Baa,Baa,Baa. | Week of Apr 6, 2026

【Weekly Picks】Quinceの企業価値100億ドルは妥当か?

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。

The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。

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Weekly Headlines

  1. Quinceの企業価値100億ドルは妥当か?

  2. Glossierの再建戦略

  3. Everlaneの苦境と再生への模索

  4. Labubuブーム減速の中、Pop Martは新商品に注力

  5. バー・スツールからバーベルへ

  6. GLP-1の普及が「刺激的な味」のブームを巻き起こしている

  7. 世界の有力者、再びメディアへ

  8. 昆虫養殖産業の失速

  9. デベロッパー主導の壁画、その役割と是非

  10. 「スマホ禁止」のバーやレストランが増加している

1. Quinceの企業価値100億ドルは妥当か?

オンラインリテーラーのQuinceが、最新の資金調達で企業価値100億ドルの評価を受け、市場の注目を集めている。2018年創業の同社は、カシミアやシルク、リネンといった高級素材を用いながらも競合を下回る価格で提供し「品質価格比」を武器に成長。年間売上は10億ドル規模に達し、ミレニアル世代を中心とした、いわゆる「Aspirational Bougie(背伸びした高級志向者層)」の支持を獲得してきた。SheinやTemuと同様に工場直送モデルを採用しつつも、Quinceの差別化の軸は「品質への信頼」に置かれている。さらに、節約額を明示するシンプルな価値提示によって、従来のD2Cが抱えた「なぜ安いのか」が伝わりにくいという課題を乗り越えた。ミニマルで洗練された美学と「Quiet Luxury」の世界観を打ち出すとともに、家具やスキンケア、食品へと領域を拡張。キャビア缶は完売を繰り返すなどアイコニックなヒット商品も生んでいる。近年はA$AP Rockyとの協業や、ドン・ペリニヨンなどのラグジュアリー商品の取り扱いを通じて、模倣品ブランドからの脱却とライフスタイルブランドとしての地位確立を志向する一方、品質への懐疑や、模倣可能なビジネスモデルゆえの競争激化というリスクも抱える。Quinceが売っているのは、単なる低価格商品ではなく、「節約しながら贅沢を楽しむ」というミレニアル的ハックそのものだ。節約と贅沢を両立させる新しい消費価値提案を持続できるかが、次の成長を左右する。(BoFはこのスタイルのタイトルが好きだ。)

2. Glossierの再建戦略

人気コスメブランドGlossierは、近年の迷走を経て、フレグランス事業の再構築に乗り出している。香水は同社売上の約40%(約9,000万ドル)を占める中核事業だが、短期間に3種の新作を相次いで投入した成長至上主義的な戦略を採った結果、各商品の位置づけやブランドの訴求軸が曖昧化。市場での存在感も弱まっていた。新CEOのColin Walshはこの状況を立て直すべく、新香水「Soie」の投入と並行して、主力香水「You」の再強化に着手した。着目したのは、「You」が持つ本来の価値──身につける人自身を主役とし、肌によって香りが変化する「スキン・セント」という考え方。これを再訴求するキャンペーン「You Smell Good」により、停滞していた売上はSephoraなど主要チャネルで再び二桁成長へと転じている。今後は無闇な販路拡大を避け、既存パートナーとの関係強化や直販の立て直しを優先する方針。あわせて、「Doux」など評価の高い香りに資源を集中し、ボディケア製品への展開も視野に入れる。こうした選択と集中を通じて、フレグランス事業を1億ドル規模へと引き上げる狙いだ。もっとも、この立て直しがどこまで市場の信頼を取り戻せるかは、なお不透明な部分も残る。一度曖昧になったブランドの輪郭は、短期間で回復するものではない。再びブランドの核である「You」の思想に立ち返り、その延長線上で次なるヒットを生み出せるか──その成否が、Glossierのこれからを大きく左右することになりそうだ。

3. Everlaneの苦境と再生への模索

かつてパンデミック期にD2Cブランドの旗手として脚光を浴びたEverlaneがいま深刻な停滞局面にある。「Radical Transparency(徹底した価格の透明性)」とミニマリズムを武器に支持を集めた同社だが、ポストパンデミックにおいて価格帯と価値訴求の両面で立ち位置を見失った。再起を狙った「Clean Luxury」戦略も、実際の価格帯との乖離やサステナビリティ疲れといった消費者心理とのズレにより機能しなかった。創業以来、約1億3,000万ドルのエクイティ・ファイナンスを実施(その中核をL Cattertonによる8,500万ドルの出資が占める)し成長を続けてきたが、市場環境の変化と戦略の迷走が重なり、失速。現在の年商は約1億7,000万ドルで損益はほぼ均衡するものの、過去2年にわたり売上は前年割れが続き、関税負担も収益を圧迫している。こうした状況のもと、同社は新規投資家の獲得と資本再編を迫られている。この苦境は、「メッセージ先行・プロダクト後追い」というD2Cブランドに共通する構造的課題を象徴するものでもある。Quinceが台頭するなか、低価格ベーシック市場は急速にコモディティ化し、差別化は一層困難になった。Everlaneが再生するには、安易な「ラグジュアリー」志向ではなく、価値と品質に根ざしたブランドへの回帰が不可欠だろう。業界では創業者Michael Preysmanの復帰を期待する声もあるが、本格的な再建には少なくとも5年を要するとの見方が強く、最悪の場合はブランドライセンスの管理・運用を担う企業による再編も視野に入る。

