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#032_Sheep ウェルネス・オーバードーズ
「ウェルネス」が溢れている。かつては単なる「健康」や「ヘルスケア」と呼ばれていたものが、今ではフィットネスやサプリメントから、不動産、アパレル、さらには子ども向けのメンタルヘルスアプリにまで拡張されている。だが、その曖昧な響きの裏には、終わりなき「理想の自己」を追い求めさせる巧妙なマーケティングが隠れている。ポジティブで前向きなイメージに包まれたこの巨大産業は、果たして本当に我々の健康を目指しているのか、それとも巧みにラベリングされた「消費」の罠に過ぎないのか。

“The Rest Is Sheep”は、デジタル時代ならではの新しい顧客接点、未来の消費体験、さらには未来の消費者が大切にする価値観を探求するプロジェクトです。
役に立つ話よりもおもしろい話を。旬なニュースよりも、自分たちが考えを深めたいテーマを――。
そんな思いで交わされた「楽屋トーク」を、ニュースレターという形で発信していきます。
🔍 Sheepcore
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネスなど、消費者を取り巻く多様なテーマをThe Rest Is Sheepのフィルターを通して紹介します。結論を出すことよりも、考察のプロセスを大切に。
ウェルネス・オーバードーズ

©️The Rest Is Sheep
どこにでもウェルネス
🐕「おつかれさまですー。いま飲んでたの何ですか?」
🐏「あ、ウコンです(笑)。今晩の飲み会用にドーピングしようかと(笑)」
🐕「ハウスウェルネスフーズですね」
🐏「いや、社名は知らないです(笑)。ってほんとだ、ハウス食品本体じゃない(笑)」
🐕「もともと武田食品工業っていう、武田薬品の子会社だったんですよね、「C1000タケダ♪」の」
🐏「ああ!加藤あい、めっちゃ好きでした(笑)」
🐕「はは、知ってます(笑)」
🐏「ハウスが武田から買収したってことですか?」
🐕「そうそう。2006年に武田から離れたタイミングでハウスウェルネスフーズって名前になったんですよね」
🐏「へえー。ウェルネスって言葉、その頃からあったんですね。もっと最近かと思ってました」
🐕「ちなみにサントリーウエルネスは2009年設立」
🐏「あー、あのサプリ通販の。オンライン広告でよく見ます」
🐕「完全にターゲティングされてますね(笑)。ついでに、野村不動産ウェルネスが2015年、これももう10年前ですね」
🐏「よく次から次へと会社名出てきますね(笑)」
🐕「シニア向けレジデンスかなんかの会社ですよね」
🐏「っていうか、ウェルネスって何なんですかね(笑)」
🐕「健康食品、飲料からサプリメント、シニア向け不動産まで全部ウェルネス(笑)」
🐏「昔は「健康」とか「ヘルスケア」って言ってたものを「ウェルネス」とか「ウェルビーイング」って言うほうがおしゃれ、って感じになったと思ったら、意味まで広がっちゃってる感じ」
🐕「ポジティブな語感もありますよね。ウェルネスっていうと、病気にならないように気をつけましょう、みたいな話を超えて、もっと前向きな言葉に聞こえます」
🐏「野村不動産ヘルスケア、だとレジデンスじゃなくて病院みたいになっちゃいますし(笑)」
🐕「ですね(笑)。ウェルネスって誰かがちゃんと定義してそうですけど、実際の使われ方としては、身体的・精神的な健康をざっくり包含する、境界が曖昧な用語、って感じですよね(笑)」
🐏「はい、フィットネスから栄養、マインドフルネス、睡眠、瞑想、スキンケアまで、あらゆるものを包括する概念になっちゃいました」
🐕「いまや美容業界やファッション業界もウェルネスに侵食されてますもんね」
🐏「ヨガスタジオとかジムとかじゃなくて、街なかで普通にLululemonのレギンスとか履いて歩いてる人見るじゃないですか。あれもウェルネスですよ(笑)」

🐕「なるほど(笑)。じゃあErewhonの抹茶スムージーとかも?」
🐏「完全にウェルネスですね(笑)」
🐕「はは、ウェルネスって便利(笑)」
🐏「ですね。いま見てみたら、ウェルネスの市場規模、全世界で5兆6,000億円だそうです(笑)」

Global Wellness Institute
🐕「これ見ると、ウェルネス・ツーリズムとか、ウェルネス・ワークプレイスとか、現代のウェルネス文化は、生活のほぼすべての側面を包含するまでに膨れ上がってるってことですよね」
ティーンエイジ・ウェルネス
🐏「いまはウェルネス文脈でティーンをターゲットにしたスパとかメンタルヘルスアプリも増えてるみたいですもんね」
🐕「そうそう。ファッションや美容を飲み込んだウェルネスは、こんどは若年層をがっつりターゲットにしようとしてる」
🐏「ぼくらの世代からすると、10代でスパ行ったり、マインドフルネスアプリ使ったりって若干違和感ありますけど(笑)」
🐕「さっきツーリズムの話出てましたけど、専属のウェルネスアドバイザーが大人と子どもそれぞれに合わせた個別のウェルネスプランを組んでくれるのを売りにしてるような高級リゾートなんかも出てきてるみたいです」

