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Baa,Baa,Baa. | Week of Apr 27, 2026
【Weekly Picks】「レストラン・ギャップ」のある関係
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。
The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。
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🐏 Baa,Baa,Baa.
Weekly Headlines
「レストラン・ギャップ」のある関係
ブランド名の危機
Allbirdsはなぜ「ブランド」になれなかったのか
Looksmaxxingが生む「不安の経済」
独立系書店を支援するBookshop.orgが売上55%増
Arc'teryxが都市で支持される理由
J-Beautyはなぜ世界で伸び悩むのか
投資家たちはベーグルに賭けている
大人に広がる節約型飲酒「pregaming」
「失敗」から世界一へ:Sphereの逆転劇
1. 「レストラン・ギャップ」のある関係
「レストラン・ギャップ」とは、カップル間の外食に対する関心やこだわり、出費感覚のズレを指す。以前SNSで話題となった、服装や雰囲気の不一致を指す「swag gap」と同様に、近年はこうした差異を可視化する言説が広がり、恋愛における微細な違いがより意識されるようになった。たとえば一方は予約困難店の確保に奔走する「フーディー」であり、もう一方は食に無頓着、あるいは偏食といった関係である。この非対称性は、単なる好みの違いにとどまらない。かつて映画や美術館が担っていたデートの場は、いまやレストランへと移行している。そこでの振る舞いは、金銭感覚や育ち、未知の体験に対する姿勢を如実に映し出す。食をめぐるやり取りは、将来の意思決定をめぐる「予行演習」とも言える。実際、こうした不一致が関係の亀裂や破局につながることもある。一方で、その差が関係を広げる契機になる場合もある。相手の影響で新たな味覚に目覚めたり、外食への関心の差が結果的に家計を支えたりと、補完関係として機能することもあるからだ。レストラン・ギャップを埋めがたい溝と見るか、それとも成長の余白と捉えるか。食卓は、二人の相性を測る静かな試金石なのである。
2. ブランド名の危機
近年、セレブやインフルエンサーによるブランドの急増に伴い、「Syrn」や「Cyklar」のように、発音しづらく覚えにくいネーミングが目立つようになっている。この背景には、商標やドメイン、SNSハンドルの枯渇という構造的な問題がある。既存の単語はすでに使い尽くされ、創業者たちは使用可能な名称を確保するため、スペルを崩した造語に頼らざるを得ない。しかしその結果、消費者にとって直感的に理解しづらい名前が増え、ネーミングの質の低下も指摘されている。本来、ブランド名は覚えやすく、意味やストーリーを伴うべきだが、現実には「.com」の取得といった技術的制約が優先されている。実際、商標として使用可能な候補は、20年前には半数程度が残っていたのに対し、現在では1割ほどにまで減少しているという。さらに、セレブブランド特有の事情もある。将来的な売却やリスク管理の観点から、本名の使用は避けられる傾向にあり、「Fenty」や「Rhode」のように、ミドルネームや抽象的な名称が選ばれるケースが増えている。こうした状況に対し、「説明が必要な名前は、それ自体が弱点である」という指摘もある。ネーミングとは本来、直感的に理解されるべきコミュニケーションだからだ。一方で、ブランド名は後から意味を帯びる側面も持つ。たとえ違和感のある名前でも、商品力や発信力によって市場に浸透すれば、やがて自然なものとして受け入れられる。それでもなお、ネーミングというブランドの入口において、現代のビジネスはかつてない制約の中で意思決定を余儀なくされている。
3. Allbirdsはなぜ「ブランド」になれなかったのか
Allbirdsは製品の問題ではなく、ブランド構築の失敗によって失速した。2016年に登場したウール製のサステナブルスニーカーは、環境意識やミニマルな美学を重視するシリコンバレー的価値観と合致し、起業家層のアイデンティティを象徴する「ユニフォーム」として支持を集めた。しかしそれは、特定の文化圏における一時的な共鳴に過ぎない。サステナビリティは多くの場合、購入を正当化するための「許可構造」として機能するにとどまり、顧客をつなぎとめる帰属意識にはなりにくい。それにもかかわらずAllbirdsは、それ自体をブランドと誤認した。結果として、NikeやOn Runningが同様の環境配慮に加えて高い機能性を提示すると、顧客が留まる理由は容易に失われた。にもかかわらず同社は、独自のデザイン言語やコミュニティといった再現不可能な価値の構築への投資には踏み込まず、カラーバリエーションの刷新やアパレルへの水平展開、店舗拡大といった施策に依存していった。その結果、ブランドの輪郭は曖昧になり、2020〜2024年の5年間で約4億ドルの損失を計上するに至る。ここからの教訓は明確だ。バリュープロポジションが「買う理由」だとすれば、ブランドとは「属する理由」である。サステナビリティは模倣可能な価値提案に過ぎず、持続的な競争優位にはならない。必要なのは、製品を超えて顧客が帰属したくなる世界観、すなわちワールドビルディングである。Allbirdsは「買う理由」は作れたが、「属する理由」を築けなかった。
