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#062_Sheep 越境するレストラン
パンデミック以降、「レストラン = 食事のための場所」という前提は静かに揺らいでいる。朝はカフェ、夜はDJバーと姿を変え、デザートを主役にしながら本格的なワインを揃える店も珍しくない。米国メディア「Eater」がベストレストランを選出した際に直面したのは、もはや既存の枠に収まらない「越境する飲食店」の増加だった。背景には家賃高騰などの経済圧力がある一方で、人々が「どんな空間で、誰と時間を共有するか」を重視する価値観の変化がある。機能がにじみ合い、境界がほどけていくこの変化は、混沌ではなく、私たちが日常の風景をアップデートし続けていることの静かな証なのかもしれない。

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越境するレストラン

©️The Rest Is Sheep
はい、時間になりましたー。今日の授業始めていきましょう。
さて、突然ですが皆さん「Eater」というメディア、ご存知ですか?食文化を扱うアメリカのオンラインメディアで、レストランのレビューから業界トレンド、シェフのインタビューまで、かなり影響力のあるメディアです。
このEaterが毎年発表するのが「Best New Restaurants」リスト。新しくオープンした店の中から、最も注目すべきレストランを選ぶ企画です。
今年、2025年版のリストを作るため、Eaterのチームは数か月にわたって全米を駆け巡り、例年同様「どのレストランがいま、本当に注目に値するか」、「どのシェフに光を当てるべきか」といった議論を重ねました。
でも、今年は例年とは違う問題に直面しました。いわゆる「ジャンルを簡単に定義できない」レストランが各地でどんどん登場していたんです。朝はカフェ、夜はバー。料理はデザート中心。ワークスペース兼ギャラリー兼ポップアップレストラン。どれもカテゴライズが難しい。でも料理は素晴らしく、お客さんで溢れている。
「Best New Restaurants」というタイトルでリストを作ろうとしているのに、肝心の「レストラン」の定義が揺らいでいる(笑)。あらゆるリテールがレストラン化、カフェ化してるみたいな最近のトレンド──「Brewtique」なんて言葉も登場しています──とも重なるところがありますよね。
Eaterのチームは、この困惑を前向きに捉えました。「定義が曖昧だからリストから外す」のではなく、「そもそもレストランとは何か?」という問いそのものを、真正面から考え直すことにしたんです。
今日は、そのEaterが注目した店の中から、特に象徴的な4つのお店を見ていきましょう。それぞれが、まったく異なる形で「レストラン」という枠組みを揺さぶっています。
カテゴライズを拒む店:Potential New Boyfriend
まず最初は、ノースカロライナ州アシュビルの「Potential New Boyfriend」、日本語にすると「新しい彼氏候補」って感じでしょうか(笑)。なんとも不思議な名前ですよね。

Potential New Boyfriend
この店がオープンしたのは2024年9月、ハリケーン・ヘリーンがアシュビルを襲った直後です。街が大きな被害を受け、多くの店が閉鎖を余儀なくされる中、Potential New Boyfriendは復興の象徴として、地域コミュニティに受け入れられていきました。
さて、この店は昼と夜でまったく違う顔を見せます。日中は太陽の光があふれるリビングルームのような空間で、ポップアートに囲まれ、ソファやミッドセンチュリーの椅子が並んでいる。メニューの中心はデザート──タヒニのチーズケーキ、マサラチャイのアイスクリームサンデー。でもワインリストもあって、カジュアルな雰囲気で楽しめる。
夜になると、ゲストDJがハイエンドスピーカーから音楽を流し始めます。公式には「バー」として営業していて、21歳以上しか入れない。でも伝統的なバーのイメージとはほど遠い。むしろ、音楽好きの友人の家に遊びに来たような感覚です。
オーナーのディスコさんはもともとファーマーズマーケットで小さなアイスクリーム・ビジネスをやっていました。でも彼が本当にやりたかったのは、普通のアイスクリームショップじゃなかった。
「ぼくが提供したいのは、友人のリビングルームで開かれるディナーパーティーに来たかのような体験なんだ」
つまり、「店のカテゴリー」から出発するんじゃなくて、「体験」から逆算して設計したわけです。冷たいデザート、カジュアルなワイン、小皿料理、音楽、何時間でもくつろげる空間──それらすべてを一箇所にまとめた。

