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#036_Sheep 現代のメディチたち
ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井画を手がけた背後には教皇という「パトロン」の強い意志があった。芸術家は自由に創作していたのではなく、権力の思想を視覚化する役割を担っていたのである。同様に、ルイ・ヴィトンの美術館、プラダの哲学的展示など、現代のブランドも単なるスポンサーにとどまらず、文化そのものをデザインする主体へと変貌している。経済資本を文化資本へと変換し、新たな美的価値観を提示する彼らの営みは、まさに現代のパトロネージュである。そこには、創造と制約、芸術と権力がせめぎ合う、ルネサンス期にも通じる緊張関係が今なお色濃く息づいている。
#034_Sheep エブリシング・エブリウェア・オール・オン・スクリーン(後編)
スクリーン上に集約された生活空間では、「遊び」と「労働」の境界が曖昧になる。SNSへの投稿や検索といった日常的な行動すら、見えない経済活動として機能してしまうのだ。無意識のうちに「働かされている」私たちの姿を、Amazon検索やInstagram投稿といった具体例をもとに可視化しながら、現代都市がいかにして「仕事」と「遊び」がグラデーションで重なり合う場所へと変貌したかを追う。「Everything Everywhere All on Screen」とは、都市の未来ではなく、すでに始まっている私たちの現在そのものである。
#033_Sheep エブリシング・エブリウェア・オール・オン・スクリーン(前編)
宿泊の枠を超えて日常のあらゆるサービスを取り込もうとするAirbnbの「Everything App」化は、私たちにリアルな体験を約束する一方で、そこにたどり着くまでにはこれまで以上にスクリーンと向き合わなければならないという矛盾を孕む。スクリーンなしでは現実の体験にたどり着くことができないという現実や、ChatGPTによる時間の「効率化」などの事例を手がかりに、スクリーンこそが現代人の生活の舞台であることを描き出す。デジタル体験と現実体験のねじれ、AIやSNSが引き起こすスクリーン依存のパラドックスを通じて、私たちの「いま」を読み解く。