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Baa,Baa,Baa. | Week of Nov 3, 2025
【Weekly Picks】顔認証技術を使った「浮気発見アプリ」が拡散中
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。
The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。
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🐏 Baa,Baa,Baa.
Weekly Headlines
顔認証技術を使った「浮気発見アプリ」が拡散中
オニツカタイガーがZ世代の心を掴んでいる
若者たちは辛い「ラミョン」に夢中
ヘッドフォン時代の「孤独な音楽」
ブルックリン公立図書館では、アート作品を借りられるようになった
死者の日にメキシコを覆うオレンジ色の花を、気候変動が脅かしている
1. 顔認証技術を使った「浮気発見アプリ」が拡散中
Tinderなどのマッチングアプリ上でパートナーの浮気を調査できる「浮気発見アプリ」が急速に普及している。CheaterbusterやCheatEyeといったサービスは、顔認証技術を用いて約18ドルでTinder上のプロフィールを特定できると宣伝しており、404 Mediaの検証では実際に高精度での特定が確認された。しかし、これらのサービスには深刻な問題がある。第一に、プロフィールが存在する理由を一切考慮しない点だ。アカウント削除の失念やなりすまし被害など、本人に浮気の意図がないケースも多い。第二に、ストーカーや詐欺師による悪用を防ぐ仕組みがない。第三に、顔認証技術の誤作動により無関係な人物を巻き込む危険性がある。根本的な問題は、利用者の同意範囲を超えている点だ。Tinderユーザーは画像や位置情報、学歴などの提供に同意しているが、それはあくまでサービス内での利用を前提としている。第三者による転用は想定されていない。同様の危うさは、最近話題の女性限定アプリ「Tea」にも見られる。このアプリはデート相手の男性に関する「レビュー」を匿名で共有できる仕組みで、「虐待者などの情報を共有することでさらなる被害者を出さないようにする」という目的を掲げている。しかし、個人的なすれ違いや誤解が、反論の機会もない永続的な「公開裁判」へと発展するリスクを抱えている。「浮気を許さない」も「被害者を出さない」も、その動機は正義かもしれない。だが、いずれも容易に監視と断罪の道具へと変質しうるうえ、悪意ある利用の介在を許してしまう。さらに問題なのは、テクノロジー企業がこうした危険性を認識しながらも、「正義」を掲げることで人々の不安や怒りを刺激し、ビジネスとして成立させている点だ。善意から出発した仕組みが、個人間の監視を正当化し、悪意ある利用をも生み出す──この構造こそが、いま最も警戒すべき現実だろう。
2. オニツカタイガーがZ世代の心を掴んでいる
世界的な訪日観光ブームのなか、76年の歴史を持つスニーカーブランド「オニツカタイガー」が再び脚光を浴びている。円安の影響でお得に買えることもあり、東京を訪れる観光客の間で「日本旅行のマスト土産」として人気が急上昇。2025年上半期の売上は前年同期比50%増の約660億円に達した。1968年のメキシコオリンピックに合わせて開発され、『キル・ビル』でユマ・サーマンが履いて有名になったMEXICO 66やTOKUTENなどの薄底モデルはSNSで拡散され、銀座店ではカスタマイズも楽しめる。オニツカはアディダスに代わる希少性のある選択肢を提供しつつ、サンバやガゼルといったスリムスニーカーブームや現在ファッション界を席巻するY2Kノスタルジアにも訴求している。アシックス株は過去2年で3倍に上昇。北米撤退後は高級志向を強め、VERSACEとコラボレーションしたり、ミラノ・ファッションウィーク参加へも参加。米国へは2027年の再進出を目指す。
3. 若者たちは辛い「ラミョン」に夢中
先週に引き続き、韓国の麺とHuntrixの話。韓国発のスパイシーなインスタント麺「ラミョン(ramyeon)」が、世界の若者を熱狂させている。きっかけの一つは、Netflix史上最も人気のアニメ映画となった『KPop Demon Hunters』。作中で登場するK-POPグループHuntrixのメンバーがラミョンを勢いよくすする姿が話題を呼び、Nongshim(農心)はキャラクターをフィーチャーしたシリーズまで発売した。ラミョンは日本のラーメンから派生。1960年代に韓国政府が安価で栄養のある食として広め、当時の大統領、朴正煕(パク・チョンヒ)が韓国人の味覚に合うよう唐辛子を加えるよう提案したとされる。今では輸出額は12億ドルに達し、特に「ブルダック」で知られるSamyang Foods(三養食品)は売上の約75%を海外で稼ぐ。アメリカではターゲットやウォルマートでも販売され、Z世代やα世代の「推しブランド」になっている。人気の理由は三つ。まずSNS映えする「激辛チャレンジ」動画が拡散し、食体験そのものがエンタメ化したこと。次にK-POPや韓国ドラマを通じた「韓流」の浸透。『パラサイト』で注目を集めたチャパグリのように、スクリーンを通じて食文化が広がっている。そして最後は、3分で完成する手軽さ。料理に時間をかけたくない現代人にとって、ラミョンは「即席の刺激」を与えてくれる存在となっている。
