#078_Sheep コーヒーを纏う

コーヒーカップがコーディネートの一部になる時代。ブルックリンのカートから出発し、評価額5億ドルに達したBlank Streetと、「Back to Starbucks」コンセプトのもとでブランド再生を図るスターバックス。規模も歴史も異なる2つのブランドが、なぜいまファッション・ウィークの最前線に立ちデザイナーとともに「カップスリーブ」を生み出しているのか。その背景には、手の届かない「It bag」に代わり、数ドルのドリンクに自己表現を託す消費者心理の変化がある。コーヒーが「最後のアクセサリー」として機能し、個人のアイデンティティを映し出す──その構造を読み解く。

“The Rest Is Sheep”は、デジタル時代ならではの新しい顧客接点、未来の消費体験、さらには未来の消費者が大切にする価値観を探求するプロジェクトです。

役に立つ話よりもおもしろい話を。旬なニュースよりも、自分たちが考えを深めたいテーマを――。

そんな思いで交わされた「楽屋トーク」を、ニュースレターという形で発信していきます。

↓無料登録はコチラから↓

🔍 Sheepcore

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネスなど、消費者を取り巻く多様なテーマをThe Rest Is Sheepのフィルターを通して紹介します。結論を出すことよりも、考察のプロセスを大切に。

コーヒーを纏う

🐏「お疲れさまですー。お待たせしました」

🐕「あ、おつかれさまです。なんかそのカップめっちゃおしゃれですね」

🐏「これですか?さっき打ち合わせしてた代々木公園のカフェのやつで」

🐕「そのカップも含めて、今日のファッションが完成されてる感じがします(笑)」

🐏「ぜんぜん意識してないです(笑)」

🐕「でも正直、これがコンビニのカップだったら、ちょっと違う雰囲気になりますよ(笑)」

🐏「それはそうかもですが(笑)」

🐕「デザインもかっこいいし、どんなに忙しくてもこだわりのカフェでの一杯を欠かさない、意図を持った生き方してるって感じです(笑)」

🐏「完全にバカにしてますよね(笑)」

🐕「ハハハ、いやいや。でもこれ、冗談とも言い切れなくて、今って、コーヒーとか抹茶ラテみたいなドリンクが、ファッションの一部として機能し始めてる、みたいなところありますよね」

🐏「……言われてみると、ちょっとわかるかもです(笑)」

※ 生成AIが客観的な視点でレビューしています🐏🐕

コーヒーカートが5億ドルになるまで

🐕「ニューヨークのBlank Streetって分かります?」

🐏「はい、ミントグリーンのコーヒーショップ。TikTokでもよく見ますよね。いま抹茶ドリンクの人気がすごいっていう」

🐕「2020年にブルックリンのコーヒーカートからスタートして、数年でマンハッタン中に広がって、ロンドンにも進出。今は90店舗以上展開していて、企業評価額は5億ドル超。累計の資金調達額は1億3500万ドル」

🐏「コーヒーカート一台からそこまで(笑)。展開、めちゃくちゃ早いですよね」

Blank Street(The New York Times)

🐕「しかも出資してるのがテック系のVCだったりするんですよ」

🐏「そこが不思議ですよね。普通のカフェチェーンにVCがお金を出すイメージってあんまりないですもんね」

🐕「初期モデルがかなり割り切ってて。店舗は極小、シンプルな内装、座席ほぼなし。アプリ注文と提供スピード、テイクアウトの効率を極限まで高めた」

🐏「ああ、サクッと買ってカップ持ってすぐ出る前提の設計」

🐕「誰でも、どこでも、すぐ同じ体験が手に入る仕組み。家賃も人件費も抑えられるから、一店舗あたりの採算、つまり「ユニットエコノミクス」が抜群にいい。VCにとっては、これは「ただのカフェ」じゃなくて「高速でコピー&ペーストできる高収益フォーマット」に見えたわけです」

🐏「パンデミックの持ち帰り需要も追い風にして、ビジネスモデルの強さでスケールしてったってことですね」

 

 

ファッションショーにコーヒーが入り込む

🐕「ですね。でも最近、おもしろい動きが別にあって」

🐏「というと?」

🐕「今年の2月、ロンドン・ファッションウィーク(LFW)に初参加して、「NewGen」っていうスペースでコーヒーや軽食を提供したんです」

🐏「NewGenって、若手の登竜門的な位置づけですよね」

🐕「はい。いわゆるビッグメゾンじゃなくて、Oscar OuyangやTolu Cokerといった、業界が「次に来る」っていう熱視線を送る新鋭ブランドが集まるエリアですね」

🐏「コーヒーブランドと若手デザイナーの組み合わせってなかなか新鮮です」

🐕「そこにはちゃんとした理由があって。Blank Street自身が、もともと自分たちを伝統的なヘリテージブランドに挑む「後発の挑戦者」として位置づけてるんですよ」

🐏「スタバとかブルーボトルとか、既存のプレイヤーが山ほどいる中に入っていったわけですもんね」

🐕「だからこそ、同じ志を持つ若手デザイナーたちを支援することが「自分たちは同じ側のプレイヤーだ」っていうナラティブを共有することになるんです。単なるスポンサーじゃないぞ、と」

