#087_Sheep 衰退と復興のあいだ

着実に「宗教離れ」が進行しているとされるアメリカで、いま若者たちが教会へ戻っている──そんなニュースが世界を駆け巡っている。ニューヨークでは日曜夜のミサが満員になり、若者たちがピザ屋から連れ立って教会へ向かう。ポップカルチャーには宗教的モチーフが溢れ、メディアは「Z世代の宗教リバイバル」を半ば祝祭的に伝えている。しかし、マクロデータが示すのは別の景色だ。全国規模で礼拝参加率は上がっておらず、新たに信仰へ入る人より、離れる人の方がはるかに多い。「信仰の復活」は本当に起きているのか。そしてなぜ、この「復興」の物語は、教会の外にいる人々にまでこれほど強く受け入れられたのか。孤独、分断、「自由になったのに幸せになれない」という感覚──私たちが「満員の教会」という情景に見ていたのは、神そのものではなく、「もう一度つながり直せるかもしれない」という希望だったのかもしれない。「若者の宗教回帰」現象を入り口に、断片化する現代社会の深層を読み解いていく。

“The Rest Is Sheep”は、デジタル時代ならではの新しい顧客接点、未来の消費体験、さらには未来の消費者が大切にする価値観を探求するプロジェクトです。

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衰退と復興のあいだ

©︎The Rest Is Sheep

皆さんおはようございます。さて、今日の授業を始めていきましょう。

最近、キリスト教、特にカトリック文化に関連する話題をよく耳にするな、と感じることはないでしょうか。しかもそれは、単なる宗教ニュースにとどまりません。映画、音楽、SNS、ファッション、政治──さまざまなカルチャー領域にまで、「信仰」のイメージがじわじわと染み出している。

たとえば、バチカンの権力闘争を描いた映画『教皇選挙』のアカデミー賞受賞や、アメリカ出身の新教皇誕生への熱狂。音楽シーンに目を向ければ、ロザリアのアルバム『Lux』における信仰の探求、ビヨンセの『Cowboy Carter』に収録された「Amen」、さらにはジャスティン・ビーバーの『Swag』の最終トラック「FORGIVENESS」など、ポップミュージックの最前線にもゴスペル的なモチーフが散りばめられています。

さらに、かつて無神論者として知られていたイーロン・マスクも、保守活動家チャーリー・カーク氏の妻エリカによる「Go to church.(教会へ行こう)」という投稿をリポストして話題を呼びました。また、この6月には、自身のカトリック改宗について綴ったヴァンス米副大統領の回顧録も出版される予定です。

こうしたカルチャーの変化と並行するように──このあと詳しく見ていきますが──「若者たちが信仰へ回帰している」というニュースも急増しています。

でも、少し不思議ですよね。つい数年前まで、あらゆるニュースは「教会の空洞化」を警告していたはずです。米国では過去数十年にわたり、毎週の礼拝出席者数は着実に減少していました。それなのに、何か状況が大きく変わったのでしょうか?神が、あるいは信仰が、私たちのデジタル化された社会に本当に復活しているのでしょうか。

※ 生成AIが客観的な視点でレビューしています🐏🐕

満員の教会

ではまず、「今まさに目の前で起きている」とされる現象から見てみましょう。

最初の舞台はニューヨーク、マンハッタンのグリニッジ・ヴィレッジに佇むセント・ジョセフ教会です。日曜日の午後6時。かつて高齢の信者たちが静かに祈りを捧げていたその空間は、いまやまるで「満員御礼のライブ会場」のような熱気に包まれています。

長椅子の会衆席(pew)は20代、30代の若者たちで埋め尽くされ、遅れてきた参加者は折りたたみ椅子に座るか、ロビーのガラス扉越しに肩を寄せ合いながら立っている。バルコニーの階段に腰を下ろす者、壁にもたれかかる者なんかもいて、聖体拝領のパンを配る神父たちは、若者たちのバッグや膝を器用に避けながら通路を進まなければならないほどです。

St. Joseph’s Church (The Wall Street Journal)

そして興味深いのは、彼らの多くがその1時間前まで、近くのピザ屋「The Pizza Box」で大騒ぎしていた、ということです(笑)。

「Pizza to Pews(ピザから教会へ)」と名付けられたこのミサ前イベントは、アンソニー・グロスとケイト・デペトロという2人の若者が始めたもの。初回から100人以上が集まり、わずか3週目には200人規模にまで膨れ上がりました。中には、この集まりのためにロングアイランドから車を走らせたり、ボストンから列車でやって来たりする若者もいるそうです。