4. Looksmaxxingが生む「不安の経済」
容姿を極限まで高めようとするトレンド「Looksmaxxing」が、若い男性の間で急速に拡大している。ペプチド注射や顎の手術といった極端な手段を用いるこの潮流は、2010年代初頭のインセル文化に端を発し、「外見が人生を決定づける」という思想とともに広がってきた。現在ではTikTokやInstagramのアルゴリズムを通じて主流化し、関連ハッシュタグの再生回数は約108億回、検索数も前年比67%増と急伸している。こうした環境のもと、理想化された男性像に日常的に晒されることで自己評価は揺らぎ、外見への不安は増幅していく。こうした心理はそのまま消費へと転化し、男性の美容外科手術は2018年から2024年にかけて49%増加、非外科的施術も倍増している。インフルエンサーたちは、外見の向上が成功に直結すると説き、コーチングやサプリ、コスメを通じて数億円規模の収益を上げている。一方で、骨を叩く「ボーンスマッシング」や薬物使用といった危険な手法も拡散しており、2025年の研究では若年男性における筋肉醜形恐怖症リスクの上昇も指摘されている。Looksmaxxingは、健康志向すら取り込みながら不安を増幅し、それを市場へと変換する、SNS時代特有の消費現象と言える。
5. 独立系書店を支援するBookshop.orgが売上55%増
Bookshop.orgは2020年の創業以来、独立系書店の収益基盤を支えるオンラインプラットフォームとして拡大し、2025年には売上約7,000万ドル(前年比+55%)に達した。Amazonに対抗する選択肢として支持を広げ、利益の10%を還元する仕組みにより、提携書店への累計分配額は4,600万ドルを超える。成長を牽引したのは、ロマンスジャンルの台頭に象徴される読者層の拡張と、2025年に本格化した電子書籍事業である。特にDraft2Digitalとの提携による120万点規模のタイトル拡充や、Spotifyアプリ内での購買導線の構築が、新たな需要の取り込みに寄与した。電子書籍はすでに売上の5%以上を占め、独自の読書端末開発も進むが、コスト高騰により実現時期は見極め段階にある。2026年も15〜30%の成長が見込まれる中、今後はPOS連携によるオンライン注文と店頭受取の統合や、書店向けマーケティング支援を強化し、リアルとデジタルを横断する流通モデルの確立を目指す。こうした動きは、長らく縮小してきた独立系書店の復調とも呼応しており、業界全体の再成長を後押しする動きともいえる。
6. Arc'teryxが都市で支持される理由
カナダ発のアウトドアブランド、Arc'teryxが、山岳地帯から都市のオフィスやストリートへと存在感を広げている。2021年に就任したスチュアート・ハーセルデンCEOのもと、売上は2020年の5億ドルから2025年には27億ドルへと急拡大。その成長を支えるのが、中国市場での販売比率の上昇と、アウトドアウェアを日常着として取り入れる「gorpcore」トレンドだ。俳優のティモシー・シャラメがビーニーを愛用する姿は、その象徴的なイメージを後押しし、ブランドはテック企業の幹部層にも静かな「制服」として浸透している。こうした広がりに対し、ハーセルデンは迎合するどころか、むしろブレーキを踏む。チノパンなどライフスタイル商品の拡張を止め、売上の大半を占める高機能ジャケット群に集中。「山岳アスリートのための最高性能」という原点を改めて軸に据えた。さらに卸売中心のビジネスモデルを見直し、直営店と定価販売を軸とするプレミアム戦略へ転換。ブランド価値の毀損を防ぎながら成長を加速させている。チベットでのプロモーションによる炎上といった課題も抱えつつ、同社の根底にあるのは、拡張と純度維持を両立させる姿勢だ。アウトドアと都市、機能とファッション。その境界を横断しながらも軸をぶらさない点にこそ、Arc'teryxの強さがある。
7. J-Beautyはなぜ世界で伸び悩むのか