Zulal Wellness Resort
🐏「いまのティーンってそんなに大変なんですかね(笑)」
🐕「まあ子どもは子どもなりにストレスや疲れもあるんでしょうけど(笑)、さっきのプランいわく、ヨガとか瞑想、クリエイティブ・ワークショップみたいなウェルネスプログラムが、子どもたちの「EQや対人スキル、自己認識力」を高めてくれるんだそうな(笑)」
🐏「くらくらしてきました(笑)」
🐕「自分のことを "Crunchy Teen"、つまり「健康志向のティーン」って呼ぶ10代のインフルエンサーたちも登場しています」
🐏「SNSによるウェルネス拡散(笑)」
🐕「はい、彼女たちは超加工食品を批判したり、フッ素入りの歯磨き粉は「毒」だって発信したり、スーパーでスナックの成分をチェックしながら「これ食べてると体がダメになるよ」って動画を上げたり」
🐏「そういうのって、科学的な根拠はあるんですか?」
🐕「そこが問題ですよね。彼女たちの発信には誤情報や誇張、陰謀論なんかも多くって、医療専門家とかは深刻に捉えてるみたいです」
🐏「ただ、そういう発信を信じちゃうフォロワーとかはいるんでしょうね」
🐕「科学的に疑わしい情報に踊らされたり過度に不安を煽られて、ウェルネス的な商品や体験——たとえば、さっきの、フッ素入りの歯磨き粉を否定していたインフルエンサーは、フッ素を含まない歯磨き粉を出してる会社と有料パートナーシップで提携してるみたいなんですけど——そういったものにお金を使うのってなんか「ヘルシー」じゃないですよね」
🐏「ウェルネス消費がヘルシーじゃない、ってことですね(笑)」
🐕「ツッコミありがとうございます(笑)」
🐏「でも、専門家でもない人の単純化された情報を鵜呑みにして逆に不健康になっちゃうみたいなことも起こりえますよね」
🐕「実際 "Crunchy Teen" たちの発信に心酔しすぎて食べ物とか食事に対するストレス、不安、罪悪感が助長されて摂食障害が悪化しちゃった、みたいな子どももいるみたいです」
🐏「あぶな…」
🐕「若い頃から健康を意識すること自体は良いことですけど、極端になると危険ですよね」
🐏「意識するっていう意味では、バービーのウェルネス・コレクションって2020年でしたっけ?バスボム、キュウリのアイマスク、キャンドルとかのスパセットでバービーちゃんのセルフケア(笑)ができるっていう」

