#025_Sheep すべてがカフェになる

かつて「買い物客の休憩所」に過ぎなかった小売店の飲食事業が変貌を遂げている。UNIQLOのカフェ、ストリートウェアブランドのエスプレッソバー、そしてLouis Vuittonのラグジュアリーな食空間まで、なぜリテーラーたちは飲食に参入するのか?「モノからコトへ」の時代に、カフェやレストランの空間がブランドの新たな顔になりつつある現象を探る。

“The Rest Is Sheep”は、デジタル時代ならではの新しい顧客接点、未来の消費体験、さらには未来の消費者が大切にする価値観を探求するプロジェクトです。

役に立つ話よりもおもしろい話を。旬なニュースよりも、自分たちが考えを深めたいテーマを――。

そんな思いで交わされた「楽屋トーク」を、ニュースレターという形で発信していきます。

🔍 Sheepcore

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネスなど、消費者を取り巻く多様なテーマをThe Rest Is Sheepのフィルターを通して紹介します。結論を出すことよりも、考察のプロセスを大切に。

すべてがカフェになる

©️The Rest Is Sheep

イケアのミートボール

🐏「お疲れさまです。すいません、お待たせしました」

🐕「いえいえ、お疲れさまですー。なんか今日も人混み半端ないですね。駅からここにたどり着くまで人かき分けて来ました(笑)」

🐏「さっきここ来る前に渋谷のIKEAの前通ったんですけど、1階のスウェーデンビストロのとことかも外国人がたくさんいて」

🐕「ええぇ、あれってビストロなんですか(笑)!」

🐏「そこですか(笑)。ほぼカフェですけど、そういう名前なんですよ(笑)」

🐕「あ、そうなんですね(笑)。立ち席ですよね?」

🐏「はい、スタンディングだと思います」

🐕「人、入ってるんですね〜。あそこって上がレストランでしたっけ?」

🐏「ですね、最上階がスウェーデンレストランです」

🐕「下がビストロで上がレストラン、どっちも入ったことないです(笑)。IKEAはミートボールのイメージありますけど、ビストロとかレストランとか、そういうイメージはなかったです(笑)」

🐏「あー、やっぱりミートボールですよね(笑)。渋谷のお店は都市型の店舗ですけど、もともとの郊外型の大型店舗でも飲食提供してますもんね」

🐕「はい、あの迷路を延々と歩き回りながら家具見て悩んだり選んだりしてると座りたくなるし小腹も減るし、家族連れとかだとまず子どもがギブアップしますよね」

🐏「はい、そう考えると店舗内に飲食あるっていうのは合理的です」

🐕「大きな家具を買うかどうか迷ってるお客さんが、店内でちょっと座ってリラックスしたり、お腹を満たしながらじっくり悩んだり相談したりできる場所にもなってますよね」

🐏「「腹減ったわ〜」で店の外に出ちゃったら、もう一回あの迷宮に戻る気分にはならないですしね(笑)」

🐕「わかります(笑)。そう考えると、リテールが飲食を提供するって発想自体は昔からあるってことですよね」

🐏「デパートとか、何十年も前からカフェやレストランを店舗に併設してますしね」

🐕お腹の空いたお客さんの生理的な欲求を満たしてあげるための機能を店舗内に持つことで、お客さんをできるだけ長く店舗内に留まらせて、洋服とか家具とかをゆっくり見て回ってもらったり、店員が話しかけたりして、商品を買ってもらえる確率を高める」

🐏「マズロー・メソッドですね(笑)」

コーヒーを売るアパレル

🐕「リテールと飲食っていえば、最近はもっと踏み込んだ動きもありますよね。UNIQLOもニューヨーク、ミッドタウンの旗艦店に北米店舗としては初めてのカフェ、Uniqlo Coffeeをオープンしたって話題になってましたし、そのちょっとまえの1月にMUJIがニューヨークのChelsea Marketに北米初のフードマーケットを開店したっていうニュースもありました」

🐏MUJIは飲み物だけじゃなくて日本の家庭料理を提供してくみたいですね。ロボットバリスタもいるみたいで、気になります(笑)」

🐕ロボットバリスタくん会いたいです(笑)

Muji Food Market

🐏「最近だとストリートウェアブランドのカフェも多くなってきました。たとえばCarhartt WIPがAllpress Espressoと組んでロンドンのKing's Crossの店舗内にエスプレッソバーを出してたり」

Carhartt Coffee

🐕「LVMH Luxury Venturesも出資してるAime Leon DoreがオープンしたCafé Leon Doreなんて常に行列みたいですよ」

🐏「確かに、このあたりのカフェを見てると、洋服を買いに来た人をただ引き留めるためのものっていうより、カフェそのもののデザインや体験を通して、ブランドの個性をしっかり打ち出してる感じがします」

