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#055_Sheep ニューヨーク・グルメグローサー・ウォーズ
2020年に破綻したDean & Delucaが残した空白を埋めるべく、ニューヨークでは新世代のグルメグローサーたちが覇権を争っている。まだ開店していないのにTikTokで13万人のフォロワーを集めるMeadow Lane、ミシュラン星付きレストランが運営するRigor Hill Market、「文化的サロン」を標榜し20ドルのバターを売るHappier Grocery、Z世代の支持を集めて新たなフェーズを迎えた創業100年の老舗Butterfield Market。そして、この戦いに参入するErewhonは、43,000ドルの会員制クラブ内への出店という究極の排他性を打ち出す。グルメグローサーはもはや単なる日常の買い物場所ではなく、「SNSで表現するライフスタイル」や「ウェルネスという名のステータス」を購入するメディアへと変貌している。
#054_Sheep アメイジング・ユニバース・オブ・A24
2012年の創業から13年でアカデミー賞21冠、企業価値35億ドルへと成長したA24。作家主義への徹底したコミットメントと革新的なマーケティングで「A24映画」という新ジャンルを創出し、劇場で観る人の60%以上が「A24だから」と選ぶブランドロイヤリティを確立した。しかし、投資マネーを得て企業価値35億ドルの「アートハウス・ユニコーン」となった今、A24は深いジレンマに直面している。芸術的誠実さと、スタートアップ的な成長論理、すなわち作家主義と資本主義の間で、インディペンデント映画の救世主はオルタナティブであり続けられるのだろうか。
#053_Sheep パワー・オブ・ノスタルジア
古書店街、神保町が「世界で最もクールな街」に選ばれた2025年。AIやデジタル全盛の時代に、なぜアナログが再評価されるのか?実は今、レコードやフィルム写真、カセットテープなど、あらゆる「アナログ」が世界的にリバイバルしている。特に興味深いのは、デジタルネイティブのZ世代こそが、この現象の中心にいることだ。彼らは自分たちが体験したことのない「過去」に憧れる「歴史的ノスタルジア」を抱き、テクノロジー疲れから逃れる手段としてアナログ体験を求めている。一見後ろ向きに見える「ノスタルジア」が、実は未来へ向かうエネルギーとして機能している現代。その知られざる心理メカニズムに迫る。
#052_Sheep 高価で曖昧なロンジェビティの世界
年間600万円のジムのパーソナル・プログラムから21万円のアンチエイジングクリームまで、いま世界中で「ロンジェビティ(longevity)」を謳ったサービスが急拡大している。かつて中年男性の飲み会といえば病気自慢が定番だったが、今や健康法やサプリメントの自慢合戦に様変わり。背景にあるのは、従来の「モノを所有する」富の象徴から「自分の身体と時間をコントロールする」新しいステータスへの価値観の転換だ。テクノロジーで老化に挑むハイテク派と、昔ながらの生活習慣を重視するローテク派に分かれながらも、その定義の曖昧さゆえに様々なプレイヤーが参入し「第二のウェルネス」として機能するロンジェビティ市場の実態に迫る。