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#066_Sheep Tシャツの多い料理店
カフェの入口に並ぶスウェット、デリが展開するフーディ、グローサリーストアのトートバッグ——いま、食のブランドがこぞってマーチャンダイジング(Merch)に乗り出している。かつては「ネタ」だったファストフードのロゴTシャツも、いまや本気のファッションステートメントだ。外食頻度が減る時代、Merchは新たな収益源というより、消費者との関係性を切らさないための接点になっている。アパレルが飲食に進出し、飲食がアパレルを展開する——業態の境界が溶け、「何を売るか」より「どんな関係性を作るか」が問われる時代。デリコアからグローサーコアへ、ポスト・アイロニックな「フード・ファンダム」の現在地を探る。

“The Rest Is Sheep”は、デジタル時代ならではの新しい顧客接点、未来の消費体験、さらには未来の消費者が大切にする価値観を探求するプロジェクトです。
役に立つ話よりもおもしろい話を。旬なニュースよりも、自分たちが考えを深めたいテーマを――。
そんな思いで交わされた「楽屋トーク」を、ニュースレターという形で発信していきます。
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The Rest Is Sheepより、年末のご挨拶を申し上げます。
2025年も最後の月曜日を迎え、昨年12月にスタートしたこのニュースレターも、ちょうど一年の節目となりました。隅々まで読み込んでくださる方、時折流し読みで楽しんでくださる方、登録したままそっと見守ってくださっている方──情報の選択肢が溢れるなかで、また、AIやアルゴリズムが「近道」を鮮やかに照らしてくれる時代に、このニュースレターに少しでも関心を寄せてくださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。
価値観が揺らぎ、トレンドの更新速度が増す時代において、文化の領域で信頼できる指針や手がかりを見つけることは、決して容易ではありません。来年も、「私たちなりの切り口」を携えながら、皆さんとともに文化の深層を辿っていけたらと思います。 来る2026年が、皆様にとって穏やかで豊饒な一年となりますように。 新年最初の配信で、またお目にかかりましょう。🐏🐕
どうぞ良い年末年始をお過ごしください。
🔍 Sheepcore
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネスなど、消費者を取り巻く多様なテーマをThe Rest Is Sheepのフィルターを通して紹介します。結論を出すことよりも、考察のプロセスを大切に。
Tシャツの多い料理店

©️The Rest Is Sheep
🐏「お疲れさまですー」
🐕「お疲れさまですー。お、かっこいいっすねそのスウェット」
🐏「あ、これですか?代々木公園にあるカフェが作ってるアパレルで。いい感じですよね(笑)」
🐕「最近ほんと多いですよね。カフェ入ると、入口にアパレルとかちょっとしたグッズが並んでるの」
🐏「そうなんですよ。しかも「お店のグッズ」っていうより、普通に服として完成度高いんですよね」
🐕「わかります。昔だったら、カフェのグッズってマグとかトートとか、「記念品」の延長でしたけど」
🐏「今はもう「ちゃんと選択肢に入る服」ですよね」
🐕「こういうの、業界的には「マーチャンダイズ(Merchandise)」とか、略して「マーチ(Merch)」って呼ばれてますけど」
🐏「あー、ライブTシャツとかの「マーチ」ですよね」
🐕「そうそう。もともとはバンドやアーティスト、スポーツチームがファン向けに出すTシャツやグッズのこと。でも今は、それをレストランやカフェ、デリが本気でやり始めてる」
デリコアからグローサーコアへ
🐏「そういえば、2022年くらいにアメリカで「デリコア(Delicore)」って言葉、流行りましたよね」
🐕「ありましたね。Zabar’sとかRuss & Daughtersみたいな老舗から、Edith’sみたいな新しいデリまで、一斉にキャップやフーディを出し始めた時期」
🐏「ジェイク・ジレンホールがRuss & Daughtersとコラボした、「LOX」って書いてある150ドルのフーディ、覚えてます?」