Potential New Boyfriend
結果として、ノースカロライナ州の酒類管理局や保険会社ですら「どう分類したらいいかわからない」って困るほど、カテゴライズ不能な場所になった(笑)。ディスコさん自身、こう語っています。「お客さんも何を期待していいかわからないのかもしれない。でもそれがいいんだよね。驚かせられるから(笑)」
これ、従来の「レストラン」の定義に当てはまりますか?カフェ?バー?デザート専門店?ハイファイラウンジ?どれでもあるし、どれでもない。しかもこの曖昧さこそが、この店の魅力になっているんです。

Potential New Boyfriend
本当に機能しているオールデイ・バー:Cuties
同じような動きが全米各地で起きています。メイン州ポートランドの「Cuties」は、午前9時から午後11時まで営業する「オールデイ・バー」です。
パートナーのブライス・サマーズさんはこう説明します。「伝統的なカクテルバーでも、伝統的なレストランでも、伝統的なコーヒーショップでもない、もっと多くの役割を果たす空間が必要だと感じたんです。ポートランドのオールドポート地区には、それぞれ単体としては素晴らしい選択肢がたくさんある。「お酒を飲むための店」も、「コーヒーを飲むための店」も、「食べるための店」も。でも、その中間にあるような、もっと自由に行き来できる「ジャンル横断の空間」がなかったんです」と。この発想、おもしろいですよね。「カフェでもバーでもレストランでもある」んじゃなくて、「カフェとバーとレストランの「間」にいる」。その隙間を埋める、というアイディアです。
一日を通じてカクテルもコルタードも提供する。昼は卵とチーズの「マックグリドル」、そして夜はカクテルとココナッツシュリンプトーストやクラブチップスといったスナック。床から天井までの窓から日光が差し込み、夕方になるとバックバーのネオンサインが点灯して、夜への移行を告げる。空間そのものが、朝から夜へと流れるように変化していきます。

Cuties
この戦略の狙いは明らかです。カフェを求める客、バーを求める客、レストランを求める客──すべてを取り込むことで、顧客ベースは3倍になる。しかも同じ客が、朝コーヒーを飲みに来て、昼にランチ食べて、夜また飲みに戻ってくる可能性がある。サマーズさんの言葉を借りれば、「たくさんの異なるものを提供する機会が得られる。広く網を張れるんだ」ということです。
実は、このアプローチには経済的な背景もあります。2018年、メディア「Bon Appétit」がポートランドを「レストラン・シティ・オブ・ザ・イヤー」に選んだんですね。それからCOVID後の飲食ブームも重なって、競合店がどんどん増えた。過熱した市場で差別化するために、「オールデイ・バー」という未開拓のレーンを狙ったわけです。決して革命的なコンセプトではないかもしれない。でもポートランドにとっては新しい。「やろうとしていることのスコープは大きくて挑戦的だけれど、それが私たちの大きな個性になっているんです」とサマーズさんは語ります。

Cuties
近隣コミュニティに根ざした日常空間:Third Place
テキサス州ヒューストンには、その名もズバリ「Third Place」という店があります。運営する二人のシェフ、イヴリン・ガルシアさんとヘンリー・ルーさんは2006年から続くリアリティ・ショー『Top Chef』出身。料理の実力は折り紙付きです。もともと二人は「Jūn」というラテン・東南アジア料理のレストランを経営していました。そしてThird Placeは、その店の空間を日中の時間帯にも活用するため、カフェとして始めたんです。
でも、カフェという業態は彼らにとってあくまで出発点に過ぎません。「シェフ・レジデンシー・プログラム」では、ポップアップの料理人が入れ替わりで店に立つ。地元の陶芸家、フローリスト、ジュエリー作家といった職人たちが、この空間でワークショップを開く。さらに、リモートワーカーが仕事の合間に創造的な気分転換ができるよう、クラフトテーブルも用意されている。

