly Picks】「ミステリースクープ」の魅力とは?
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。
The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。
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🐏 Baa,Baa,Baa.
Weekly Headlines
「ミステリースクープ」の魅力とは?
ティーン市場を制する「Edikted」の戦略
新世代の「モール・ラッツ」が登場
飲酒離れはカントリーミュージックを変えるのか
グレデ夫妻はインフルエンサーブランドのLVMHを築こうとしている
LVMH系ファンド、日本の消費企業に500億円投資へ
オニツカタイガーがギアを上げてきた
後退するヴィーガン・カルチャー
ロンドン・ナイトライフ再生への提言
SephoraがF1 Academyとの提携を発表
1. 「ミステリースクープ」の魅力とは?
スプーンですくったチャームに応じて商品が決まる、ランダム性を楽しむ物販スタイル「ミステリースクープ(Mystery Scoops)」がTikTokを中心に広がっている。1回約50ドルという価格にもかかわらず支持を集める背景には、心理学でいう「変動比率スケジュール」による強化がある。これは、報酬が不規則に与えられることで行動が強化される仕組みで、「何が届くかわからない」という不確実性がドーパミンを刺激し、ギャンブルやブラインドボックスのような「次こそ」という期待を生む。加えて、幼少期のプレゼント開封を思い起こさせるノスタルジーや、ビーズをすくう音や整然とした梱包を楽しむASMR的要素も魅力だ。とりわけ、梱包過程そのものがコンテンツ化され、視聴体験と購買が一体化している点は特徴的である。参入障壁の低さも相まって、個人によるスモールビジネスとしても拡大している。このブームはシンガポールや中国のクリエイターを起点に広がり、Pop Martによるブラインドボックス文化の普及も追い風となった。現在ではTikTok上に関連動画が数十万件投稿されている。一方で、商品の多くがAliExpressやTemuなどから仕入れたプラスチック製品であることや、演出過剰な梱包による環境負荷、価格の割高感を指摘する声も少なくない。ミステリースクープは、モノそのものの価値以上に、開封までのプロセスや不確実性を含めた「体験」を消費するという、現代的な消費のあり方を象徴している。
2. ティーン市場を制する「Edikted」の戦略
Z世代やα世代から支持を集めるEdiktedが、2025年に破産したForever 21に代わる「ティーンファッションの新たな覇者」として急成長している。その中核にあるのは、TikTokのアルゴリズムを活用したデータ主導のものづくりだ。トレンドをリアルタイムで捉え、即座に商品化することで、「今欲しい」を逃さない。さらに、SNS上でラグジュアリーブランドと並置されることで発見から購買までの距離が極端に縮まり、衝動的な消費を後押ししている。こうした強みは市場環境の変化とも共鳴し、追い風となっている。2025年5月の関税免除廃止によりSheinやTemuが価格上昇で苦戦する一方、Ediktedは実店舗や百貨店との提携を通じて影響を抑制している。加えて、常時セール表示による「お得感」の演出など、巧みな価格心理も購買を促進している。ただし価格比較の根拠は不透明で、規制との境界線を指摘する声もある。過去にブランド売却の実績を持つ創業者の手腕も含め、同社はティーン市場における新たなリテールモデルを体現している。
3. 新世代の「モール・ラッツ」が登場