🐕「さっき話してた、大型IKEAのミートボールとか昔のデパートにあった喫茶スペースとかとぜんぜん役割が違う(笑)」

🐏「服じゃなくてカフェの方めがけて来てる人もいそうですよね」

🐕「まさに、それが重要ですよね。ちなみに、Café Leon DoreってアパレルブランドのAime Leon Doreのカフェなのに、カフェブランドとしてのグッズ展開もやってて、そのなかにスウェットとかTシャツとかアパレルアイテムも含まれてるんです(笑)」

Café Leon Dore

🐏アパレルブランドが出したカフェのアパレルグッズ、ってことですよね(笑)。ただ、SWAGのクオリティはさすが(笑)、かっこいいです

🐕「こういう展開を見てると、一口に「リテーラーがカフェを併設してる」って言っても、その目的は昔とはだいぶ変わってきてる気がしますね」

🐏Aime Leon Doreの服はちょっと高くてそんなに何着も買えない、って人でも好きなブランドの雰囲気に浸りながら5.75ドルのフレッドエスプレッソで気分良くなれるんなら、っていう人もいますよね

🐕「俳優やモデルとして活躍していて、Marking Distanceっていう自分のブランドも持ってるファッションアイコンのLuka Sabbatが去年おもしろいこと言ってて「2024年にストリートウェアのお店を開くための第一歩:ステップ1:店内にカフェを作る、ステップ2:コーヒーを売る、ステップ3:ついでにTシャツも売るかも」と(笑)」

🐏カフェがメインになっちゃってる(笑)

家具屋が「食」を売る理由

🐕「ですね(笑)。そういえば、RHって知ってます?もともとRestoration Hardwareっていう名前だった高級家具屋なんですけど」

🐏「あ、ニューヨークのMeatpacking Districtとかにある家具屋ですよね。そっか、あそこもレストランやってましたよね」

🐕「そうそう。ミニロブスターロールにキャビアがのってて68ドルとか、もはや軽食どころじゃない、ガチのレストランやってるっていう(笑)」

🐏「家具見にいって子どもがダレたからちょっと休憩、とかいうレベルを超えてますね(笑)」

🐕「はい、高級家具屋がやってるっていうのもあって内装が異常に豪華なんですよね。インテリアのショールームがそのままレストランになったような世界観」

🐏「写真見ると、レストランの空間が家具のショールームとほとんど一体化してます」

RH Restaurant

🐕IKEAの大型店とか百貨店にあるカフェやレストランは、ショッピングの合間の補助的サービスっていう側面が大きかったですよね。顧客体験を補完する役割が強くて、独立したデスティネーションとしての魅力は限定的です」

🐏「でも、Café Leon DoreとかRH Restaurantとかはショッピングとは関係なく訪れる価値のあるデスティネーションとして設計されてる感じがします」

🐕「お客さんはここで食事することで、RHの家具に囲まれたラグジュアリーな世界観に自然と没入する。CEOのGary Friedmanは、RHを単なる家具屋じゃなくて「ラグジュアリー・ライフスタイル・ブランド」に進化させようとしてて、彼にとってレストランはそのビジョンを具現化する重要な要素なんですよね」

🐏「インスタにあがってる写真とか見てても、料理より内装とか空間の方が多いですもんね。レストランが家具を売るための補完的な要素じゃなくて、ブランドアイデンティティ強化の中核的な要素ってことですね」

🐕「ちなみにすごいのが、RH Restaurantの各店舗は年間平均1,000万ドルの売上があるみたいで、ちゃんと収益も確保してる」

🐏「なんかここまでくると「家具屋のレストラン」じゃなくて「レストランでブランディングしてる家具ブランド」って感じですね」

ラグジュアリーブランドの飲食参入

🐕「そうなんですよ。これってラグジュアリーブランドがやってるレストランとかも同じですよね」

🐏「あ、ちょうど同じこと考えてました。Louis VuittonのLe Café VとかGucci Osteriaとか」

🐕「RH Restaurantが家具屋のサイドサービスを超えて「空間ごと味わうデスティネーション」になってるように、ラグジュアリーブランドのカフェやレストランも、ファッションの「おまけ」じゃなくて、ブランドアイデンティティを表現するための舞台装置になってきてますよね」

Le Café V

🐏「Le Café VとかGucci Osteriaもそうですけど、料理はもちろん椅子や食器、空間デザインに注目が集まってたりして、もはや「体験」の場になってますよね」

