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Baa,Baa,Baa. | Week of Oct 13, 2025
【Weekly Picks】小売店は「サードプレイス」になり得るか?
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。
The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。
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🐏 Baa,Baa,Baa.
Weekly Headlines
小売店は「サードプレイス」になり得るか?
クラフトビール業界の苦境
The Rowの次の一手
アルゴリズムが奪う「音楽を発見する」喜び
ラスベガスに何が起きているのか?
世界を魅了する怪物を生んだ都市
1. 小売店は「サードプレイス」になり得るか?
ブランドが店舗を人々の集いの場に変えようとしている。テキサス発のブーツブランド「Tecovas」は全米50店舗で無料の酒類を提供し、商品購入の有無を問わず客をもてなす「ラディカル・ホスピタリティ」を実践。Coachなども店内カフェを展開し、顧客の滞在時間(dwell time)を重視する戦略にシフトしている。背景にあるのは、社会学者レイ・オルデンバーグが提唱した「サードプレイス」という考え方だ。パンデミックを経て、人々の交流の場が失われるなか、小売店が新たな「居場所」としての役割を担おうとしている。だが、そのあり方は、商業性を離れた人と人とのつながりを重視するオルデンバーグの定義とは必ずしも一致しない。滞在時間が成果指標となり、体験型リテールの進化が進む中で、店舗はどこまで「純粋なコミュニティ」形成の場たり得るのか。その境界線を探る試みこそ、いまのリテールの本質なのかもしれない。
2. クラフトビール業界の苦境
かつて米国でブームを巻き起こしたクラフトビール業界が苦境に立たされている。サンフランシスコの老舗「21st Amendment Brewery」が25年の歴史に幕を下ろす他、同様の閉店や倒産が全米で相次ぐ。2023年のクラフトビール販売は前年比4%減。過去20年で初めて開業数を閉業数が上回った。背景には、パンデミック以降の外食需要の減少や健康志向の高まり、原材料や人件費の高騰、金利上昇による経営圧迫などがある。さらに、全米のクラフトビールブルワリーの数が10年前の約4,800軒から9,900軒超へと倍増する一方で、消費者の関心がハードセルツァーや低アルコール飲料へと移行し、需給バランスが崩れた。大手ビール会社もクラフトブランドの切り離しを進め、市場全体の再編が進行中だ。業界関係者は「市場が消えるわけではないが、現実への適応力が問われている」と語る。情熱に支えられた独立系ブルワリーは、過剰競争と需要減のはざまで、新たな生存戦略を模索している。
3. The Rowの次の一手
希少性と職人的品質で知られる独立系ラグジュアリーブランドとして、いまや10億ドルの企業価値評価を得たThe Row。以前私たちも詳しく書いた通り、その成功の鍵は、創業者であるメアリー=ケイトとアシュレーのオルセン姉妹が意図的にスポットライトから距離を置き、セレブリティブランド的な戦略を避け、徹底して製品の質とデザインに集中した点にある。この姿勢が「Quiet Luxury」ブームと共鳴し、ロゴではなく品質と永続的価値を求める顧客層から熱烈な支持を集めた。中でも、Margauxの成功は、「新しいバーキン」としてブランドの象徴となっている。今後の焦点は、この独自の美学をいかに持続、拡張するかにある。最大のリスクは、ブランドの存在が姉妹の審美眼と哲学に強く依存している点だ。また、希少性を支える厳格な流通管理は、拡大期における柔軟性を制限しかねない。米国や中国市場の減速を受け、今後は中東や南米など新興市場での選択的展開が鍵となるが、拙速な拡大は排他性を損なう危険を伴う。さらに、エルメスやシャネルのように、ブランドを象徴する「アーカイブ」や「コード」をまだ確立していない点も長期的課題として残る。それでも、オルセン姉妹が築いた普遍的デザインと静謐なミニマリズムが今後も共感を得続けるなら、The Rowは「ヘリテージ・ブランド」として、新しいラグジュアリーの指標となる可能性を十分に秘めている。