デジタルネイティブであるZ世代の若者たちが、ショッピングモールという「古い消費空間」を新たな形で再活性化している。NielsenIQによれば、Z世代の小売支出の伸びは他世代を上回り、実店舗での購入比率も高い。スマートフォンに慣れ親しんだ彼らは、オンラインで情報収集を行いながらも、試着や素材の質感を確かめること、友人と時間を過ごすことといったリアルな体験に価値を見出している。コロナ禍で外出制限を経験したこともあり、モールでの買い物は新鮮な娯楽として受け止められている。さらに、「今すぐ欲しい」という即時性への志向も強く、配送待ちを伴うオンラインより店舗が選ばれる場面も多い。こうした消費行動はSNSと密接に結びついている。若者たちはTikTokやInstagramで得たインスピレーションをもとに来店し、店内で撮影した写真や動画を共有するまでを一連の体験として楽しむ。この流れを受けて、モールはフォトジェニックな空間設計やインフルエンサー施策を強化し、来店動機の創出を図っている。さらに、オンライン発ブランドが実店舗へ進出する動きも加速している。この変化は小売業にも波及し、Tapestryは店舗売上で二桁成長を記録、Pacsunも18年ぶりに出店を拡大した。Z世代はオンラインで発見し、オフラインで体験・購買するというスタイルを確立しつつある。かつての「モール・ラッツ」文化は、デジタルと結びつくことで、現代的な消費の中心として再定義されている。
4. 飲酒離れはカントリーミュージックを変えるのか
米国では飲酒人口の減少が続いており、2024年のGallup調査では成人の飲酒率は54%まで低下した。背景には、Z世代を中心とする若年層の酒離れに加え、パンデミック期の過剰生産によるウイスキー在庫の積み上がりと市場の停滞がある。実際にジム・ビームが2026年、主力蒸留所で生産一時停止を発表するなど、その影響は業界全体に広がっている。この流れはカントリーミュージック界にも波及している。クリス・ステイプルトンやダークス・ベントリーらはこれまでスピリッツブランドを手掛けてきた──酒を作っているのはラッパーたちだけではないのだ──が、現在は新規参入のハードルが大幅に上がった。一方で、ウィリー・ネルソンが手掛けるTHCトニック「Willie’s Remedy」は発売から1年足らずで40万本以上を売り上げ、大麻飲料市場も急速に拡大している。消費者の嗜好はアルコールからシフトしつつある。ただ、楽曲の題材としても大麻は増えてきてはいるが、酒の歌が消える兆しはない。ステイプルトンが「文化的な規範には盛衰がつきものだ」と語るように、ウイスキーやビールは依然として重要なモチーフであり続けている。ソングライターたちもまた、「トラックとビールの歌はなくならない」と口をそろえる。つまり、飲酒という行動は弱まりつつある一方で、文化的象徴としての酒は生き残る。カントリーミュージックは今後、酒と大麻の双方を取り込みながら、現代のライフスタイルを映す形で変化していくと考えられる。
5. グレデ夫妻はインフルエンサーブランドのLVMHを築こうとしている
イェンスとエマのグレデ夫妻が率いる「Popular Culture」が、SNS時代における新しいブランドコングロマリットとして静かに台頭しつつある。その傘下にあるSkims(キム・カーダシアン)やGood American(クロエ・カーダシアン)、Khy(カイリー・ジェンナー)といった著名人ブランドはアイコニックに映るが、その本質はセレブリティビジネスではない。彼らが手掛けているのは、SNS上で生まれる共感や信頼といった「文化的レゾナンス」を、購買行動へと転換する仕組みそのものだ。重要なのは、このモデルがセレブに依存しない点で、FrameやElder Statesmanのように、異なる文脈から生まれる「関連性」であっても同様に機能する。つまり彼らの強みは、誰が発信するかではなく、「何が共鳴し、どう売れるか」を構造的に理解していることにある。戦略の中核を担うのが「アフォーダブル・プレミアム」という価格帯。高すぎず、しかし十分な利益率を確保できるこのゾーンは、SNSで醸成された信頼が最もスムーズに購買へと転換されるスイートスポットである。グレデ夫妻は、この顧客の行動様式を10年以上にわたり蓄積し、それをサプライチェーンやマーチャンダイジングに横断的に活用することで、スケールメリットを生み出している。この構造は、LVMHのアプローチに近い。LVMHが「伝統」や「職人技」を共有インフラで増幅するのに対し、Popular Cultureは「文化的関連性」を資産として共有・拡張する。また、セレブを単なる広告塔ではなく共同創業者・株主として巻き込むことで、短期的な話題性ではなく長期的な価値創出へと結びつけている。エルザ・ホスクの「Helsa」への関心も、この既存のブランドエンジンに新たな入力を加える動きと捉えられる。現在、Helsaのパートナーとして流通を担うオンラインリテーラーのRevolveとは異なり、Popular Cultureが提供するのは、関連性を企業価値へと転換するスケーラブルな仕組みである。変化の速いカルチャーを捉え、それを持続的な成長へと接続するこのモデルは、今後のブランドビジネスの新たな基準となっていく可能性がある。
