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Baa,Baa,Baa. | Week of Oct 6, 2025
【Weekly Picks】ウェルネス・アナーキストの台頭
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。
The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。
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🐏 Baa,Baa,Baa.
Weekly Headlines
ウェルネス・アナーキストの台頭
Netflixはスクリーンを超えて現実世界へ
「A24好き」が恋愛のステータスに
ベストセラー狙いに賭け続ける出版業界
Gapのプレイリストを探す旅
1. ウェルネス・アナーキストの台頭
世界規模で6.8兆ドルに達したウェルネス産業は、その成熟とともに消費者を二極化させている。一方は、徹底した最適化を追求する高パフォーマンス派。睡眠や食事、トレーニングを数値で管理し、サプリや最新メソッドを駆使して自己を鍛え上げるストイックなタイプだ。もう一方は、ライトなアスレジャー派。高価なヨガウェアなどで「健康的な雰囲気」を演出し、実践よりもライフスタイルの美しさに価値を置く。だが、こうした二つのタイプのあいだに、新しい感覚を持つ人々が現れている。彼らはどちらの陣営にも属さず、双方の要素を自在に行き来する存在──「ウェルネス・アナーキスト」だ。マラソンを走りつつアフターパーティやビールを楽しみ、HRV(心拍変動)を計測しながらも、友人と飲む夜はあえてデバイスを外す。この動きは、「常に最適化せよ」という現代的強迫への静かな反発でもある。過剰な最適化や自己管理は、社交や創造性、人生の厚みを犠牲にすることがあるからだ。ミラノ発のランニングマガジン『Mental Athletic』は、パフォーマンスだけでなく感情や個性を重視し、運動を文化的表現として再定義することでこの潮流を体現している。ブランドの側でも変化が始まっており、SATISFYは「Legalise LSD(Long Slow Distance)」という皮肉めいたスローガンを掲げ、Happy Tuesdaysはパーティ明けのリカバリーを支援するサプリを展開。どちらも「矛盾を許容するリアルな生き方」を肯定するスタンスで既存の市場に揺さぶりをかける。ウェルネス・アナーキストたちは、極端な選択を迫る業界構造そのものに異議を唱え、努力と享楽、トレーニングと遊びを両立させる新たな生き方を提案。彼らは、ウェルネスを道徳ではなく人生を豊かにするための道具として捉え直し、「生きること」そのものをより持続可能なものへと変えていこうとしている。
2. Netflixはスクリーンを超えて現実世界へ
近年、Netflixは単なる視聴プラットフォームを超え、ユーザー同士を結びつける文化的ブランドの構築を目指している。その戦略の一環として、同社は自社世界への没入を促すイベント「Tudum」をライブショー形式で刷新し、フィラデルフィアとダラスには常設の体験型施設「Netflix House」を開設する予定だ。しかし、持続的なファンダムやブランド全体へのロイヤルティを育てるのは容易ではない。実際、Tudumイベントでは観客は作品ごとのファングループに分かれてしまい、「Netflix」というプラットフォーム全体への熱狂は限定的にとどまった。『KPop Demon Hunters』のように、ファンの自発的な熱量がオンラインを越えてリアルな盛り上がりを生む例もあるが、それもあくまで個別作品の成功にすぎない。現状の「Netflixファン」とは、文化的な世界観への帰属というより、単なる配信サービスへの利用者的な親近感に近い(一方で先日指摘した通り、A24においては個別の作品、あるいは作品ごとのマーケティングの積み重ねが、「A24らしさ」という美学を形成している)。同社が真の「Netflix Universe」を築けるかどうかは、単なるエンゲージメントの拡大ではなく、ファンが愛着と信頼を持って再訪できるような、一貫した美学と物語世界を提示できるかにかかっている。
3. 「A24好き」が恋愛のステータスに
マッチングアプリ「Feeld」の調査によると、プロフィール欄に映画スタジオ「A24」の名前を記載するユーザーが前年比65%増加した。2012年創業のA24は、かつては小規模な配給会社だったが、『ヘレディタリー/継承』や『ムーンライト』などのヒット作を生み出し、今や世界的な存在感を持つブランドへと成長。慎重にキュレーションされた作品群により、エッジーでありながら大衆的な娯楽の象徴として認知されている。特に注目されたのが、今年公開の『Materialists』だ。ニューヨークのマッチメーカー(他人の縁談をまとめる仲人)を主人公に現代の恋愛市場を描いたこの作品は、プロモーションの一環として事前に募集した一般の独身男性たちの名前や属性、身長、年収、アピールポイントをリアルタイムを、ジャックしたニューヨーク証券取引所で株価のように表示し話題を呼んだ。A24の巧みなマーケティング戦略と文化的影響力は、もはや映画館を超えて現代文化のあらゆる場所に染み出しているが、SNS時代の「パフォーマティブ・カルチャー」とともにデジタル恋愛市場にまで浸透している。
4. ベストセラー狙いに賭け続ける出版業界
現代の出版業界は、ベストセラーを追い求めるあまり、新人作家や実験的な作品への投資を控え、その結果、文学文化全体が衰退している。かつては編集者の支持と熱意で時間をかけた作家育成が可能だったが、今日ではそのような猶予は与えられない。2001年のNielsen BookScan導入以降、データ依存が加速し、既に知名度のある著者が優先される一方、実験的作品は排除される。業界の利益至上主義は、文学の多様性と創造性を犠牲にしている。
5. Gapのプレイリストを探す旅
1992年にダラスのGapで働き始めたMichael Biseは、店内で流れる独特の音楽——ヒット曲や定番のインストゥルメンタルではなく、ハウスやダンス、デヴィッド・ボウイの知られざる名曲などが流れる約4時間のプレイリスト——に強く惹かれた。彼はこれらを紙に記録し始め、そのリストは2005年までに約200まで膨らんだが、引っ越しに伴いそれらの多くは失われてしまった。彼は再構築を開始し、ブログやSNSを通じて他の元社員の協力も得ながら、Gapや姉妹店のOld Navy、Banana Republicのプレイリストを少しずつ取り戻している。これらのプレイリストは、単なる音楽以上に、当時の時間や空間、店舗の雰囲気を呼び起こす「タイムマシン」の役割を果たす。Biseは今も収集を続け、古いリストを持つ人との接点を求めている。彼にとって重要なのは、自分の好みだけでなく、失われた時代の音楽記録を丸ごと取り戻すことだ。
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