- The Rest Is Sheep
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#087_Sheep 衰退と復興のあいだ
着実に「宗教離れ」が進行しているとされるアメリカで、いま若者たちが教会へ戻っている──そんなニュースが世界を駆け巡っている。ニューヨークでは日曜夜のミサが満員になり、若者たちがピザ屋から連れ立って教会へ向かう。ポップカルチャーには宗教的モチーフが溢れ、メディアは「Z世代の宗教リバイバル」を半ば祝祭的に伝えている。しかし、マクロデータが示すのは別の景色だ。全国規模で礼拝参加率は上がっておらず、新たに信仰へ入る人より、離れる人の方がはるかに多い。「信仰の復活」は本当に起きているのか。そしてなぜ、この「復興」の物語は、教会の外にいる人々にまでこれほど強く受け入れられたのか。孤独、分断、「自由になったのに幸せになれない」という感覚──私たちが「満員の教会」という情景に見ていたのは、神そのものではなく、「もう一度つながり直せるかもしれない」という希望だったのかもしれない。「若者の宗教回帰」現象を入り口に、断片化する現代社会の深層を読み解いていく。
#086_Sheep 知性は、なぜ欲望になったのか
ポップスターが読書クラブを主宰し、モデルが難解な小説を携え、ブランドはランウェイに思想家たちの名前を忍ばせる。いまポップカルチャーでは、「知性を感じさせること」が、単なる演出を超えて、新たな魅力や信頼の源になりつつある。反知性主義、AI生成コンテンツ、注意力の断片化──「速く、浅く、短い」情報環境が加速するなかで、なぜいま「深く考えること」が価値を持ち始めているのか。演出としての知性と、時間をかけて培われる本当の深さ。その距離感も見つめながら、ポップ、ファッション、インフルエンサー文化の奥で進む、価値観の静かな地殻変動を読み解く。
#084_Sheep オゼンピック化する社会
食事制限も、運動もいらない──そう感じさせるほど、注射一本で劇的な減量を約束するオゼンピックやマンジャロは熱狂的に受け入れられている。その背景には、「プロセスをスキップして結果だけを手に入れたい」という、どこかで私たちが抱えている欲望があり、その欲望はいま、この痩せ薬を超えて社会全体に広がりつつある。「オゼンピック化(Ozempicization)」という視点から、身体というラストリゾート、「Agency(主体性)」という名の思考放棄、そして「解決策」が新たな依存を生むという逆説を読み解く。個人の不安に応答するテクノロジーは、同時に社会の問題を個人に引き受けさせる装置でもある。コントロール感を取り戻すはずの最適化が、別のかたちでそれを手放す行為だとしたら──私たちはいま、何を最適化しているのだろうか。
#082_Sheep Tasteがシリコンバレーを飲み込む
この十数年、「ソフトウェアが世界を飲み込む」という論理がシリコンバレーを支配してきた。だが今、そのシリコンバレー自身が「Taste」という新たな論理に揺さぶられている。技術がコモディティ化し、AIによって誰もが「作れる」ようになった時代。実装力に代わり、何を作り、何を選び取るかという審美眼が、ビジネスの帰趨を左右し始めている。それは人間に残された最後の砦なのか。それとも、テクノロジーをめぐる緊張を覆い隠す「Taste-washing」にすぎないのか。機能から感性へ、作ることから選ぶことへ──価値の軸が移ろういま、「Taste」とは何を意味するのかを考える。