6. LVMH系ファンド、日本の消費企業に500億円投資へ
LVMH系のプライベートエクイティファンド、L Cattertonは、今後3年間で日本の消費財・サービス関連企業5社に対し、総額約500億円を投資する方針を示した。対象は化粧品、食品、ペットケア、外食など、同社が強みとする領域に集中する。アジア全体で投資が減速するなか、日本のディール総額は前年比81%増の334億ドルと大きく伸長しており、同社は有望な投資機会が存在する市場として日本に注目している。2017年の進出以降、すでに9社へ投資を行い、家具卸やデニムブランド「Kapital」、神戸牛レストランチェーンなどに関与してきた。こうした投資を支えるのが、同社独自のスタンスだ。単なる金融投資家ではなく、「消費財ビジネスの専門家」として企業に伴走し、人口減少といったマクロ環境よりも、顧客基盤やブランド力といった個別企業のファンダメンタルズを重視する。事業承継に課題を抱える同族企業や、海外展開を志向する成長企業にとって、有力なパートナーとなっている。その象徴的な事例が、外食企業HUGEへの出資だ。人手不足に直面する業界にあって、同社の低い離職率と高いリピート率が評価された。HUGEはL Cattertonのグローバルネットワークを活用し、東南アジア展開を加速させながら、売上倍増と2030年の上場を見据える。専門性とネットワークを武器とする同社の投資は、日本企業の成長と国際展開を後押しする存在となりつつある。
7. オニツカタイガーがギアを上げてきた
1949年に鬼塚喜八郎が創業したオニツカタイガーは、派手なトレンドとは距離を置いてきたブランドだ。スリムなシルエットやレトロな配色を軸に、スポーツとファッションの狭間で独自の存在感を築いてきた。ASICSのライフスタイルラインでありながら、「Mexico 66」はブルース・リーや『キル・ビル』のユマ・サーマンによってアイコン化され、カルチャー的な厚みも備えてきた。そのオニツカタイガーがいま、大きな転換点を迎えつつある。ミラノ・ファッションウィークで発表された2026年秋冬コレクションでは、アンドレア・ポンピリオのもと、日本のポップカルチャーや制服的要素を取り入れた。表現は従来よりも大胆に拡張されている。ヒールやフェイクファーといった意匠も加わり、従来のミニマルなイメージから明確に一歩踏み出した。さらに、ヴェルサーチとの協業や、調香師マーク・バクストンによる香水展開も進む。加えて、ミラノ旗艦店には「Ristorante ONITSUKA TIGER」(徳吉洋二監修)の開業も予定されており、ブランド体験は五感へと広がりつつある。スニーカーを起点としながら、その射程はライフスタイル全体へと及んでいる。「知る人ぞ知る存在」だったブランドは今、より開かれたフェーズへと移行した。静かな名品から総合的なラグジュアリーハウスへと舵を切り、近年最大級の飛躍期を迎えようとしている。
8. 後退するヴィーガン・カルチャー
ヴィーガニズムは2010年代からコロナ禍にかけて、環境問題や健康志向、動物倫理への関心の高まりを背景に「未来の食」として急速に広がった。セレブリティの支持や代替肉の技術革新、ベンチャー投資の流入も追い風となり、レストランや商品は爆発的に増え、一大ムーブメントを形成した。しかし現在、その勢いは明確に後退している。ニューヨークでは多くのヴィーガンレストランが閉店し、新規開業も激減。代替肉の小売売上は2020年のピークから約25%減少する一方、食肉販売は2024年に過去最高の1,046億ドルを記録した。その背景には、経済・文化・心理が絡み合った複合的な要因がある。まず、ヴィーガン料理は手間とコストがかかり、外食産業として収益化が難しい。