Third Place
「最近は、新しくできるコーヒーショップの多くが「カフェ兼バー」みたいな形に変わっています」とルーさんは言います。「家賃はどんどん高くなるし、ひとつの業態だけでは厳しい。だから皆、それぞれの夢を続けるために、従来の枠にとらわれない発想で新しいやり方を模索しているんです」
ガルシアさんの言葉もまた示唆に富んでいます。「私自身が、料理や職場の外でもっと創造的になれる「何か」を求めているんです。それをこの店にも取り入れたい。アートの展示もやりたいし、陶芸も、花も置きたい。人が気軽に来て楽しめるような、そんなものを集めたいんです」
業界において、「Third Place(サードプレイス)」という言葉は、正直、使い古されたバズワードかもしれません。でも、ルーさんはこう話します。「私たち自身がずっと欲しかった、世の中にあったら素敵だなと思える空間を作ったんです。だから、「Third Place」という言葉がぴったりだった」
興味深いのは、二人が「特別な日の目的地」から脱却し、「近隣に根ざした日常的な場所」への転換を明確に目指している点です。Jūnでの本格的な食事には気後れする人も、カフェやワークショップなら気軽に来られる。そこから関係が始まり、やがてコミュニティの一部になっていく。ビジネス的にも顧客基盤の拡大につながるし、文化的にも意味がある、と。
@vivis.travels Third Place Cafe #coffeespots #houston #matcha #povseries #cozycafe
パブのつもりがレストランに:The Wren
最後はメリーランド州ボルチモアの「The Wren」です。オーナーのウィル・メスターさんたちがモデルにしたのは、アイルランドやイギリスのパブ。彼ら重視したのは、食事よりも社交の場としての機能でした。なので、チームは、The Wrenをフルサービスのレストランにするつもりはありませんでした。
「正直、シンプルなガストロパブにしたかっただけなんです。本当はバーだけでも十分だと思っていました。週に数日だけ料理を出して、あとはドリンク中心でやる形も考えたんですが、ローンのことを考えるとそれは無理ですし、そんなやり方だとお客さんも来ませんからね」とメスターさんは語り、バーの片隅に設置した二口のIHコンロとコンベクションオーブンを使って、ラムのミンチ料理やトースティ、ブラウンブレッドのテリーヌなどを丁寧に作っています。
問題は、美味しい料理を提供すると、たとえ予約やテーブルサービスを廃止しても、人々はあなたのパブをレストランのように扱うようになるということです(笑)。そして決定的だったのが、The New York Timesの「The Restaurant List 2025」と、Bon Appétitの「The 20 Best New Restaurants of 2025」にThe Wrenが選ばれてしまったこと。単なるパブのつもりだったのに(笑)。

The Wren
想定外の反響でした。全国的なメディアで紹介された料理を求めて行列ができ、カジュアルで社交的な空間の雰囲気は一変しました。当初は前方のバーを食事用、奥のラウンジをローテーブルとスツールでドリンク専用にする予定だったんですが、現在では、両方のエリアで料理を提供せざるを得なくなった。店のレイアウトも調整を余儀なくされています。
「最初は問題なかったんですが、想像以上に忙しくなると、裏方で対応できる限界が試されました。そのため、状況に合わせてある程度はメニューも組み立て直さざるを得なかったんです」
でも、メスターさんはこの変化についても楽観的に受け止めています。「いったんお客さんにボールを渡して、どうなるか見てみて、そこからどう成功できるかを考えるしかないんです」
この言葉、すごく重要だと思うんですよね。店側が完璧な計画を立てて、それを一方的に実行する、というモデルじゃない。お客さんと一緒に、その場所の使い方を探っていく。そういう柔軟性と対話性が、これらの新しいタイプの店に共通しているんです。

