Baa,Baa,Baa. | Week of Jan 26, 2026

【Weekly Picks】Hermèsの手描きイラストによる新ウェブサイトは「究極のラグジュアリー」だ

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。

The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。

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Weekly Headlines

  1. Hermèsの手描きイラストによる新ウェブサイトは「究極のラグジュアリー」だ

  2. Metaの「Reels」が500億ドルのビジネスになった経緯

  3. Amazon Fresh、Amazon Goが全店クローズ

  4. Allbirds、実店舗ほぼ撤退へ

  5. Aldiが米国で「カルト化」した理由

  6. クラフトビール不況の中で、なぜベイエリアの醸造所は成長しているのか

  7. 「カー・スクローリング」に救いを求める親たち

  8. スマホ時代に生きるライカ

1. Hermèsの手描きイラストによる新ウェブサイトは「究極のラグジュアリー」だ

Hermèsが新たに公開した公式ウェブサイトは、フランスのアーティスト、Linda Meradによる手描きのイラストを大胆に取り入れている。AIによる完璧で無機質な画像が氾濫する現代において、紙の質感や線の揺らぎといった人間の手仕事ならではの「不完全さ」をあえて残し、均質なデジタル表現とは異なる豊かさを生んでいる。サイト内では、タツノオトシゴやウナギといった幻想的な海の生物が、靴や時計などの製品とユーモラスに組み合わされ、ユーザーを各カテゴリーへと誘う。この試みは、熟練の職人による「手仕事」を一貫して重んじてきたHermèsのブランド哲学と深く合致するものだ。AIが無料で高品質な画像を生成できる時代だからこそ、人間が描く独自の表現や、そこに宿る「魂」の価値は相対的に高まっている。Hermèsのこの戦略は、デジタルな世界においても、あえて時間と手間をかける表現こそが、他にはない魅力と人間味を生み出し、「特別さ」やラグジュアリーを担保することを示している。

2. Metaの「Reels」が500億ドルのビジネスになった経緯

Meta(Instagram、Facebook)のショート動画機能「Reels」は、わずか数年で劇的な転換を遂げた。2020年の導入当初はTikTokの模倣と揶揄され、視聴時間も大きく水をあけられていたが、現在では年換算で約500億ドルの売上規模に達し、YouTubeの広告収入予測を上回る水準にある。転機となったのは、表示ロジックの抜本的な転換だ。フォロー関係を前提とした従来の仕組みから、AIが視聴行動を分析し、未フォローの動画を次々と提示する「発見型」へと舵を切ったことで、視聴時間は前年比30%増加。1日平均27分という水準まで伸び、YouTube Shortsをも上回る存在感を示している。Reelsが日常的な視聴体験として定着した今、Metaは次の成長領域としてテレビ市場を見据える。Amazon Fire TVへの対応や、友人同士の嗜好を融合する共同フィード機能「Blend」を通じ、個人視聴にとどまらない社交的な動画体験を構想する。かつての後発者は、AIと大画面という武器を手に、動画プラットフォームの主戦場そのものを再定義しようとしている。

3. Amazon Fresh、Amazon Goが全店クローズ

Amazonが、実店舗のスーパーマーケットチェーン「Amazon Fresh」とレジレス店舗「Amazon Go」を全店閉鎖するという、大きな戦略転換を発表した。2020年の参入以降、「Dash Cart」などの先端技術導入や品揃えの拡充、低価格戦略を重ねてきたものの、競争の激しい食料品市場において、大規模展開に見合う独自の顧客体験と収益モデルを確立するには至らなかった。今後、Amazonの実店舗戦略は傘下の「Whole Foods Market」に一本化される。Whole Foodsは数年以内に100店舗以上の新規出店を計画しており、好調な小型店フォーマット「Daily Shop」も拡大予定だ。閉鎖されるFreshやGoの一部店舗は、Whole Foodsへ転換される見通し。もっとも、これは食料品ビジネスそのものからの撤退を意味しない。Amazonは強みであるオンラインの即日配送サービスに注力し、2026年に向けて対応エリアをさらに広げる方針だ。年間約1,500億ドル規模の食料品取扱高を背景に、実店舗はブランド力のあるWhole Foodsに委ね、物流とデジタルで利便性を磨く。Amazonはここで、野心的な実験から、より現実的な勝ち筋へと舵を切ったと言える。

4. Allbirds、実店舗ほぼ撤退へ

かつてシリコンバレーの「制服」とまで称されたシューズブランド、Allbirdsが、ほぼすべての直営店舗を閉鎖する事態に追い込まれている。先日、サンフランシスコ最後の直営店が閉店し、テック業界の象徴でもあったブランドは、物理的な拠点をほぼ失った。同社はウール素材による快適性とサステナビリティを武器に急成長し、オバマ元大統領ら著名人にも支持されたが、2021年の上場以降、一度も黒字化を果たせていない。2022年には約1億ドルの純損失を計上し、株価低迷によってナスダックの上場廃止危機にも直面、株式併合による延命を余儀なくされた。衰退の背景には、シューズの成功体験をアパレル分野へ拡張しきれなかった戦略的限界や、「機能的だが洗練されていない」と評されたデザインと顧客意識のズレがある。今後は米国のアウトレットとロンドンの計4店舗のみを残し、実店舗からはほぼ撤退する計画だ。合理性と倫理性を体現したブランドの失速は、テック文化そのものの変化を映している。