🐕「もちろん料理も美味しいけど、それ以上に「このブランドの世界に自分が入り込んでるんだ」って感覚が主役になってる感じです」

🐏「食べるビジュアルアイデンティティ」「飲む世界観」みたいな(笑)」

🐕「モノだけじゃなくて、空間とか味覚とか、もっと五感レベルでブランドとつながりたい、っていう欲求が高まってるんだと思います」

🐏「はい。「モノから体験へ」って言われて久しいですけど、ラグジュアリーブランドの飲食展開にもその変化がしっかり反映されてるんですね」

🐕「はい。もはや飲食はサイドビジネスじゃなくて、ブランドの世界観をトータルに伝えるためのコアなチャネル。空間も味覚も含めて、「そのブランドでしかできない体験」をつくる場なんですね」

🐏「SNSで共有される「体験の瞬間」としてもカフェは相性いいですし、「マズローメソッド(笑)」的に言えば、今や自己実現とか所属欲求のレベルに来てますね(笑)」

🐕ラグジュアリーブランドとストリートウェアがともに「食の体験を通じて世界観を届ける」ってところに行き着いてるのはおもしろいですね」

🐏「でもほんと、カフェや飲食って、企業やブランドの顔としての世界観やそこでしかできない体験も作りやすいですし、異業種からの飲食参入って、今後ますます増えそうですね」

🐕「はい。単に儲かりそうとか滞留率が上がるからって理由じゃなくて、「ブランドの本質をどう伝えるか」って観点から、飲食にたどり着く企業はもっと出てきそうです」

🐏「もはや「おいしいから来てください」じゃなくて、「我々のブランドでしかできない体験を、ここで」っていう時代ですね」

🐕「我々もカフェ参入しますか!」

🐏「ニュースレターのカフェ参入って(笑)」

🐕「カフェ作って、コーヒー売って、ときどきニュースレターも出すかも、的な(笑)」

🐏「それよりカフェブランドのSWAGだけ先に展開しときましょう(笑)」

🐏 Behind the Flock

“Sheepcore”で取り上げたテーマをさらに深掘りしたり、補完する視点を紹介します。群れの中に隠された本質を探るようなアプローチを志向しています。

1. なぜ今、ストリートウェアの店はこぞってコーヒーを販売しているのか?

近年、ストリートウェアブランドの店舗でコーヒーを提供するのが定番化している。背景には、来店者数の増加や滞在時間の延長、ブランドとの接点づくりがある。高価格帯商品を購入できない客層にも、コーヒーを通じてブランド体験を提供できる点が魅力だ。また、Z世代に支持される「コミュニティ重視」のマーケティングとしても有効で、イベントやランニング会などを通じて顧客との絆を深めている。次に求められるのは、この体験を超える新しい仕掛けだ。

2. RHはなぜレストランをオープンするのか

高級家具ブランドRH(旧Restoration Hardware)は、レストラン事業に進出して注目を集めている。RHはニューヨークやシカゴなどの店舗に併設する形で15以上のレストランを展開しており、その豪華な内装が訪問者を惹きつけている。多くの客は料理よりもデザインを目当てに訪れ、年1,000万ドル以上の売上を誇る店舗もある。CEOのGary FriedmanはRHを単なる家具店ではなく、ラグジュアリーブランドとして位置づける戦略の一環として飲食事業を強化しており、今後は海外にも進出予定だ。

3. ホスピタリティに進出するラグジュアリーブランド

近年、ラグジュアリーブランドが日本市場で「ホスピタリティ」領域へ進出する動きが顕著だ。シャネルは銀座の旗艦店内にミシュラン二つ星レストラン「ベージュ アラン・デュカス」を展開し、ルイ・ヴィトンやグッチも東京で高級レストランやカフェを運営している。これらの取り組みは、オフライン体験を重視する日本の消費者に対し、単なる買い物以上の価値を提供し、ブランドとの深い結びつきを促進する狙いがある。ホスピタリティの提供を通じて、ブランドは日本市場における存在感と顧客ロイヤルティを一層高めている。

🫶 A Lamb Supreme

The Rest Is Sheepsが日常で出会った至高(笑)の体験をあなたにも。

ハイボールの概念を再定義。渋谷カルチャー×匠の技。『UNREAL HI-BALL』第三弾!!

カクテル世界チャンピオンの鈴木敦さん(THE BELLWOODBW CAVEオーナー)が監修する、渋谷発の革新的クラフトハイボールシリーズ。第三弾の「WAGYU & COLA」は、伝統的な「バーボンコーク」をモダンにアレンジしながらも、どこか懐かしさを感じる味わい。私も早速試しましたが、もはやカクテルでした◎是非お試しあれ🐏

すべての誤字脱字は、あなたがこのニュースレターを注意深く読んでいるかを確認するための意図的なものです🐑

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