4. ヘッドフォン時代の「孤独な音楽」
ヘッドフォンでの音楽鑑賞の普及が、音楽文化に根本的な変化をもたらしている。2024年には世界で4億5,500万個のヘッドフォンが販売され、ストリーミング利用者の78%がヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聴いている。かつて1960〜70年代には、新作アルバムの発売日に友人宅に集まって一緒に聴くという文化があった。その後ジャンルが多様化しても、学校のテレビでMTVを見たり、友人の部屋で音楽を共有する機会は残っていた。しかし現在、音楽は共同体験から個人的な追求へと変容した。Spotifyなどのストリーミングサービスは膨大な楽曲へのアクセスを提供するが、利用者をサービスに留めることを重視し、アーティストや作品への深い没入を促さない設計になっている。こうした個人化された聴取習慣が社会全体に広がると、文化的な対話が希薄になる。深夜番組での音楽パフォーマンスは大幅に減少し、音楽に特化していた老舗メディア『NME』も、細分化された趣味の時代に生き残るためカバー範囲を拡大、ライブ音楽業界では途方もなく長い出演者リストを誇るフェスティバルが氾濫する。一方で、音楽クルーズやTwitchでのライブリスニングセッションなど、コミュニティ体験を重視した新しい試みも生まれている。音楽体験は常に私的なものと公的なものの緊張関係の中に存在してきた。両者をバランスよく享受できる未来が模索されている。
5. ブルックリン公立図書館では、アート作品を借りられるようになった
ブルックリン公共図書館(Brooklyn Public Library)が、「アートを貸し出す」試みに乗り出した。利用者は、絵画や写真、彫刻などアート作品を3週間、自宅に飾ることができる。このアート貸出プログラムは、11月3日から図書館で始まる「Department of Transformation: Letters for the Future」展と同時にスタートする。貸し出される作品は約20点。1970年代にも一度試みられた企画の再挑戦でもある。作品は本と同じように図書カードで借りられ、利用者のフィードバックをもとに、今後の拡大も検討される予定だ。この試みには、アートを所有ではなく「共有」する文化を広げたいという願いが込められており、図書館を「いまもなお自由に開かれた、知的、創造的、市民的な公共の場」として称える「Letters for the Future」展の趣旨とも共鳴する。もしリビングで紅茶を飲みながら美学について語りたくなったら、それはきっと図書館の魔法だ。ブルックリンは、文化を分かち合う新しい形を、静かに、そして大胆に提示しようとしている。
6. 死者の日にメキシコを覆うオレンジ色の花を、気候変動が脅かしている
メキシコを象徴する花、センパスチル(メキシカン・マリーゴールド)は、『007 スペクター』や『リメンバー・ミー』などでお馴染み、メキシコの「死者の日(Day of the Dead)」に欠かせない「死者の花」として、街や墓地を鮮やかに染める。しかし、気候変動による豪雨、干ばつ、洪水が深刻化し、花の生産者を直撃。今年は全国で3万7,000エーカー以上の作物が被害を受け、ソチミルコでは200万株が危険にさらされた。農家のルシア・オルティスによれば、過剰な雨で根腐れや病害虫が発生し、収穫の30〜50%を失い、肥料や殺虫剤の追加費用で赤字に転落、生活は逼迫しているという。市場で販売しやすいよう、近年多くの農家が米国産のハイブリッド種を利用するようになり、病害や気候変動に耐性の高いメキシコ在来種の栽培が減少している。政府のシードバンクの科学者は、この遺伝的多様性の不足が被害を拡大させていると指摘し、在来種の種子を保存、提供することで、気候変動への適応と伝統的な栽培方法の回復を目指している。一方、現場の農家は温室栽培などの適応策を模索するも、資金不足が障壁となっている。「この花は先祖から受け継がれた伝統だ。なくすわけにはいかない」と農家は語る。気候危機のなか、文化と生計を巡る闘いが続いている。
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