Russ & Daughters
🐕「覚えてます(笑)。LOXって、ベーグルに挟む、あのスモークサーモンですよね(笑)。にしても、デリのフーディが150ドルってなかなかの値段(笑)」
🐏「CoachとZabar’sのコラボもすごかったですよね。500ドルするニットとかトートとかが即完売」
🐕「デリコアについて取り上げたNew York Postの記事の中で、「普通の服屋で買うより「マーチ」の方にお金をかけるんだ。だって、そっちの方が個人的で意味がある気がするから」ってコメントしてる若者がいて、印象的でした」
🐏「服がお店との関連性を生んでる」
🐕「はい、「お店へのロイヤルティ」を身にまとう行為ですよね。「自分が通うデリ」が、スポーツチームやバンドみたいなアイデンティティになる」
🐏「Uncle Paulie’s Deliの創業者が言ってた「バンドTシャツみたいなもんだ。メタリカのTシャツを着てる奴みたいに、お気に入りのデリのTシャツを着たっていいだろ?」ってやつも、すごい象徴的でした(笑)」
🐕「ハイブランドのロゴじゃなくて、ローカルな食のブランドを身につけることで、自分の居場所やコミュニティへの帰属意識を表現してる、ってことですね」
🐏「で、その流れが今はデリを超えてきてる、と」
🐕「そうですね。ニュースレターのSnaxshotが「グローサーコア(GrocerCore)」って呼んでる流れですよね。Erewhonみたいなグローサリーストアがトートバッグとかキャップを出して、単なる食料品店以上の存在になってる」
🐏「BAGGUの野菜柄トートとかも、完全にその文脈ですよね。Whole Foodsで買い物する時間そのものを、ちょっと楽しくしてくれる」
🐕「いまや食品の買い物は「見せる体験」、パフォーマンスですからね(笑)」

Erewhon
「ポスト・アイロニー」としてのフード・マーチ
🐏「ちなみに、いまはみんな普通におしゃれだと思って着てますけど、ちょっと前は「カフェのTシャツ」着るのって、なんかジョークっていうか、ネタ感ありませんでした(笑)?」
🐕「ですよね(笑)。「ポスト・アイロニック(post-ironic)」的な状況に入っていると言えるかもしれません」
🐏「ポスト...アイロニック?」
🐕「1990年代だったら、マクドナルドのロゴが入ったTシャツみたいにファストフードやダイナーのマーチを着るのって「敢えて」感があって、ちょっと皮肉やジョークっぽいファッションステートメントでしたよね」
🐏「あー、そうですね。「ダサいって分かってるけど、あえて着てるんだよ」みたいな(笑)」
🐕「はい。でも2025年の今は、一周まわってそれが本気になってる。皮肉や冗談じゃなくて、本当に好きで着てるわけです(笑)」
🐏「ちょっと前に「McMerch」の動画がバズってましたけど、あれだって皮肉でも内輪ネタでもなかったですもんね」