Barbie Self Care Dolls
🐕「あー、そうですね。いまの空気感を象徴するような商品ですけど、子どもたちがウェルネスを意識する、ウェルネス・コンシューマーになるための入り口になりますよね」
🐏「子どもの頃から「ウェルネスってなんかステキ」「ウェルネスってかっこいい」って、将来の顧客を育ててる(笑)」
ウェルネス産業の素顔
🐕「顧客を育てるっていい響き(笑)」
🐏「ウェルネスっていう言葉がいかにぼくたちにとってポジティブに響いたとしても、所詮ぼくたちってウェルネス産業にとっての顧客でしかないですもんね」
🐕「はい。ウェルネスって自分たちの人生にとって大切なことなんだっていう風に腹落ちしたとしても、企業は「あなたをケアしてる」って顔をしながら、どんどん新しい商品やサービスを売り込むだけですよね(笑)。これらの企業は非営利でもなければ、本質的に利他的でもない。彼らの仕事は、我々にもっとお金を使わせることなわけで(笑)」
🐏「そのためには、不安や恐怖心を刺激して、何かしらの「解決策」を提示しなきゃいけない」
🐕「「完璧な自分」とか、「理想の健康」はこれだっていうのを想像させて、追っかけさせるっていう側面もありますよね」
🐏「ファッションやコスメと同じですね。「これ買えばキレイになれる」っていう」
🐕「ウェルネスの場合は、「これを飲めば身体の内側から輝く」とか、「これを試せば真の自分になれる」とか、「この瞑想アプリで心がクリアになる」とか」
🐏「で、気がつけば、「輝く自分」を目指すための出費がどんどん増えていく(笑)」
🐕「実際には、昔ながらの健康の概念を、もっと魅力的なパッケージに巧妙にリブランディングしただけっていうか」
🐏「新しいラベルつけてリブランディング、理想を追いかけさせる。不安を煽る。デジタルデトックスとかと一緒ですね(笑)」
🐕「はい。でも、ウェルネス、というか健康に対して積極的、前向きに取り組んでるってことは決して悪いことじゃないし、取り組んでいないことへのある種の後ろめたさを感じさせるような空気もある。ウェルネスのプロダクトを購入したりサービスを体験することはある種のステータスにもなりますし、それを求めてどんどんそれを求めてどんどんお金を使ってしまうようになる」
🐏「健康でありすぎるっていうことはないわけですからね。ある意味で終わりがない(笑)」
ヘルシーなウェルネス・ライフ
🐕「まあでも、ヨガしたり汗をかいたりするのは実際に気持ちいいし、体に良いっていうのも事実。だからこそ、過剰な商業化や不安を煽るマーケティングに惑わされず、自分のペースで楽しむのが一番ですよね」
🐏「そうですよね。インスタやTikTokでキラキラしてる人たちを見て「私もこうならなきゃ」って思うんじゃなくて、「私は私のペースでいいや」って思いながら自分の身体や気持ちに向き合うのが健全ですよね」
🐕「問題は、「これやらなきゃダメ!」って強迫観念に駆られたり、他人と比べたり、表層的なブームに踊らされること。ストレスは良くないです」
🐏「ですね。そういう意味じゃ、今日の会食で飲みすぎたとしても、たくさん喋って笑ってストレス発散して、精神的な充足感を得るのもある意味ウェルネスですね(笑)」
🐕「ウコンの力にも頼る(笑)」
🐏「はい、そのくらいが「ヘルシーなウェルネス・ライフ」なんだってことで(笑)」
🐕「ウェルネス、便利っすね(笑)。身体にもいいし、企業にとっても(笑)」
🎙️ポッドキャストはコチラ!
※ 生成AIが客観的な視点でレビューしています🐏🐕
🐏 Behind the Flock
“Sheepcore”で取り上げたテーマをさらに深掘りしたり、補完する視点を紹介します。群れの中に隠された本質を探るようなアプローチを志向しています。
1. ウェルネスの重圧にさらされるティーンたち
ティーン向けウェルネス産業の拡大は、若者のメンタルヘルスを支える一方で、新たなプレッシャーも生み出している。近年、多くのリゾートやアプリが若年層に特化したプログラムを提供し、「EQ」「レジリエンス」「デジタル時代の生存スキル」を教えることがトレンドとなっている。しかし、この動きは若者のストレスに対する解決策である一方で、自己改善への強迫観念や消費主義を助長する側面も指摘されている。スマートフォンやソーシャルメディアの影響も重なり、メンタルヘルス危機が深刻化する中、親の過剰な介入も問題とされる。
2. ‘Crunchy Teen’ ウェルネス・インフルエンサーの台頭
‘Crunchy Teen’ と呼ばれる10代のウェルネス・インフルエンサーが同世代の健康意識を高めているが、一部には科学的根拠に乏しい情報や陰謀論も含まれる。例えば、17歳のAva Noeは、加工食品を批判し自然療法を推奨しつつ、フッ素を「毒」と呼ぶ。こうした活動は「Make America Healthy Again」運動と共鳴し影響力を持つ一方、健康不安や誤情報拡散が問題視されている。専門家は、信頼できる情報源を求めるべきだと警鐘を鳴らしている。
3. スポーツ産業や製薬産業よりも大きいウェルネス産業
2023年のグローバル・ウェルネス産業の市場規模は6.32兆ドルに達し、これは2019年から25%増加し、製薬産業よりも大きい規模となっている(Global Wellness Institute報告)。この成長は高齢化や慢性疾患の増加、メンタルヘルスへの関心の高まりが背景にある。GWIはウェルネスを「ホリスティックな健康を目指す活動やライフスタイル」と定義し、個人ケア、美容(1.21兆ドル)、健康食(1.09兆ドル)、フィットネス(1.06兆ドル)など11分野で市場を分析。今後もウェルネス不動産や観光などが成長を牽引すると予測されている。
🫶 A Lamb Supreme
The Rest Is Sheepsが日常で出会った至高(笑)の体験をあなたにも。
Podcast『Sheepcore』チャンネルを開設しました!🎙️
皆さま、お待たせしました!The Rest Is Sheepプロジェクトの新たな展開として、Podcast『Sheepcore』チャンネルをスタートしました!
これまで本ニュースレターで取り上げてきた記事を、生成AIが客観的な視点でレビュー。男性と女性のナレーターによる掛け合いで、文章を読むのとはまた違った感覚で楽しめます。通勤中や家事の合間など、忙しい日常でも気軽に耳で情報をキャッチできるのが音声の魅力。
AIナレーションの精度の高さは私たち自身が驚いています!多少の読み間違いもありますが、それはご愛嬌(笑)。テキストをほぼ自然な会話として再現する技術に、思わず感心してしまうほど。
このPodcast「Sheepcore」では、AIによる第三者的な分析を通して、私たちの記事をこれまでとは違った角度から味わっていただけます。なお、AIが提示する見解や意見は、あくまでもAIによる解釈であり、The Rest Is Sheepとしてはそれらの見解を支持しているわけではありません。
これまで通りニュースレターを読んでいただいた後に、補完としてPodcastをお聴きいただくことをおすすめします。(逆でも良いかもしれません。)テキストと音声の両方に触れることで、内容の理解度が一層深まります。今はAIのみですが、そのうち我々の楽屋トークもしれっとアップ予定です!
新たな視点、新たな形式で、The Rest Is Sheepコンテンツをより深く、より身近に体験してください。 ぜひ、「Sheepcore」チャンネルをご登録いただき、最新エピソードをお見逃しなく🐏
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