日本はエンターテインメントや食、ファッションなどで世界的な影響力を持つが、美容(J-Beauty)の輸出は近年縮小している。背景には、韓国(K-Beauty)やドイツといった競合の台頭に加え、中国市場の減速や日中関係の緊張といった外部環境の変化がある。これにより資生堂やコーセー、花王などの大手は戦略の見直しを迫られている。もっとも、日本企業は従来、海外展開において自国ブランドではなくNARSやTarteなどの買収ブランドに依存してきた経緯がある。国内市場の強さも相まって、外需開拓が後手に回っていた側面も大きい。一方でJ-Beautyは、科学的根拠に裏打ちされた品質と、長期的な効果を重視する思想に強みを持つ。これはトレンドや即効性を志向するK-Beautyとは対照的であり、差別化の核となり得る。また、ヘアケアやスカルプケア、手頃な価格帯ブランドの海外展開にも成長余地がある。こうした中、&honeyや無印良品、Damdam Tokyoといったブランドが欧米市場への進出を加速させており、政府のクールジャパン戦略とも連動しながら若年層への浸透を図っている。短期的なバズではなく、時間をかけて信頼を築けるかどうかが、J-Beauty復活の鍵となる。
8. 投資家たちはベーグルに賭けている
BlackstoneやBain Capitalといった投資会社は、これまでアメリカの外食チェーンに積極的に資本を投じてきたが、職人の手作業と長時間発酵を要する高品質なベーグルは、採算性と拡張性の低さから投資対象になりにくい分野だった。しかし近年、この状況は大きく変わりつつある。高性能オーブンや自動化の進展によって生産効率が改善したことに加え、SNSによるトレンド拡散とコーヒー需要の増加を背景に、朝食市場そのものが拡大。これまでニューヨークなど一部都市に限られていた「本格ベーグル」への需要が、全米規模で顕在化している。こうした変化を受け、StripesはPopUp Bagelsに800万ドルを投資し、さらに追加出資で過半を取得。資産運用会社InvusもCall Your Mother Deliの過半株式を取得するなど、プライベートエクイティの参入が加速している。収益モデルも進化しており、単価の低いベーグル単体ではなく、15ドル前後のサンドイッチを主力とする「ベーグルカフェ」業態によって利益を確保。さらにセントラルキッチンや冷凍技術を活用することで、多店舗展開も可能になった。一方で、大資本の参入は競争激化や品質の均質化への懸念も招く。かつてのカップケーキブームのように、独自性を失えば急速に失速するリスクもあり、クラフト性とスケールの両立が問われている。
9. 大人に広がる節約型飲酒「pregaming」
アメリカではインフレに伴う酒類価格の高騰を背景に、外出前に自宅で飲んでおく「pregaming」が大人の間で再び広がっている。かつては学生の節約術だったこの習慣が、いまや30〜40代にとっても、外での支出を抑えながら楽しみを維持する現実的な選択肢として定着しつつある。背景にあるのは、飲食店やイベント会場での価格上昇だ。カクテルの平均価格は13ドルを超え、都市部ではさらに高額になるケースも多い。家であらかじめ飲めば、1杯分のコストで数杯分を用意できるため出費を大きく抑えられる。実際、調査では飲酒者の約3分の1が、会場での高額な支払いを避けるため事前に飲酒していると回答した。さらに、外出後に自宅で飲み直す「postgaming」も広がり、支出を抑える動きが徹底されている。こうした中、消費者はミニボトルを活用し、持ち運びやすさと低価格を両立。SNS上ではその活用法も共有されている。需要の高まりを受けて酒類メーカー各社も小容量商品の展開を強化しており、pregamingは単なる懐古的な習慣ではなく、インフレ時代の消費行動として広がりつつある。
10. 「失敗」から世界一へ:Sphereの逆転劇
ラスベガスの巨大エンターテインメント施設「Sphere」は、予算の大幅超過や工期遅延、パンデミックの直撃によって「失敗確実」とまで見られていた。しかし今や、世界最高収益を誇るアリーナへと劇的な変貌を遂げている。James Dolanの構想から生まれたこの球体施設は、2023年に総工費23億ドル(当初計画を約10億ドル上回る)で完成。昨年は170万枚のチケットを販売し、約3億7,900万ドルを売り上げた。成功の核心は、最先端の映像・音響技術と、大物アーティストのノスタルジア訴求力を掛け合わせた点にある。U2やEagles、Backstreet Boysらの長期レジデンシーは高額な制作費を回収しながら、平均転売価格521ドルという旺盛な需要を生み出した。音楽にとどまらず、1939年の映画『The Wizard of Oz』をAIで再構築した没入型上映も約5ヶ月間で2億6,000万ドル超の興行収入を記録。テイラー・スウィフトのツアーが証明したように、ファンがコンサートのために遠征する潮流もSphereの追い風となっている。結果、前年比3億2,500万ドルの赤字から3,340万ドルの黒字へと転換を果たし、現在はアブダビやワシントンD.C.近郊への展開も進む。かつて無謀と笑われた挑戦は、「ライブ鑑賞」を音楽消費から空間への没入体験へと拡張し、エンターテインメントの地図を塗り替えつつある。
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