🐏「単なるドリンク係じゃなくて、文脈を揃えてブランドのスタンスを表明しにいったということですね」

🐕「そのうえで、ちゃんと新しいプロダクトも出していて」

🐏「何ですか?」

🐕「はい、コーヒーカップ用の「パファースリーブ」なんです」

🐏「パファーって、あのダウンジャケットみたいな素材の?」

🐕「ですね。あのモコモコした質感をそのままカップスリーブにしたやつ(笑)。チームがエディンバラに出張したとき、寒くてコーヒーがすぐ冷めちゃったのがきっかけらしいですが、「見た目のインパクト」がすごい(笑)」

The Sleeve(Blank Street)

🐏「飲み物というより「持ち物」ですよね(笑)」

🐕「確かに(笑)」

🐏「でも、これを持って街を歩きたくなる気持ちは分かります(笑)」

🐕「キャンペーンではモデルのElla Snyderを起用して、「It-girl energy」をコンセプトに掲げた。つまり、「このカップを手に持てば、あなたが物語の主人公になれる」という提案ですね」

🐏「あ……さっきの話と繋がってきましたね(笑)。カップを持つこと自体が、ファッションの一部として設計されてる

🐕「そう、それをブランド側が意図的にデザインし始めてる、っていうところが重要で。回転率重視の「効率の店」だったはずが、今や「どう見えるか」を設計するライフスタイルブランドになろうとしてる」

🐏「単なる「規模が大きいカフェチェーン」とはまた違った次元の話ですよね」

🐕「で、同じシーズンのNYFW(ニューヨーク・ファッションウィーク)でも、似たような動きがあって」

🐏「あ、Starbucksですね。若手デザイナーを支援してるっていうニュース見ました」

🐕「AreaやCollina Stradaなど5組の新鋭ブランドに資金提供して、ショーをバックアップしてる。デザイナーがコーヒーカップのスリーブをデザインしたり、会場でギフトカードを配ったりも」

🐏「スタバもカップスリーブ…ちょっと欲しい(笑)。でも、ぜんぜんキャラクターが違う2つのブランドが、どちらもカップスリーブで着地してるって、何かあるんですかね」

 

コーヒーは「文化的通貨」になる

🐕「どちらも「コーヒーをファッションの文脈に乗せる」ことで、意味を拡張している」

🐏「コーヒーに、「ただ飲む以上の役割」を持たせようとしてるっていうことですよね」

🐕「その意味では、Blank Streetもスターバックスもファッションウィークに参加して作ったのがカップスリーブだったっていうのは象徴的ですよね」

🐏「Tシャツみたいなファッションアイテムを作るんじゃなくて、コーヒーカップそのものをファッションにしようとしてる、ということですよね」

🐕「規模も歴史も全然違うこの2つのプレイヤーが、どちらもコーヒーを「文化的通貨(Cultural Currency)」にしようとしているってことですね」

🐏「文化的通貨としてのコーヒー、なるほど」

🐕「コーヒーカップを手にしてる姿が、特定のコミュニティや文化の中で「わかってる人」っていう共感やステータスを生む」

🐏「代々木公園のカップを持って登場することで「わかってる人」感が出る、みたいな(笑)」

🐕「自分で言いましたね(笑)。でも、さっきの2つのブランドはアプローチがそれぞれ少し違っていて。Blank Streetは「若い文化との共鳴」から文化的通貨を作ろうとしてる」

🐏「でも、スタバはちょっとニュアンスが違いそうですよね」

🐕「彼らの場合は、もう少し切実で。巨大になりすぎて、「文化的な新鮮さが失われてる」っていう課題があるわけですよね」

🐏「ああ…」

🐕「スタバってもともと「自宅でも職場でもないサードプレイス」として文化を作ってきたブランドで、その「文化が生まれる場所」っていうポジションを、ファッションの文脈を借りてもう一度作り直そうとしてる」

Starbucks(Highsnobiety)

🐏「今の再生戦略の名前が「Back to Starbucks」ですもんね」

🐕「まさに。しかも彼らは去年の12月にファッション・ビューティー分野の協業を専門に担うシニアマーケティングマネージャー職を設置したり、キュレーターとしてサラ・アンデルマンを採用したりしてて」

🐏「え、元Coletteの?」

🐕「はい、90年代〜2000年代のパリのカルチャーシーンをまとめてた人で、Coletteは2017年に閉店した今もあの時代の「カルチャーの震源地」として語り継がれてる」

🐏「その目利きをスタバが起用してるのは象徴的ですよね。「文化的な嗅覚を持った人間のキュレーション」でブランドを刷新しようとしてる」

🐕「SNSでは、コーヒーカップがあたかもファッションアイテムとしてとして収まっているコーディネート写真が溢れてますよね」

🐏「靴履いて、コート羽織って、バッグを手に取る。で、コーヒーカップを「最後のアクセサリー」として扱う、という発想」

🐕「OOTD、つまり今日のコーデの一部としてのコーヒーカップ」

🐏「コーヒー、完全にファッションアイテムになってますね(笑)」

🐕「高級バッグやスニーカーが「自分を表現する記号」として機能するのと同じ構造」

🐏「でも、バッグやスニーカーよりずっと安い(笑)」

 