加えて、ヴィーガン人口は少なくとも30年ほぼ横ばい(米国では1%がヴィーガン、4%がベジタリアン)で、市場規模自体が限られている。さらに、超加工食品への不信や自然志向の高まりの中で、植物肉が「人工的」と見なされる傾向も強まった。こうした環境のもと、食生活の制約による心理的負担も重なり、多くの人が継続を断念している。この盛衰については以前、私たちも同様の整理を試みたが、それに加えて、「世界がより良くなるわけでもなく、未来が明るくなるわけでもないのなら、この自制に何の意味があるのか」という、近年広がる感覚とも無関係ではないだろう。進歩や理想を前提とした節制よりも、より直接的で確実な満足を求める空気が、食の領域にも及んでいる。結果として、ヴィーガニズムは主流化するのではなく、一般のレストランに一部メニューとして取り込まれる形へと変化しつつある。かつてのような独立したトレンドではなく、食文化全体の中に分散し、選択肢の一つとして定着し始めている。ヴィーガンは「未来の食」という大きな物語を失った一方で、より現実的なかたちで日常へと組み込まれつつある。
9. ロンドン・ナイトライフ再生への提言
ロンドンのナイトライフは深刻な危機に直面しており、このままクラブの閉鎖が続けば、2030年までに英国から主要クラブが姿を消しかねない。こうした状況を受け、市長のサディク・カーンは昨年「ナイトライフ・タスクフォース(London Nightlife Taskforce)」を設置し、初の報告書を公表した。中核となる提言は、ロンドンを真の「24時間都市(24-hour city)」へ転換することだ。営業許可の延長や深夜交通・飲食の整備に加え、ナイトライフを単なる経済活動ではなく、創造性や交流を育む「独自の文化」として再定義することを求めている。また、ナイトライフを犯罪と結びつける従来の認識に対し、両者に統計的相関はないと指摘。夜間の軽犯罪は繁華街全般に見られるものであり、特定の文化施設に起因するものではないとした。さらに、騒音苦情による営業制限の見直しも提言し、都市開発との共存を模索する姿勢を示している。報告書全体が、ナイトライフを都市の文化基盤として再評価し、その議論をより開かれたものへと転換しようとする試みといえる。
10. SephoraがF1 Academyとの提携を発表
Sephoraは、女性限定レーシングシリーズF1 Academyとパートナーシップを締結し、2026年シーズンから「公式パートナー」および「公式ビューティーリテールパートナー」として参画する。レース会場内外でのブランド露出に加え、VIPエリアでは観戦と美容体験を融合した「Glam Bars」を展開し、新たな観戦価値の創出を図る。同社はまた、スペイン人ドライバー、ナタリア・グラナダを支援し、「Sephora operated by Prema」チームの車両やレーシングスーツにブランドの象徴的なストライプを配することで、視覚的な存在感を強める。こうした取り組みは、女性ドライバーの可視化と支援を促進すると同時に、若い世代に向けて自己表現と挑戦を後押しするメッセージを発信するものだ。F1 Academyのマネージング・ディレクター、スージー・ヴォルフ──メルセデスのトト・ヴォルフのパートナーだ──も、この提携が単なるスポンサーシップを超え、モータースポーツにおける固定観念を揺さぶるものだと強調する。先行事例としては、Charlotte Tilburyが2024〜2025年に参画しており、美容業界による女性スポーツ支援の動きは広がりを見せている。以前、私たちもF1が開催都市に莫大な経済効果をもたらしていること、そして熱狂的な女性ファン層の拡大とともに進む「K-popification(K-pop化)」現象について取り上げたが、今回のSephoraの参入は、その流れとも符合する。競技としてのF1に、エンターテインメント性やライフスタイル的価値が重なりつつある中で、美容ブランドの存在は決して異質ではない。この流れは、美容とスポーツが「自信」と「自己表現」という価値で接続されていることを示している。Sephoraの参入は、その接点を可視化し、モータースポーツに新たな文化的意味を付与する試みといえるだろう。
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