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Baa,Baa,Baa. | Week of Sep 29, 2025
【Weekly Picks】服は何故音楽を必要とするのか?
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。
The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。
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🐏 Baa,Baa,Baa.
Weekly Headlines
服は何故音楽を必要とするのか?
Barnes & Nobleが独立系書店を買収する理由
アメリカでは寿司の人気がかつてないほど高まっている
日本の能舞台の3分の1が集まる島
観光地としてのWaymo
世界の抗議運動に広がる「ルフィの旗」
1. 服は何故音楽を必要とするのか?
2026年春夏のニューヨーク・ファッション・ウィークにおいて音楽はもはや単なる背景音ではなく、デザイナーの意図を伝える重要な情報源であり、観客の記憶に残る体験を形づくる強力なツールとして機能していた。例えばメキシコのブランド、Campilloは15世紀のテスココ王、ネサワルコヨトルによる詩をマントラのように反復し、時代を超えたメキシコの魂を表現。Anna Suiは伝説のチェルシーホテルでMazzy StarやVelvet Undergroundを響かせることで1900年代初頭の芸術コロニーへのノスタルジアを誘った。Shamwow(ドイツ製の吸水クロス)の広告音声などが重られた混沌としたクラブミュージックでスタートしたCollina Stradaの挑戦的な音楽は印象的で、ショーの最後はオペラ調にアレンジされたSmash Mouthの「All Star」、そして「My world's on fire, how 'bout yours?」という現代社会への問いが込められたメッセージとともに締めくくられた。これらの音楽は、親しみやすさと革新性のバランスを保ちながら、ファッションの記憶を定着させ、感情体験を深める役割を果たしている。菊地成孔が「ファッションニュース」誌上で服飾と音楽に関する批評実験を試みたのが2003年。それから20年以上が経ったいまも、ファッションショーは、衣服と音楽が融合した総合芸術として進化し続けている。
2. Barnes & Nobleが独立系書店を買収する理由
各店舗に仕入れや棚づくりの裁量を委ね、店舗ごとの独自性を尊重することで「よい本屋」を増やすことに注力してきたBarnes & Nobleの戦略転換については以前書いたが、彼らはその流れの中で経営不振に陥っている独立系書店の買収も進めている(2023年のTattered Cover、2024年のBooks Inc.など)。買収後も店名や地域性は維持され、B&Nの流通網やシステム面での支援を受けることで再建を目指している。これらの買収は単なる店舗網拡大ではなく、物理書店の存在そのものを未来につなぐ試みだ。Amazonがオンライン販売で圧倒的地位を築いた一方で、リアル書店運営には成功できなかったことを考えると、Barnes & Nobleの動きは書店を地域が求める「サードプレイス」として再評価する流れを象徴している。コミュニティや文化の拠点としての書店の役割が改めて見直されるなか、大規模書店チェーンが独立系書店を救うという逆転の構図は、ポスト・パンデミック時代の読書文化の新しい展開を象徴している。
3. アメリカでは寿司の人気がかつてないほど高まっている
かつてアメリカで珍しい高級料理だった寿司は、この5年間で日常的な「手軽な食品」へと劇的に変化した。その最大の転機となったのがパンデミックで、自炊や定番のテイクアウト(ピザやブリトー)に飽きた消費者が寿司を選ぶようになり、高級レストランから大手スーパーまで持ち帰り寿司の需要が急増した。現在、スーパーマーケット大手Krogerは1日100万本のロールを販売し、寿司の小売市場は28億ドル規模に成長している。寿司はもはや高級レストランだけでなく、ガソリンスタンドや大学の学食、スタジアムなど、あらゆる場所で提供されるようになった。ミレニアル世代とともに育った寿司は、彼らの健康志向にも合致し、いまでは性別や年齢を問わず幅広い層に支持されている。冷蔵保存による品質の課題や、マンゴーやクリームチーズを使った創作ロールの増加に、伝統的な寿司の本質が失われつつあるという懸念の声もあるが、寿司はすでにアメリカ文化に深く根付いた存在となっている。
4. 日本の能舞台の3分の1が集まる島
先日、佐渡にルーツを持つ友人とちょうどこの話をしたばかりなのだが、日本海に浮かぶ佐渡島では、世界最古の演劇形式の一つである能楽が今も地域文化の中心に息づいている。人口約4万5千人の小さな島には34の能舞台があり、これは日本全体の約3分の1に相当する。八世紀に起源を持ち、十四世紀から十五世紀前半にかけて大成期を迎えた能は、江戸時代に初代佐渡奉行として派遣された大久保長安が能楽師を連れてきたことをきっかけにこの島に根付くことになる。現在、佐渡では(プロの能楽師ではなく)一般住民が年間数十回の公演を担っている。高齢化により島の人口は戦後の4分の1に減少し、能舞台も200から34に激減したが、島の住民たちは「神への捧げ物」として能楽を守り続け、子どもたちも学校で学ぶ。そして、なにより興味深いことに、父である観阿弥とともに能を大成した世阿弥は1434年、将軍足利義教によって佐渡島へ流罪となり、この島で数年を過ごしていた。世阿弥が遠い日本海の島で味わった無常観が、幽玄を重んじる能の本質とも響き合い、佐渡を「能の島」として特別な場所にしているのかもしれない。
5. 観光地としてのWaymo
サンフランシスコでは、自動運転タクシーのWaymoが単なる移動手段を超え、観光の目玉に変身している。Waymoがホテルに停車するたびにカメラを構えた人々が群がり、ゴールデンゲートブリッジやフィッシャーマンズワーフを巡るサードパーティの「Waymo Tour」(149ドル)も人気だ。Waymoの自動運転車は「テックの聖地」としてのサンフランシスコのイメージに自然に溶け込んだだけでなく、人々を街に引き寄せる新たな売り物となりつつある。
6. 世界の抗議運動に広がる「ルフィの旗」
『ONE PIECE』の麦わらの一味の海賊旗(Jolly Roger)が権威や抑圧への反発を示すシンボルとして、アジアから欧米まで、世界各地の若者によるデモで掲げられ、新たな抵抗の象徴となっている。ネパールでは汚職抗議のデモで政府庁舎に掲げられ、インドネシアでは議員への高額手当を巡る抗議で広まり、政府が取り締まりを警告するほど注目を集めた。欧州ではフランスの財政削減反対デモや英国の反トランプ、パレスチナ支持デモで登場し、米国でも移民政策への抗議やApple社批判のデモで使われている。『ONE PIECE』は25年以上続く人気作で、無国籍的なキャラクターと「権力に抗う物語」が世界中の若者の共感を呼ぶ。アニメや漫画が共通言語となる時代、ルフィの旗はグローバルな世代の連帯を映す象徴となっている。
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