Baa,Baa,Baa. | Week of Dec 8, 2025

【Weekly Picks】ファッションはA24から何を学べるのか?

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。

The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。

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Weekly Headlines

  1. ファッションはA24から何を学べるのか?

  2. Human Madeがストリートウェアブランド初となるIPO

  3. Miu Miu Literary Clubが上海に上陸

  4. ベイエリアのベジタリアンはみんなどうした?

  5. アトランタはソフト・クラビングの時代を迎えている

  6. ブランドの存在意義を書き換えるZ世代

  7. ブランドの祝祭へと姿を変えたアドベントカレンダー

  8. ガゴシアンの意外なレジェンドたち

1. ファッションはA24から何を学べるのか?

A24は、映画スタジオを超えた独自の文化ブランドとして確固たる地位を築いている。ニューヨークで開催された『マーティ・シュプリーム』のポップアップでは、Nahmiasと手がけた限定ウィンドブレーカーが大行列を生み、作品公開前から社会現象化した。A24は2012年の創設以来、『ミッドサマー』『ムーンライト』『エブエブ』などでニッチテイストの象徴となり、「A24的」という形容まで定着している。その背景には、低予算マーケティングを補完する巧みなマーチ戦略がある。Online CeramicsやBrain DeadとのコラボTシャツはリセール市場で高値となり、ホットドッグ・フィンガーズの手袋など「奇妙だが意味のある」アイテムは、単なるマーチャンダイジングを超える象徴性を持つ。A24の本質は、物ではなく「オーラ」を売る点にある。ファンはロゴを通じて文化的コミュニティへの帰属意識を得ており、ブランドはロゴよりも先に世界観を丁寧に育てている。また、映画世界の質感を持ち込んだプロダクト──『プリシラ』のハートペンダントなど──により、物はプロモーションではなく「物語から持ち帰ったアーティファクト」として機能する。さらにA24は、作品・イベント・商品を単一の神話世界として結びつけ、発見・ファン化・購入・コミュニティ形成が同一空間で起きるエコシステムを構築する点も特徴だ。35億ドルに拡大した企業価値はインディ精神の希薄化リスクを孕むが、なお文化的な直観力は健在で、2026年公開予定の『The Moment』でも再び話題を呼ぶことだろう。

2. Human Madeがストリートウェアブランド初となるIPO

Human Madeが東京証券取引所に上場し、ストリートウェア史上初のIPOとして注目を集めている。BAPE創業者でKenzoのクリエイティブディレクターでもあるNigoと、Louis Vuittonメンズを率いるPharrellが牽引する同ブランドの売上は、2021年の18億円から2025年には112億円へと急成長し、営業利益率28%とラグジュアリーブランド並みの収益性を誇る。背景には、大手企業出身者を含む強固な経営陣の存在があり、BAPE時代の「創業者主導の試行錯誤」を超越した安定した企業基盤が評価されている。Human Made はBAPE的なハイプ文化を継承しつつも、アメリカーナと日本の技術を融合した製品を展開し、ティーンから中年層まで幅広い顧客に支持される。売上の約3分の2が海外市場で、免税売上も37%に達するなど、アジア観光客、越境消費を取り込んだグローバルな強さがIPOの背景にある。一方、パンデミック後のストリートウェア人気の減退や、Quiet luxuryの台頭は業界の潮流を変えつつある。こうした環境下での上場は、同ブランドが一過性のストリートウェアを超えた持続的成長企業であることを証明する試金石となる。調達資金は店舗拡大やブランド買収に充てられ、日本ファッション業界の次なる上場への波及効果も期待されている。

3. Miu Miu Literary Clubが上海に上陸

Miu Miuが上海で開催した「Miu Miu Literary Club」は、ミウッチャ・プラダが一貫して追求してきた「女性の知性と感性を文化として可視化する」戦略を強く打ち出す場となった。近年、ファッション界ではブッククラブや文学モチーフの流行など、読書文化への関心が高まっているが、Miu Miuはそれを表層的な演出として消費するのではなく、掘り起こされた女性作家の「見落とされた名作」を世界各地で無料配布する「Summer Reads」など実質的な文化貢献として制度化している点が特徴だ。これは、女性映画作家を支援する「Women’s Tales」と並ぶブランドの文化プログラムの柱であり、Miu Miuのコレクションで展開される家庭性や女性の内面世界といったテーマとも密接に響き合う。上海版「Miu Miu Literary Club」では張愛玲をはじめ、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、円地文子らの作品を通じ、女性の教育、友情、抑圧、解放といった問題が議論され、多様な女性作家や研究者が登壇。世代間で異なるジェンダー観や自己解放の語りが交差し、参加者自身の経験へと接続された。こうした「語りの共同体」をつくる仕掛けこそが、Miu Miuと他のブランドとの違いを際立たせており、ファッションを単なる物質的消費ではなく「知的経験」へと昇華させる意図が明確に示された。文学と対話を媒介に、ブランドの世界観と現代女性のリアリティを結びつける戦略的文化活動として、Miu Miuの独自性が際立ったイベントとなった。