Instagram Post

さらにセントラルパークでは、23歳のイザベラ・オーランドという女性が「Holy Girl Walk」というイベントを主催しています。これはTikTokで流行した「Hot Girl Walk」──若い女性たちがウォーキングをしながらマインドフルネスを行う健康トレンド──をカトリック的に再解釈したもので、女性たちがロザリオを手に祈りを捧げながら公園を歩くという試みです。初回には50人ほどだった参加者も、その動画がバイラル化すると、2回目に開始前から申し込んだ人数は150人以上。通りかかった人がその場で飛び入り参加することすらあったといいます。

Holy Girl Walk (The Wall Street Journal)

各種メディアは、こうした現象を「Z世代の宗教リバイバル」として大々的に取り上げ始めました。

The Wall Street Journalはニュースレター「Free Expression」で、ハーバード・カトリック・センター(Harvard Catholic Center: HCC)の活況を「若者たちが信じるべき何かを求めている生きた証拠」として紹介しました。Vanity Fairは、20代の若者たちがワシントンD.C.のダイブ・バーで聖餐式を行う様子をレポートし、New York Postは、グリニッチ・ヴィレッジでカトリックへの改宗に関心を持つ成人の数が昨年比で3倍になったと報じています。

さらに、「保守系Cosmopolitan」とも評されるEvie Magazineは「大学キャンパスで洗礼を受ける若者が増えている」としたうえで、これこそが現代の若者における「畏敬の念への渇望」であり、「キリスト教への回帰」が起きているのだ、誇らしげに伝えました。

Evie Magazine

こうした報道に触れていると、まるで長らく衰退していた宗教が、Z世代の手によって鮮やかに再発見され始めたかのようにも見えてきます。

「宗教リバイバル」は本当に起きているのか?

ただ、ここで私たちが注意しなければならないのは、こうした局所的な現象をそのまま「アメリカ全体の宗教復興」と捉えていいのか、という点です。

たしかに、ニューヨークの特定の教会や、一部の都市部コミュニティで若者が増えていること自体は事実です。先ほど見たように、ミサが満員になり、改宗希望者が急増しているケースもある。でも、アメリカ全体を俯瞰すると──少なくとも現在確認できるデータの範囲では──「大きな宗教リバイバル」が起きているとは言えません

具体的な数字を見てみましょう。宗教人口の分析で知られる人口統計学者ライアン・バージは、「もし本当に宗教復興が起きているのなら、それは誰の目にも明らかなはずだ」と指摘しています。どういう意味でしょうか。

2024年時点で、アメリカ人のおよそ4人に1人が「毎週教会へ通っている」と回答しています。仮にその割合が、たった3%増えるだけでも、新たに1,000万人以上が毎週礼拝へ通い始める計算になる。もし本当にそれほどの地殻変動が起きているなら、全米の教会が気づかないはずがありません。

Religion Holds Steady in America” (Pew Research Center)

ただ、実際にはそうした全国規模の変化は確認されていないのです。プロテスタントでもカトリックでも、改宗によって新たに信者になる人の数より、信仰を離れる人の数が上回る状態が続いています。つまり、統計レベルで見る限り、「若者たちが大挙して教会へ戻っている」という言説は事実とは言えません。

ここで、補足としてイギリスの事例も見ておきましょう。

2025年、英国聖書協会(Bible Society)が調査会社YouGovと共同で発表した「The Quiet Revival(静かなリバイバル)」という調査が、大きな話題になりました。

The Quiet Revival (Bible Society)

そこには、18〜24歳で「月に1回以上教会へ通う」と答えた人の割合が、2018年の4%から2024年には16%へと急増していた、という衝撃的な内容が記されていたのです。わずか数年で4倍。当然、この調査は大きな注目を集めました。英国国教会のヨーク大主教はシノド(総会)でこの数字を引用し、「この調査は私たちを励ましてくれる」と発言。各メディアも「若者の宗教回帰」の決定的な証拠としてこぞって取り上げました。

(Bible Society)