5. Aldiが米国で「カルト化」した理由

ドイツの老舗ディスカウントチェーン「アルディ(Aldi)」が、米国の小売市場を席巻している。2024年の売上高は約290億ドルに達し、2028年までに店舗数は3,000を突破。店舗数においてウォルマートに次ぐ巨大勢力となる見通しだ。躍進の原動力は、狂気的なまでの合理化にある。商品の9割を占めるプライベートブランド、箱のままの陳列、カートのデポジット制など、あらゆる無駄を削ぎ落とすことで圧倒的な低価格を維持する。この戦略は、戦後ドイツで創業者のアルブレヒト兄弟が確立した「品数を絞り、価格で勝つ」という哲学に端を発する。1960年代に事業を南北に分割した際、米国進出を担ったのが南側(Aldi Süd)であり、一方の北側(Aldi Nord)は人気チェーン「トレーダー・ジョーズ(Trader Joe's)」を所有しているという血縁関係も興味深い。現在、本国ドイツでは宿敵「リドル(Lidl)」との競争が激化しており、同社にとって米国はもはや「生命線」といえる。近年はオーガニック食材や高級ワインなどのプレミアム路線も強化。インフレ下で節約を迫られる層のみならず、高級車で乗り付ける富裕層までもが、この「宝探し」のような買い物体験に熱狂している。

6. クラフトビール不況の中で、なぜベイエリアの醸造所は成長しているのか

アメリカのクラフトビール業界は、いま厳しい局面にある。2025年の生産量は前年比5%減となり、多くの醸造所が倒産や廃業に追い込まれている。ところがベイエリアでは、過去1年で少なくとも8つの醸造所が新店舗を開き、むしろ拡大を続けている。成長するブルワリーに共通するのは、ビール製造業からホスピタリティ産業への明確な転換だ。充実した食事メニューや子ども向けの遊び場を備え、カクテルやノンアルコール飲料も提供する。Headlands Brewingでは食事の売上がビールを上回り、Almanacは社名から「Beer Co.」を外した。この変化を支えるのが、直営タップルームの高い利益率である。Calicraftでは、卸売では1樽60ドルだった利益が、タップルームでは600ドルに跳ね上がる。アルコール消費が減る中でも、人々は友人と集い、食事をする場を求めている。一方、過剰な借入や拡大に踏み切った中規模醸造所は苦境に立たされている。市場はいま、「ビールを売る場」から「人が集う場」へと再定義されつつあり、その適応力こそが生き残りを分けている。

7. 「カー・スクローリング」に救いを求める親たち

現代の多忙な親たちの間で、帰宅直前に車内でスマートフォンを眺める「カー・スクローリング(Carscrolling)」が、ささやかな休息の習慣として広がっている。職場での緊張から、家事や育児が一気に始まる家庭へと切り替わる前に、誰にも邪魔されない数分間の空白を確保するためだ。家庭内ではトイレですら完全なプライバシーはなく、子どもやペットに常に囲まれる親にとって、車は最後の私的空間となっている。一方で、玄関の監視カメラや位置情報共有により、その時間は可視化され、あえて路上に停めたり、子どもに見つからないよう気を遣う親も少なくない。子どもには「画面から離れなさい」と言いながら、自分は密かにスクロールしているという自己矛盾も、この行為を後ろめたいものにしている。専門家は、気持ちを落ち着かせる効果があるなら問題ないとしつつ、不安を煽るドゥームスクロールには注意を促す。カー・スクローリングは、テクノロジーによって断片化された注意力を、親たちは再びスマートフォンを手に取ることでかろうじて整え直そうとする矛盾をはらみながらも、親たちが日常という「嵐」に戻る前に押す、短くも贅沢な一時停止ボタンとなっている。

8. スマホ時代に生きるライカ

1925年に世界初の量産型35mmカメラを開発し、報道写真の歴史を塗り替えたドイツの高級カメラメーカー、ライカ(Leica)。その輝かしい歴史とは裏腹に、同社はデジタル化への対応の遅れから2005年に倒産の危機に瀕した。しかし、投資家アンドレアス・カウフマンによる救済を転機に、ライカはそこから驚異的なV字回復を遂げる。現在、売上高は過去最高の5億9,600万ユーロに達し、マティアス・ハルシュCEOのもとで、同社は単なる精密機器メーカーの枠を超えたラグジュアリーブランドとしての地位を確立しつつある。ハルシュは「過度なノスタルジーは危険だ」と語り、過去の遺産を尊重しながらも、それに安住しない姿勢を明確にしている。その戦略は、伝統と革新を対立させるのではなく、両立させる点に特徴がある。世界120拠点以上に広がる直営店をアートギャラリーとして展開し、熱心な写真家やコレクターのコミュニティを育む一方で、Xiaomiなどのスマートフォンメーカーとの協業や専用アプリの開発を通じ、デジタル世代への接点も積極的に広げている。象徴的なのが、ライカMシステムに代表される不変の設計思想だ。1930年代のレンズさえ最新のデジタル機で使用可能という一貫性は、単なる懐古趣味ではなく、長期的な価値を前提とした製品哲学の表れと言える。さらに同社は、その卓越した光学技術をプロジェクターやアイウェアといった新領域へも応用し始めている。スマートフォンの普及を自らの存在を脅かす変化としてではなく、映像文化そのものが拡張する好機と捉えている点に、かつての失敗から学んだ現在のライカの姿勢がにじむ。歴史への敬意と未来への野心。その両立を試み続けることで、ライカは今もなお、唯一無二の存在感を放ち続けている。

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