4. Labubuブーム減速の中、Pop Martは新商品に注力

Pop Martは、爆発的ヒットとなったLabubu依存からの脱却を図り、複数IPによる成長モデルへの転換を進めている。2025年には4億個以上のトイを販売したが、その約4分の1が「The Monsters」シリーズに集中するなど、特定IPへの偏重が続いてきた。しかし、供給拡大や偽造品の流通により希少性が揺らぎ、転売プレミアムは縮小。米国売上の成長率も約1,270%から40%へと急減し、ブームの減速が顕在化している。こうした変化は、希少性に依存した成長モデルの限界を示している。こうした状況を受け、同社は「Twinkle Twinkle」「Skullpanda」「Crybaby」など新興IPの育成を加速。とりわけTwinkle Twinkleは2025年上半期に約390億円を売り上げるなど急成長を遂げ、Skullpandaもコラボ展開を通じて海外で存在感を高めている。一方で、新IPのヒットにはばらつきがあり、過剰投入によるブランド毀損リスクも指摘される。依然として海外売上の多くはLabubuに依存しており、新規IPも同キャラクターの集客力に支えられている側面は否めない。Pop Martは、限定販売やコラボによって話題性と希少性を維持しつつ、「世界的IPプラットフォーム」への進化を志向する。だが、その成否は単一ヒットから脱却し、持続的にIPを育成できるかにかかっている。ディズニーやサンリオのような「複数IPによる成長モデル」を実現できるかが、今後の分水嶺となる。

5. バー・スツールからバーベルへ

若年層を中心に、飲酒習慣と社交スタイルに大きな変化が生じている。家計に占めるアルコール支出は過去40年で最低水準に近づいており、その背景には価格要因ではなく、消費量そのものの減少によるものだ。特に自宅での飲酒が減少する一方で、バーでの支出は堅調に伸びており、「家飲み離れ」と「外飲み維持」という二極化が進む。また、「ドライ・ジャニュアリー」のような完全な禁酒の広がりは限定的で、全体としては禁酒ではなく節度ある飲酒(moderation)への移行が見られる。こうした変化を主導しているのがZ世代やミレニアル世代であり、過去10年で過度な飲酒は大きく減少した。さらにGen Zでは、バーよりもフィットネスやアクティブな趣味への支出が顕著に伸びている。この結果、社交の場は従来のバーからジムへと移りつつあり、「飲むこと」を中心とした交流から、「身体を動かすこと」を軸とした新たなつながりへと再編されている。これは単なる嗜好の変化にとどまらず、健康志向や価値観の変化を背景に、消費行動と社会的関係のあり方そのものを変え始めている。

6. GLP-1の普及が「刺激的な味」のブームを巻き起こしている

GLP-1受容体作動薬(肥満症治療薬)の普及が、米国の食品市場に予期せぬ構造変化をもたらしている。最新の研究では、同薬が甘味、塩味などの基本的な味覚を鈍化させることが示されており、利用者は従来以上に「パンチの効いた味」を求める傾向にある。加えて、筋萎縮といった副作用への対策から、食生活は加工食品から離れ、高タンパク中心へとシフトしている。しかし、鶏肉や卵、野菜といった健康的な食材は総じて味が淡白だ。味覚の鈍化と食材の特性が重なることで、風味を補うソースやマリネ、スパイスへの需要が一気に顕在化した。この変化は投資市場にも波及している。日本風バーベキューソースの「Bachan’s」が約4億ドルで買収され、ホットソース「Tapatio」も競争入札の末に売却されるなど、調味料ブランドは業界平均を上回る評価を獲得。健康志向と味覚変化が交差するこの領域は、「加工から素材へ」という食の転換を支える存在として、新たな成長セクターへと浮上している。

7. 世界の有力者、再びメディアへ

かつてCoca-ColaやGeneral Electricがそうであったように、現代のビジネス界を牽引する巨頭たちが、再びメディアに強い関心を示している。OpenAIは人気テック番組「TBPN」を買収し、Larry EllisonはCNNやParamountの再編を後押しする。さらにJamie Dimonも独自メディアの立ち上げに意欲を見せる。背景にあるのは、既存メディアへの不信と、世論形成における影響力を自ら掌握したいという欲求だ。経営者が記者やメディアを介さず直接発信する「ダイレクト化」の流れとも響き合う。こうした動きは、Jeff Bezosによるワシントン・ポスト買収に見られるように繰り返されてきた。しかし、メディアは収益性や運営の難易度が高く、理想通りに機能しない例も多い。一方で、分断が進む情報環境においても、伝統メディアは依然として注意を束ねる数少ない装置であり、その価値は簡単には代替できない。ゼロから信頼や影響力を築くよりも、既存の媒体を「買う」ほうが早いという現実もある。それでも、メディアを所有すれば語りを支配できるわけではない。最終的に何が読まれ、信じられるかを決めるのは常に受け手であり、主導権はオーディエンスに委ねられている。