ところが──結論から言うと、この報告書は後に正式撤回されることになります。

原因は、調査データの信頼性に深刻な問題が見つかったためでした。後の再分析で、謝礼目的の不正回答者が相当数混入していたこと、さらにYouGov側の不正検知システムにも運用上の不備があったことが判明したんです。特定の若年層データに、通常ではあり得ない割合の「不正回答者(fraudulent respondents)」が含まれていました。英国聖書協会側はしばらく調査の正当性を擁護していましたが、最終的にはデータが信頼に足らないことを認め、報告書そのものを取り下げました。

このように、現在確認できるデータは、「社会全体を覆うような大規模な宗教復興」を支持していません

ただし、だからといって「すべては幻だった」と切り捨ててしまうのも早計です。ニューヨークの教会が実際に若者で溢れているのも事実ですし、特定の教区で改宗希望者が増えているのも本当だからです。

つまり今起きているのは、「宗教全体の復興」というよりは、局所的な熱狂と、構造的・長期的な衰退が同時に並行しているという複雑な状況なんです。

そしてSNS時代においては、この「熱量の高い少数派」の姿が、実際の人数以上に巨大な文化現象として可視化されやすいわけです。では、その局所的な熱狂のただ中で、若者たちはいったい何を求めているのでしょうか。

若者たちは何を求めているのか

若い世代のキリスト教や教会への熱狂を伝える記事を改めて読み解くと、まず見えてくるのは、コミュニティと所属感への欲求です。

パンデミックを経て、「常時接続しているのに、ひどく孤独である」という感覚は広く定着しました。「Holy Girl Walk」を主催するイザベラ・オーランドは、「いつも新しい人には会えるのに、ずっと孤独だった」と語っています。マッチングアプリやパーティー、無数のイベントなど、出会いの選択肢が世界で最も溢れているはずのニューヨークで、です。

いま、教会が彼らに提供しているのは、アルゴリズムによって最適化された消費型のリレーションではありません。「同じ人が、同じ時間に、同じ場所へ、毎週繰り返し集まる」という、身体性を伴った継続的な関係です。しかもそこには、「同じ価値観を共有している」という強力な前提がある。

だからこそ、セント・ジョセフ教会はいつしか「ニューヨークでカトリックとして出会うための最高の場所」などと冗談交じりに囁かれるようになり、昨年末に立ち上げられたカトリック向けマッチングサービス「SacredSpark」において、ニューヨークは全米最速の成長都市となっているわけです。

聖職者たちも、そのロマンチックな空気を敏感に察知しています。ある神父は説教の中で、こうジョークを飛ばしたそうです。「皆さんがミサへ来る理由はただ一つ、神の愛のためです」──そこで一拍置いて、こう続けました。「……でも、「素敵な誰か」に出会うためでもある、と耳にしています(笑)」。その瞬間、教会中が温かい笑いに包まれたといいます。

教会は信仰の場であると同時に、友人をつくり、恋人に出会うといった、極めて生活的な欲求を満たす「人生設計の場」としても機能しているわけです。

St. Joseph’s Church (The Washington Post)

そしてもう一つ重要なのが、「重み」への欲求です。現代は、SNS、働き方、ファッション、言葉遣いにいたるまで、あらゆるものがフラットに、そして「カジュアル化」してきた時代でした。トレンドが刹那的に消費されていく社会の中で、若者たちは逆に「簡単には崩れない確かな形式」に惹かれ始めています。

カトリックには、伝統的な典礼、重厚な建築、音楽、香、ロザリオといった、視覚的・身体的に分かりやすく「宗教らしい重み」を感じさせる象徴が数多く残されています。そしてこれらは皮肉にも、SNSのビジュアル文化と極めて相性が良い。もちろん、彼らの信仰が単なる「映え」に還元されるわけではありません。でも、現代において「見える・撮れる・共有できる」という身体的経験ほど、強力に拡散されるものはないのも事実です。Holy Girl Walkのような現象は、宗教がデジタル時代に適応していくための、新たなパッケージングとして捉えることができます。

(The Wall Street Journal)

さらに最後に見えてくるのが、「意味」や「人生の指針」への欲求です。セント・ジョセフ教会のエンドルフ神父の言葉は、この核心を突いています。「今の社会は、人生の意味は消費とキャリアにあるという価値観を押し付け続けています。でも教会に集まる若者たちは、お金で買えるものだけではない「何か」を求めているのです」