@louiek81
🐕「むしろ、「フード・ファンダム(Food Fandam)」とでも言うべき素直な愛情表現ってことですね。お気に入りのフードブランドを、スポーツチームを応援するのと同じくらい真剣に、かつ純粋な「推し」として身にまとってる」
なぜいまフード・マーチなのか
🐏「ちなみに、いま外食業界ってそんなに景気良いわけじゃないじゃないですか」
🐕「そうですね。むしろ逆ですよね」
🐏「たしかに、物価は上がってるし、チップも必要だしで、「今日は外で食べに行こうか」って、前より気軽には決めにくくなってきてますよね」
🐕「特に若い世代や低・中所得層は、チェーンレストランに行く回数を減らしてますもんね」
🐏「その意味では、新たな収益源っていう位置づけも大きいんですかね?」
🐕「あ、それ大事なとこですよね。Merchは、一見すると「新しい収益源」に見えるし、それ狙って始めた飲食店も多いと思うんですけど、本当の役割は違う気がするんですよね」
🐏「というと?」
🐕「もちろん、Merchで新しい売上が立つに越したことはない。でも、大事なのは消費者とブランドとの関係性を強化することなんじゃないかと」
🐏「関係性?」
🐕「はい。さっき話してた通り、「今日は外食しない」「節約したい」「家で食べる」みたいな選択をされる日が圧倒的に増えてるわけじゃないですか」
🐏「はい、実際に店で食べてもらうのが難しくなってる」
🐕「Merchは、そんなときに、消費者との関係を切らさないための手段になるんじゃないかと」
🐏「あー。行かなくても、身につけてる」
🐕「はい。Merchを通じて日常に入り込むことで、「行けない日」でもブランドとの接点を切らさずにいられる。Merchの真価は短期の売上よりも、記憶と関係性の蓄積にあるんでしょうね」
🐏「洗濯して、また着て、そのたびにブランドが思い出される。あと、街を歩けば周りの人もロゴを目にする」
🐕「まさに今日みたいに(笑)」
🐏「ブランドアドボカシー、つまり「勝手に語ってくれる存在」になるってことですね」
🐕「はい、逆に消費者にとって、TシャツやキャップみたいなMerchは、「今日は行けなかったけど、嫌いになったわけじゃない」っていう感情の置き場になりますよね」
🐏「あー、確かに。自分が好きな店のスウェット着てるわけですもんね」
🐕「なので、Merchって「また戻ってきたい場所」であり続けるための投資って言えるのかもしれません」
🐏「長期的な関係性づくり、ってことですね」
服が食に近づき、食が服に近づく
🐏「そういえば前に、アパレルやブランドがカフェやレストランに進出してってるって話をしましたけど」
🐕「はい。服を売るだけじゃなくて、飲み物や空間まで含めて体験を作るっていうトレンド」
🐏「今回はその逆で、カフェやレストラン、デリがMerchという形でアパレルに出ていってる」
🐕「ちょうど、真逆のベクトルですね。アパレルの人は飲食に出ていこうとするし、飲食の人はアパレルをやろうとする(笑)」
🐏「「飲食店」とか「服屋」みたいな既存のカテゴリを分けてた境界線が曖昧になっててきてる、っていう話でもありますね」
🐕「業態の話じゃなくて、関係性の話」
🐏「結局は「何を売るか」より、「お客さんとどういう関係性を作りたいか」が大事ってことですよね」
🐕「その意味では、Merchって、その関係性を作っていくうえでいちばん日常に近いメディアなのかもしれないですね」
🐏「最初に話してた「カフェの入口に並んでるTシャツ」の意味も、だいぶ変わって見えてくるような気がします(笑)」
🐕「だからこそ、ただ単にロゴ貼っつけて作れば良いってわけじゃないですよね。どんな関係性をつくりたいか、ってところが大事」
🐏「ですね。Merchの前に、関係性ありきで」
🐕「というわけで、我々のニュースレターのMerchにも乞うご期待ってことで良いでしょうか(笑)?」
🐏「ええと、一回アタマ整理させてください(笑)」
🎙️ポッドキャストはコチラ!
※ 生成AIが客観的な視点でレビューしています🐏🐕
🐏 Behind the Flock
“Sheepcore”で取り上げたテーマをさらに深掘りしたり、補完する視点を紹介します。群れの中に隠された本質を探るようなアプローチを志向しています。
1. ベーグルを求めて来店し、Tシャツを買って帰る
ニューヨークで「デリコア」と呼ばれる新しいファッショントレンドが広がっている。地元のデリやベーグル店が販売するパーカーやキャップなどのグッズを着用するスタイルで、高級ブランドのCoachとZabar'sがコラボ商品を発売するなど、大手も参入している。フードデリバリーサイトGoldbellyでは関連グッズの売上が前年比30%増加した。ピート・デイヴィッドソンやジェイク・ジレンホールといった著名人も愛用し、トレンドを後押ししている。支持者たちは「スポーツチームのロゴを着るように、お気に入りの地元店を応援できる」と語り、同じ店を知る人同士の秘密のクラブのような連帯感を楽しんでいる。比較的手頃な価格で個性を表現でき、地域コミュニティへの帰属意識を示せる点が人気の理由となっている。
2. 広がる「フード×ファッション」現象
ファッションにおける「食」は、今や「花がら」に代わる新たな定番プリントとなっている。1930年代のスキャパレッリによるロブスタードレスに端を発したこの潮流は、現代のMOSCHINOやBAGGUといったブランドへと引き継がれ、日常を彩るアートへと進化を遂げた。この背景には、ミレニアル、Z世代特有の「現実逃避」と「帰属意識」がある。経済的不安の中で、高級な缶詰や(食をモチーフにした)地中海風の装いは、安価に豊かなライフスタイルを演出する手段となっている。特に、スーパーをライフスタイルの象徴とするトレンド「Grocercore(グローサーコア)」の台頭により、特定の店舗のロゴ入りトートやキャップを身に着けることは、単なる買い物以上の「自己表現」や「コミュニティへの参加」を意味するようになった。SNS時代において、誰もが理解できる「食」の美学(Alimentari Aesthetics)は、孤独な個人が他者と繋がり、日常をロマン化するための最も身近な共通言語となっている。
3. マクドナルドのファンが、「McJeans」に大騒ぎしている
マクドナルドで着用されているスタイリッシュな制服ジーンズ「McJeans」がSNSで話題となっている。ヨーロッパの店舗スタッフが、ヒップポケットに控えめなゴールデンアーチ入りの美しいフィットのデニムを着用する動画がTikTokで拡散され、再生数は800万回超。「欲しい」「可愛い」と「McMerch」的な盛り上がりを見せた。マクドナルドは地域ごとに制服の裁量を与えており、ポーランドやオランダではデニムが定番。フランスはミニマル、ポルトガルはデザイナー起用の洗練路線。一方、米国は機能性重視でリサイクル素材の制服を導入している。
🫶 A Lamb Supreme
The Rest Is Sheepsが日常で出会った至高(笑)の体験をあなたにも。
今週もお休みです 🐏
すべての誤字脱字は、あなたがこのニュースレターを注意深く読んでいるかを確認するための意図的なものです🐑
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