The Wren
経済的必然性が引き出した創造性
さて、ここまで4つのお店を見てきました。
ノースカロライナの──デザートバー?音楽ラウンジ?──いや、ディスコさん自身が「友人のリビングルーム」と呼んでいましたね(笑)。メイン州の──オールデイ・バー?オールデイ・カフェ?オールデイ・レストラン?──正解は「その全部でもあるし、そのどれでもない」でした(笑)。ヒューストンの──Third Placeという名前がすべてを物語っていますが──カフェでもワークスペースでもギャラリーでもあるマルチファンクション空間。そしてボルチモアの──ガストロパブ?いや、The New York TimesとBon Appétitは「レストラン」と呼びましたが、オーナーは今も「パブ」のつもりです(笑)。
どれも既存のカテゴリーに収まらない。いや、収まらないことこそが、これらの店の本質なわけですが、じゃあ、なぜ今、こうした「境界なき飲食店」が増えているんでしょうか?そしてこの現象から、私たちは何を読み取ることができるのでしょうか?
まず第一に、これを単なる「おしゃれなトレンド」として片付けることはできないということです。背景には深刻な経済的プレッシャーがあります。
家賃は高騰し続けています。人件費も上昇している。従来型のビジネスモデル──ランチとディナーのピークタイムに稼ぐ──では、もはや採算が取れないケースが増えているんです。だから経営者たちは、複数の収益源を組み合わせざるを得ない。朝はカフェ、昼はランチ、夜はバー。あるいは、食事だけでなくワークスペースやイベントスペースとしても機能させる。
Third Placeのルーさんの言葉を思い出してください。「家賃はどんどん高くなるし、ひとつの業態だけでは厳しい。だから皆、それぞれの夢を続けるために、従来の枠にとらわれない発想で新しいやり方を模索しているんです」
でも興味深いのは、この経済的必然性が、逆に創造性を引き出しているという点ですよね。制約があるからこそ、「じゃあ、どうやって複数の機能を組み合わせて、それでいて一貫した体験を作れるか?」という問いが生まれる。Potential New Boyfriendのポップアートと高品質オーディオの組み合わせ。Cutiesの一日を通じて変化する空間デザインとサービス。Third Placeのコミュニティ志向の多様なプログラム。そしてThe Wrenは、バーの片隅にあるたった二口のIHコンロという制約を逆手に取って、「少量でも丁寧に作る」パブ料理の哲学を貫いている。
経済的サバイバルと、クリエイティブなビジョンが、切っても切れない形で結びついている。これが、境界なき飲食店の第一の特徴です。
パンデミックが揺さぶった「レストランの定義」
二点目として、パンデミック以降、消費者行動が根本的に変化した点を指摘しておきましょう。
みなさんもそうじゃないですか?以前より外食の頻度は減ったけど、一回あたりの体験にはこだわるようになった。ロックダウンで店内飲食が禁止されて、デリバリーやテイクアウトが当たり前になり、「レストランで食べる」という体験そのものの意味が問い直されたんです。
冒頭で紹介した、全米を駆け巡ってレストランを取材したEaterのチームは、記事でこんなふうに書いています。「2020年にパンデミックがレストラン業界を不安定化させてから5年。「not-quite-restaurants(レストランとは言い切れない店)」が至る所にある──しかもめちゃくちゃ良い料理を出してる」
パンデミックは、「レストラン=座って食べる場所」っていう固定観念を壊したんです。そして経営者たちに気づかせた。「別に、伝統的なレストランの形にこだわる必要なくない?」って。
実際、テイクアウトやデリバリーが主流になったとき、多くの飲食店が「私たちが提供しているのは、料理だけなのか?それとも空間体験も含めたものなのか?」という問いに直面しました。料理だけなら、ゴーストキッチンでもいいわけですから。
ちなみにこの問いは、世界最高峰のレストランでも避けられなかった。2023年1月、世界的に最も影響力のあるレストランの一つ、コペンハーゲンの「Noma」のシェフ、レネ・レゼピさんが衝撃的な発表をしました。2024年末でレストラン営業を終了し、「テストキッチン」に転換、ポップアップやオンラインを中心に活動する、と。