「It bag」から「It sleeve」へ:日常のロマン化

🐕「価格は重要ですよね。いま「自分を表現する記号」としてラグジュアリーブランドのバッグを買おうと思ったら数千ドルは当たり前ですから」

🐏「インフレと価格改定の連続で、Z世代やミレニアル世代にとって、かつてのファッションアイコンたちが競って手に入れた「It bag」は、文字通り手が届かないものになりつつありますよね」

🐕「その代わりに選ばれるようになったのが、「日常の中の小さな贅沢」。いわゆる「リップスティック効果」の現代版です」

🐏「不況のとき、高価なドレスは買えなくてもちょっとした贅沢としての口紅の売上は上がる、っていうアレですね」

🐕「その「現代のリップスティック」の象徴がLAの高級グローサリー、Erewhonであり、Blank Streetの7ドルの抹茶ラテなんですよね。それを手に持ってSNSにあげることで、「自分らしいライフスタイル」を表現できる」

🐏「「日常のロマン化(romanticizing)」ですよね。何気ない日常をドラマのワンシーンに変えるための、一番手頃な小道具」

🐕「毎日買える、写真映えする、手が届く価格」

🐏「「ちゃんとした自分の時間を過ごしてる」感を、数ドルで演出できる」

🐕「その意味でBlank Streetが提示した「It-girl energy」っていう言葉は、示唆的ですよね。数百万円の「It bag」を腕に下げることはできなくても、数ドルのコーヒーにパファースリーブという「It-sleeve」を纏わせれば、誰だってその瞬間に、街の視線を集める「It-girl」になれる」

🐏「数千ドルのバッグは無理でも、数ドルの抹茶ラテなら毎日でも「主人公」になれる」

🐕「というわけで、主人公っぽくて良い感じですよ、今日(笑)」

🐏「やっぱりバカにしてますよね(笑)」

🐏 Behind the Flock

“Sheepcore”で取り上げたテーマをさらに深掘りしたり、補完する視点を紹介します。群れの中に隠された本質を探るようなアプローチを志向しています。

1. コーヒー、でもおしゃれに

Z世代は日用品をアクセサリー化しトレンドを生み出す存在であり、その延長でコーヒーや抹茶も「ファッションの一部」へと変化している。これに応える形で、Blank Streetはキルティング仕様のカップスリーブ「The Sleeve」を展開。抹茶は単なる飲料を超え、個性や美意識を示す文化的記号となり、バッグやサングラスのようなスタイリングの最終要素として機能する。機能性と審美性、ブランド性を兼ね備えた本製品は、日常における手頃なラグジュアリー志向の高まりを象徴。ロンドン・ファッションウィークでの発表やキャンペーン展開を通じ、同ブランドはファッションとカルチャーの交差点で存在感を強めている。

2. スターバックスがファッション・ビューティー部門を率いる初のマネージャーを採用

スターバックスは、ブランド再活性化の一環として、ファッション・ビューティー分野の協業を専門に担うシニアマーケティングマネージャー職を初めて設置し、Neiv Toledano氏を起用した。同社のCEO、Brian Niccolが掲げる「Back to Starbucks」戦略のもと、文化的コラボレーションを強化しており、ニューヨークファッションウィークへの参加やTaylor Swiftとの連携など、音楽・スポーツ・ファッション各分野での取り組みが加速している。専門家は、ファッション・ビューティーに関心を持つ若い女性層への訴求が文化的影響力の回復に有効と指摘しており、今後のコラボ戦略の成否が注目される。

3. 「Erewhon Girl」はファッション界の最新のビッグトレンドなのか

Hailey Bieberによる高価格スムージーのヒットを契機に、ロサンゼルス発の高級グロサリーErewhonは、健康・美容・ラグジュアリーを象徴する存在として台頭した。従来のバッグやスニーカーといった「所有」を誇示する消費から、スムージー片手に過ごす日常そのものをスタイル化する「ライフスタイル消費」へと価値観が転換している。パンデミック以降、日常行為を洗練された体験として楽しむ志向が強まり、アスレジャーとウェルネスを融合した装いが都市部を中心に広がった。さらにセレブとのコラボ商品やSNS拡散によりErewhonはグローバルな文化記号となり、Balenciagaとの協業にも見られるようにファッションとの結びつきを強化。こうして「Erewhon Girl」に象徴される、自然体で健康的かつ洗練された美意識が現代の新たなトレンドとして定着している。

🫶 A Lamb Supreme

The Rest Is Sheepsが日常で出会った至高(笑)の体験をあなたにも。

今週もお休みです 🐏

すべての誤字脱字は、あなたがこのニュースレターを注意深く読んでいるかを確認するための意図的なものです🐑

この記事が気に入ったら、大切な誰かにシェアしていただけると嬉しいです。

このニュースレターは友人からのご紹介でしょうか?是非、ご登録お願いします。

↓定期購読はコチラから↓