8. 昆虫養殖産業の失速

2010年代半ば、昆虫は増加する人口と家畜需要を支える「未来の食料」として脚光を浴びた。国連の報告書や専門家の提言を背景に、欧米では累計で約20億ドルの資金が流入し、昆虫養殖スタートアップが乱立するブームが生まれる。だが、その期待は10年足らずで急速にしぼんだ(どこかできいた話そっくりだ)。最大の要因は、市場とコストの両面で成立しなかった点にある。欧米では昆虫食は広く受け入れられず、人間向け市場は珍味の域を出なかった。さらに飼料用途でも、昆虫ミールは大豆や魚粉の代替として期待されたものの、飼育に必要な餌やエネルギーコストが高く、価格は3.5倍から10倍に達し競争力を欠いた。加えて、餌となる農業副産物が既存の家畜飼料と競合するなど、「持続可能」という前提自体にも揺らぎが生じている。こうした中、最大手のŸnsectが資金難に陥り、大手食肉企業との共同プロジェクトも停止するなど、巨額投資の回収は困難な状況となった。昆虫養殖は今や、ペットフードや廃棄物処理といった周辺的な用途へと縮小している。この顛末は、革新的技術が食料問題を解決するという期待の限界を示すと同時に、真に問われるべきは新たな食材ではなく、動物消費そのもののあり方であることを浮き彫りにしている。

9. デベロッパー主導の壁画、その役割と是非

近年、アメリカの都市部では、新築マンションの無機質な外壁を彩る巨大壁画が急増している。デンバーをはじめ各都市では、公共事業費の一部を芸術に充てる制度に加え、民間デベロッパーも地元アーティストの起用を進めている。その背景にあるのは、コスト削減を優先した現代建築が均質化し、いわゆる「茶色い箱」と揶揄されるほど都市の個性を失っている現実だ。装飾を削ぎ落とされた建築の代替として、壁画が視覚的な魅力と場所性を補完しているのである。こうした壁画は、建物に感情的な共鳴や誇りを与え、無機質な構造物を地域のランドマークへと変える。同時に、それは物件の差別化や価値向上にも寄与する、開発戦略の一部でもある。だが、この動きは一様に歓迎されているわけではない。壁画は地価や家賃の上昇を伴うジェントリフィケーションを覆い隠す「アートウォッシング」だという批判も根強い。実際、壁画のある地域では歩行者数や所得、資産価値の上昇が確認されており、再活性化と排除が同時に進む現実が示されている。それでも、壁画は高騰する住居費に苦しむ地元アーティストに新たな雇用と収入をもたらし、地域文化を支える側面も持つ。重要なのは、こうした取り組みを低所得者向け住宅や雇用政策と接続し、包摂的な都市開発へと組み込むことだ。均質化した都市において、壁画は単なる装飾ではなく、失われがちな個性と文化的厚みを補完する役割を担っている。

10. 「スマホ禁止」のバーやレストランが増加している

アメリカの飲食業界では、デジタルデバイスから距離を置き、対面でのつながりを重視する「スマホ禁止」の動きが広がりつつある。背景には、1日平均144回の端末確認、約4.5時間の使用といったスマホ依存の深刻化に加え、教育現場や社会全体で利用を見直す流れがある。こうした中、全米11州以上の飲食店で、スマホの使用制限やデジタルデトックスを促す取り組みが導入されている。高級サパークラブ「Delilah’s」はプライバシーと親密な空間を守るため投稿を禁止し、ノースカロライナ州のカクテルバー「Antagonist」では来店客の端末を専用ポーチで一定時間ロックする仕組みを採用する。こうした動きを後押ししているのが、意図的にデジタルから離れる志向を持つ若年層だ。Z世代の63%、ミレニアル世代の57%がデバイスとの距離を意識的に取っているとされる。スマホが学習効率や自尊心、対人関係に与える影響が広く認識される中、「あえて不便を選ぶ」価値が見直されている。実際に利用客からは、通知や撮影に妨げられず、料理や会話に集中できることで「より豊かで記憶に残る体験が得られた」との声も多い。ファストフード店のインセンティブ施策から厳格な禁止ルールまで形態は多様だが、食事の場を「接続」から「切断」へと再設計する動きとして注目される。スマホの排除は単なる制約ではなく、体験価値を高める手段として再評価されている。

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