Noma
Nomaといえば、「The World's 50 Best Restaurants」で5回も1位に輝き、ミシュラン三つ星を獲得した、文字通り世界最高峰の店です。一人500ドル以上するコース料理。予約は何ヶ月も先まで埋まっている。でもレゼピさんはこう語っています。
「お客様をもてなすことは、これからも私たちの本質の一部です。でも、レストランであることが、私たちを定義するものではなくなります」
Nomaであり続けるためには、変わらなければならない──これがレゼピさんの結論でした。常設のレストランという形態から離れ、フードラボとして研究開発に専念し、商品開発やポップアップという形で成果を共有していく。「レストラン」という定義そのものを拡張したわけです。
興味深いのは、今日見てきた店も、Nomaとは違う形で、同じ方向を向いているということです。
Nomaは「常設の場所を持たない」という選択で「レストラン」の定義を拡張した。一方、Potential New Boyfriend、Cuties、Third Place、The Wrenは「複数の機能を持つ」という選択で「レストラン」の境界を曖昧にしている。アプローチは違うけれど、どちらも「レストラン = 固定された形態」という考え方から自由になろうとしているんです。
カジュアルで、でも本物のつながりがある場所。ファインダイニングの頂点が「場所の固定性」を手放す一方で、境界なき飲食店は「業態の固定性」を手放している。
パンデミックは危機だったけれど、同時に、レストランというものを根本から考え直す機会にもなった。そしてその答えは、一つじゃなかった。世界最高峰の店も、新しいタイプの店も、それぞれの方法で「レストランとは何か」という問いに、新しい答えを出そうとしているわけです。
人々の価値観の変化──「体験」と「つながり」への渇望
そして三点目。これが一番大きいと思うんですけど、私たちが飲食店に求めるものが、根本的に変わってきているということです。
Third Place のルーさんは「人は料理そのものより、コミュニティのためのライフスタイルを求めて来る。すべては「vibe(バイブ)なんだ」」と言います。
「バイブ」という言葉が指しているのは、空間全体が醸し出す雰囲気、そこにいる人々の間に流れる感情的なトーン、そしてその場所が体現する価値観やライフスタイル全体。単なる「おしゃれさ」とは違います。もっと包括的で、感覚的で、でも確かに存在する何か、です。
かつて飲食店は主に「何を食べるか」で選ばれていました。でも今は、「そこにいる自分がどう感じるか」「誰と空間を共有するか」といった要素が、料理以上に重要になっています。
Potential New Boyfriendで友人とデザートを食べながらDJの音楽を聴く夜。Third Placeで陶芸ワークショップに参加した後、作家の話を聞きながらコーヒーを飲む午後。The Wrenで初めて会った人と、パブ文化について語り合う夕方──どれも「食事」を超えた体験として記憶され、SNSで共有され、アイデンティティの表現にもなる。
もちろん、表面的な「映え」だけを狙った店はすぐに見透かされます。成功しているのは、本物のビジョンと一貫性を備えた場所ばかりです。「友人のリビング」というPotential New Boyfriendの世界観、朝から夜への自然な流れが組み込まれたCutiesの空間、サードプレイスとしての機能を実現しているThird Placeの多層的プログラム、The Wrenの──社交第一、食事は二の次という──パブ文化への忠実さ。
つまり「バイブ」とは、表層的な演出ではなく、空間、人、プログラム、そして経営者の哲学が一体となって生み出す、総合的な体験なんです。
前向きなカオスとしての未来
さて、そろそろ終わりの時間が近づいてきました。皆さん、いかがでしたでしょうか?今日の話は、決して「レストランはもうダメだ」というネガティブな話じゃありません。
確かに、経営者たちは厳しい経済状況と戦っている。家賃は高い、人は足りない、競合は増える。でもその制約の中から、驚くほどクリエイティブな答えが生まれている。「できないこと」を嘆くんじゃなくて、「じゃあ、何ならできるか」を考えた結果が、今日見てきたような店なんです。
カテゴリーが崩れて、定義が曖昧になって、境界が溶けていく。一見、混乱しているように見える。でもその混乱の中から、新しい創造性が生まれている。誰も見たことのないような場所が、次々と登場している。この「前向きなカオス」とでも呼ぶべき状態こそが、今、飲食業界で起きていることの本質なんじゃないかと思います。