4. ベイエリアのベジタリアンはみんなどうした?

サンフランシスコのベイエリアで、ベジタリアン・レストランが転換期を迎えている。1979年にサンフランシスコ禅センターが開設した「Greens」以来、この地域は高級な野菜中心のレストランで知られてきたが、近年は肉食回帰の潮流が強まっている。2024年のデータによると、アメリカ人の肉消費量はパンデミック前より7%増加し、ニューヨークの三つ星レストラン「Eleven Madison Park」も完全ビーガン路線を撤回した。この変化には複数の要因がある。2016年頃からImpossible FoodsやBeyond Meatの技術革新が有名シェフを通じて代替肉製品を普及させた。パンデミック期の2020年には植物性食品の小売売上が74億ドルに達したが、その後は超加工食品への懐疑論が高まり、健康志向の人々が逆に肉食に回帰する現象も見られた。2024年の売上は81億ドルと伸び悩んでいる。一方、Greensのシェフ、ケイティ・ライヒャーは「菜食料理は複雑さと理解において過去最高の水準にある」と前向きだ。またモダン・インディアンレストランTiyaのシェフ、プジャン・サーカーは「レストランの価格高騰に対して、肉より安価な菜食料理こそが有効な解決策になり得るのに、その価値が見過ごされている」と指摘する。ベイエリアの菜食文化は収益性では課題を抱えつつも、革新的な取り組みは続いており、結局は「本当に美味しい料理」が求められているのだ。

5. アトランタはソフト・クラビングの時代を迎えている

深夜帯に行われる大量の飲酒が前提の従来型クラブ文化に代わり、日中や夕方に音楽や社交を楽しむソフト・クラビングがアトランタで広がっている。背景には、ミレニアル世代の加齢によるライフスタイル変化や、Z世代の節酒傾向がある。この新しい形のナイトライフは、会話が聞こえる音量、コーヒーやノンアル飲料、日没前の時間帯など「ソフトな」体験を重視する点が特徴だ。会場もクラブだけでなく、レストラン、コーヒーショップ、レコード店、アートミュージアム、ホテルのラウンジ、さらには個人宅へと多様化している。代表的なスポットとして、エイボンデール・エステーツのワインバー兼リスニングルーム「Commune」では、音楽とティーを組み合わせた夜のティーイベント「Muse Late Night Tea」が人気。ミッドタウンの「High Museum of Art」では、展示されたアートの鑑賞とDJイベントを組み合わせた「High Frequency Fridays」が毎月開催される。FORTH Hotel の最上階「Moonlight」は、日曜夕方の「Last Dance」で90年代R&Bと夕景を楽しむ場として定着。さらに、「Peoples Town Coffee Bar」や「Crates ATL」など、コーヒーショップやレコード店も日中イベントを多数展開。ビアガーデン「Westside Motor Lounge」、老舗レストラン「57th Fighter Group」など、大規模空間でも昼〜夜早めのダンスイベントが増えている。こうした動きが、地域の多様な世代が無理なく楽しめる、アトランタの新しいクラブ文化として定着しつつある。