4. アルゴリズムが奪う「音楽を発見する」喜び
ストリーミングサービスのアルゴリズムは、便利さの裏で「音楽を発見する喜び」を奪っている。過去の再生履歴をもとに最適化されたレコメンデーション機能は、一見多様な選択肢を与えているようで、実際は「似たような曲」を繰り返し提示し、リスナーを同質的なエコーチェンバーに閉じ込めてしまう。英国政府の調査では、85%のリスナーがアルゴリズムの偏りによる不公平な優先順位付けを懸念している。2024年、英国チャートで1位をとった11曲のうち10曲がTikTokトレンドと関連していたことからも、その影響は明白だ。音楽ジャーナリストのJoe MuggsやDJのErrolといった専門キュレーターたちは、アルゴリズムが再現できない偶然の出会いや人間的な不完全さこそが音楽の魂であると指摘する。アルゴリズムは効率的だが、音楽の背景にある歴史、コミュニティ、文化的文脈を伝えることはできない。彼らは、アルゴリズムに頼らず、人と話し、現場に足を運び、文化の文脈に触れることを勧める。Bandcampで地域や時代を軸に探索するなど、テクノロジーを主体的に使う方法もある。重要なのは、発見に「摩擦」と時間を取り戻すこと。時間をかけて、自分の耳で音楽を見つける――そのプロセスこそが、真のリスニング体験なのだ。
5. ラスベガスに何が起きているのか?
ラスベガスは今、観光客減少と物価高騰の波に揺れている。ラスベガス観光局によれば、2025年8月時点の訪問者数は前年同期比で11%減少し、とくにカナダなどからの国際観光客の減少が目立つ。かつては手頃なホテルや食べ放題のビュッフェなどお得感ある家族向けサービスを楽しめる旅行先として親しまれていたが、パンデミック後の「リベンジ旅行」期の需要増を受けて宿泊費やリゾートフィー、食事代が急上昇。平均宿泊費は2019年の約121ドルから162ドルに、Caesars Palaceの名物ビュッフェも29ドルから90ドルへと値上がりした。地元カフェや土産店からは客足が遠のき、売上はパンデミック時以来の低水準にとどまる。1905年に鉄道の町として生まれ、ギャンブル、エンタメ、グルメ、スポーツ都市へと姿を変えてきたラスベガスだが、いまや高級スイートや有名レストラン、華美なエンタメに偏重した「財布に厳しい都市」として方向性を見失いつつある。観光局は「手頃で魅力的なベガス」を掲げ再生を試みているが、華やかさの裏で、街は次の「変身」を模索している。
6. 世界を魅了する怪物を生んだ都市
あなたが好きか嫌いかはさておき、2025年のZ世代最大の文化トレンドとなったLabubu。その流行の観察や分析についての記事には正直食傷気味だったが、それが生み出された地、香港について書かれたこのストーリーは興味深かった。Labubuが香港から生まれた背景には、同地の玩具産業の歴史と独自のカルチャーがある。1970〜80年代、香港はMattelやDisneyといった世界的メーカーの下請け拠点として発展した。多くの親が工場で働き、家庭でも玩具の手塗り作業を手伝う光景が日常だった。子どもたちは工場から流れる「欠陥品」を手にしながら、より良い玩具への憧れとクリエイティブな想像力を育んだ。この環境から、トイブランドHow2Workを設立したHoward Leeら次世代の制作者が登場し、2000年代初頭には、地元アーティストの2Dデザインを立体化する「デザイナートイ」という新しいムーブメントが生まれた。玩具工場が中国本土に移転した後も、香港は西洋の先進的な玩具文化と効率的なメインランドの製造現場をつなぐ仲介地として機能し、Leeらは小規模工場と協働して独創的なアイデアを形にしていった。その延長線上で誕生したLabubuは中国の製造力と資本(Pop Mart)により、インディーからマスへと飛躍。SNSで愛嬌ある姿がバズり、日本や台湾とも異なる「香港的かわいさ」が世界を魅了した。これは、製造の下請けだった中国がグローバルなカルチャーの発信源へと転じた、大きな時代の変化を象徴する出来事といえる。
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