「レストランはこうあるべき」「カフェはこうあるべき」──そういう「べき」に縛られる必要はない。むしろ、「自分が本当にやりたいことは何か」「どんな場所があったら素敵だと思うか」「どんな体験をしてもらいたいか」から出発していい。それが既存のカテゴリーに当てはまらなくても、全然構わない。
恐れずに境界を越えること、カテゴリーを混ぜること、「それ、何て呼べばいいの?」って誰かを困らせること(笑)。その混乱こそが、次の時代の始まりなんでしょうね。今日はアメリカの事例でお話しましたが、もしかしたら皆さんの周りにもそういった場所が静かに生まれているかもしれません。ぜひ皆さん自身で体感してみてくださいね。
はい、というわけで今日の授業はここまでです。お疲れさまでした!
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※ 生成AIが客観的な視点でレビューしています🐏🐕
🐏 Behind the Flock
“Sheepcore”で取り上げたテーマをさらに深掘りしたり、補完する視点を紹介します。群れの中に隠された本質を探るようなアプローチを志向しています。
1. ジャンルの枠にとらわれないPotential New Boyfriendの魅力
デザートレストランであり、ワインバーであり、さらにハイファイのリスニングラウンジでもあるPotential New Boyfriendは、ウエスト・アシュビルで甘いひとときを楽しむなら、最も居心地がよく、間違いなく最もクールな—スポットだ。店名は、ドリー・パートンの1984年のアルバム『Burlap & Satin』に収録されたヒットシングルから取られている。ジャンルの枠にとらわれず、独自のコンセプトを築いているのがこの店の魅力だ。オーナーのディスコは、店内のムードに合わせてレコードを選んで流し、ペイストリーシェフのダナ・アムロミンは、ワインやスピリッツのラインナップと自然につながるデザートメニューを提供する。私が心底驚いたのは、濃厚なチョコレートケーキをココナッツクリームに浸し、ペイストリークリームと香ばしいトーストココナッツをのせた「ココナッツ・トレスレチェ・ケーキ」が、完全ヴィーガンだったことだ。深みがあってほろ苦いコニャックの小さなグラスと合わせると、今年食べた中でも屈指の一皿になった。
2. このオールデイバーは本当に「終日使える」
Cutiesは、理想と現実のギャップが大きい「オールデイバー」を実際に成立させている稀有な店だ。ポートランドの外食市場が飽和するなか、従来のカフェ・レストラン・バーの隙間を埋める多用途な空間として設計された。朝はコーヒーと仕事、昼は軽食、夕方はコーヒーとカクテル、夜はバーと、時間帯ごとにサービスが段階的に変化するが、あくまで自然に連続していく点が特徴だ。大きな窓や音楽、ネオンライトが空間の雰囲気を緩やかに切り替え、利用者の過ごし方がそのまま店の“トーン”をつくる。昼は個食向けのサンドイッチやバーガー、夜はシェアしやすいスナック類など、メニューもニーズに合わせて変化する。一方で、昼夜の切り替えは負担が大きいため、エスプレッソ提供の締め時間を明確にするなど運用面の工夫も欠かせない。こうした細部の調整によって、Cutiesは「本当に一日中使える店」として成立している。
3. The Wrenで過ごす時間
ミリー・パウエルとウィル・メスターは、The Wrenをレストランにしたくはなかった。断固としてパブにするつもりだったのだ。パウエルの故郷ダブリンにあるような、社交の場として人々の暮らしに自然に溶け込む「公共のリビングルーム」。それこそが、大西洋を隔てた二人の遠距離交際中にメスターを夢中にさせた空間だった。親しい友人や共犯者、身近な人たちが肩を並べて座れる場所。しかし問題は、こんなに美味しい料理を出してしまうと、人々はパブをレストランのように扱ってしまうことだ。予約を受け付けず、テーブルサービスをしなくても、だ。いずれにせよ、The Wrenは、本来の楽しみ方で味わうのがいちばんだ。友人とカウンターに腰をかけ、誇らしげに注がれたギネスを何杯か楽しむ。あるいはスコッチサワーを一杯。少しお腹が空いたころで、メスターがカウンターの端にある小さなキッチンに滑り込み、その日の朝にチョークで書かれたメニューから何かを作ってくれるだろう。
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