6. ブランドの存在意義を書き換えるZ世代

Dazed主催のUK Brand Summitで、Z世代の4人のテイストメーカーがブランドの「文化的関連性」について語った。彼らが強調したのは、表面的なマーケティングではなく、ブランドが本当の意味で「自分たちを知り、深く理解すること」の重要性だ。生活者のリアルな興味や感性に正面から向き合ったDieselとDurexのコラボや、社会問題に対して声を上げてきたBen & Jerry'sのように、政治的・社会的な問題に沈黙せず、明確な価値観を持ち、実際に金銭的支援を行う姿勢が求められている。パフォーマンスだけのアクティビズムは見透かされ、若者は「どこに自分のお金が使われるか」を徹底的に調べる。透明性と倫理観が購買の前提であり、単なる商品ではなく「目的」が重視される時代だ。また、彼らはデジタルネイティブである一方で、現実世界でのコミュニティ体験を強く求める。Palaceのようなストリートウェアのコミュニティや、Lucila Safdieの映画クラブでのステッカー、ヘアバンド配布など、小さなタッチポイントが「所属感」を生み、ブランドを身近にする──先週紹介したように、こうした姿勢がブランドが依拠してきたかつてのマーケティングファネルをアップデートしている。結論として、Z世代が求めるのは「誠実さ」と「意図性」。政治的分断、経済苦、気候変動危機の中で育った彼らは、ブランドに「自分たちの側に立っているか」を問うている。ステッカー1枚でも、明確な発言でも、コミュニティ形成でも、そこに本物のケアがあれば、若者は応える。単なる商品提供者ではなく、若者の希望や生き方を支える存在になることこそが、文化的関連性を生みだすのだ。

7. ブランドの祝祭へと姿を変えたアドベントカレンダー

現代のアドベントカレンダーは、キリスト降誕を待ち望む宗教的習慣から、商業主義の象徴へと変容を遂げた。4世紀、キリスト教というまだ新しい宗教のヨーロッパの信者たちが、12月のイエス・キリスト誕生までの期間を「アドベント」──この言葉は「接近」「到来」を意味するラテン語「Adventus」に由来する──として祝ったのが起源とされる。もともとは準備と瞑想のための厳粛な時期であり、19世紀ドイツではロウソクで日数を数える習慣が生まれた。しかし2025年現在、アドベントカレンダーは紙製の小部屋から日替わりの商品を取り出す消費行為へと変化している。メイシーズのウェブサイトでは20ドルから955ドルまで数十種類のカレンダーが販売され、ウィリアムズ・ソノマではNetflixドラマとのコラボ商品も扱う。バーガーキング、クラフトチーズ、レッドブルまでもが参入し、お茶、口紅、ワイン、チーズ、ナイフ、アダルトグッズなど、あらゆる商品が対象となっている。ジャムブランドのボンヌママンのカレンダーは米国で毎年完売しており、同ブランドは需要に対応するため2017年以降生産量を400%増やしている。この急激な商業化は15年ほど前、美容業界が小型サンプルを豪華な箱に詰めて販売し始めたことが契機となった。YouTubeの開封動画ブームと相まって、企業は1ヶ月間にわたる商品露出と年に一回という人工的希少性の創出に成功した。さらに、アドベントカレンダーは他者への贈り物ではなく「自分のための小さなご褒美」として消費され、ブラックフライデー、サイバーマンデー、そしてボクシング・デーへと続く「消費の祭礼」の一部となった。かつて宗教的儀式だったものは、今やまったく別の「宗教」、すなわち消費主義の象徴となっている。

8. ガゴシアンの意外なレジェンドたち

ニューヨークの名門ギャラリー、ガゴシアンでセキュリティ責任者を務めるアンドレ・ヘッドリーとアンソニー・ジョンソンは、アート界の隠れたレジェンドだ。長きにわたり高額な美術品を守り、富豪の訪問客を迎え入れる中で、彼らの役割は単なる警備にとどまらず、ギャラリーに足を踏み入れた来訪者が最初に出会う「ギャラリーの雰囲気を決定づける存在」「ギャラリーの顔」という役割も担うようになった。二人とも美術の専門知識はなかったが、ギャラリーでの長年の経験を通じて、作品と深い関係を築いてきた。また、本人たちの謙虚な姿勢とは裏腹に、世界的コレクターから作品について意見を求められることも多く、作品に長時間接する彼らならではの眼が購入判断の参考にされることもあるという。また、ギャラリー関係者の中には、「アンドレとアンソニーに気に入られ ることは、壁に展示された作品を買うことと同じくらいのステータスと見なされる」という声もあるほどだ。彫刻家リチャード・セラや画家ブライス・マーデンとの温かい思い出も語る二人。特にマーデンが亡くなる数日前まで車椅子で制作を続けた展覧会では、涙を流す来場者の姿に感動したという。アート作品の守護者であり、作家や鑑賞者を繋ぐ存在として、彼らは静かな伝説となっている。

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