ここで興味深いのは、カトリックの持つ厳格な典礼、伝統、権威、あるいはルールや禁欲といった要素が、むしろ一種の「魅力」として受け入れられている点です。消費社会の「だらだらとした自由」に疲弊した結果、あえて自分を律する仕組みを求めている。これは近年のオンラインにおける自己改善文化や、筋トレ、禁欲チャレンジの流行とも地続きです。宗教が「自分を立て直すためのシステム」として再発見されているわけです。

こうして見ると、本質的に起きているのは「宗教への回帰」というよりは、「意味のある共同体」や「人生の構造」への回帰なのだと分かります。教会はその有力な受け皿の一つにすぎません。だとすれば本当に重要な問いは、「なぜ若者が教会へ戻っているのか」ではなく、「なぜ今、人々はこれほどまでに共同体や人生の構造を強烈に求め始めているのか」であり、なぜその欲望の受け皿として「教会」というシンボルが選ばれたのか、という点にあるはずです。

なぜ「宗教復興」の物語は受け入れられたのか

さて、ここまで議論を重ねてくると、ある種の歪みが浮き彫りになってきます。

マクロデータを見る限り、「若者たちが大規模に教会へ戻っている」という事実は確認できない。にもかかわらず、「Z世代の宗教リバイバル」という物語は、ここ数年、非常に強い熱量をもって世間に受容され、拡散していきました。

しかも、それを歓迎していたのはキリスト教の内部関係者だけではありません。世俗的なメディアや、普段は宗教と距離を置いている人々までが、この物語に強く惹きつけられていた。なぜでしょうか。ここに3つの視点を提示したいと思います。

第一に、人々はこのニュースの中に、バラバラになった社会がもう一度まとまり直す「社会修復のナラティブ」を見ていたのではないでしょうか。

現代社会は、孤独、コミュニティの崩壊、出生率の低下、SNS疲れ、政治的分断、AIへの不安など、あらゆるレベルで「空洞化」を抱えています。「若者たちが教会へ戻っている」というニュースは、単なる宗教の動向を超えて、「人間はまだリアルな秩序と共同体を取り戻せるかもしれない」という、社会回復への希望を投影する格好のキャンバスとなったのです。

Pizza to Pews (The Washington Post)

第二に、この物語を消費する社会の側もまた、教会が持つ固有のキーワードに飢えていたという点です。メディアや私たちが満員の教会という情景に惹かれたのは、それが「IRL community(リアルな場のコミュニティ)」「tradition(伝統)」「ritual(儀式)」「beauty(美しさ)」「silence(静けさ)」といった、現代社会が失ってしまった価値の宝庫に見えたからです。

そしておもしろいことに、これと同じ欲望は教会の外でも「ランクラブ」「サウナ」「ソーバー・ムーブメント」「ブッククラブ」「デジタルデトックス」といった形で同時多発的に起きています。現代はあらゆる領域で「意味のある共同体」をめぐる競争が起きており、その中でカトリックの伝統が、デジタル時代の最先端ライフスタイルとして再編集されたにすぎないんです。

そして第三に、現代のアルゴリズムは「人数」ではなく「物語の強度」を増幅するという点です。「若者がランニングクラブに通っている」というニュースに比べ、「若者が教会に戻っている」というニュースが世界を騒がせるのは、後者が持つナラティブの意外性が圧倒的だからです。「デジタルネイティブのZ世代が、衰退しつつある古き宗教へ惹かれている」という構図には、世代論、政治、対立、そして時代の転換点を感じさせるエッセンスが詰まっています。さらに、キャンドルやゴシック建築、ロザリオといった視覚的イメージは、TikTokやInstagramのタイムライン上で強烈な存在感を放ちます。

St. Joseph’s Church (The Washington Post)

SNSという拡大鏡が、情報発信力の高い都市部の若い知的・文化エリート層による「局所的な熱狂」を捉え、それを社会全体の巨大な潮流であるかのように錯覚させたわけです。

つまり、「宗教復興」という物語は、単に教会の内側で起きた信仰回帰の話ではありません。そこに映し出されていたのは、孤独と分断、意味の希薄化に揺れる現代社会そのものだったのです。人びとは教会のニュースを通して、「失われた共同体」や「つながり直せる世界」の可能性を見ようとしていた。そしてSNSとアルゴリズムは、その切実な願望を、ひとつの時代的ナラティブとして増幅していった。言い換えれば、「宗教復興」とは、現代社会が自らを救済する物語として求めた希望の投影だったのかもしれません。

衰退と復興のあいだ

最後に、もう一度セント・ジョセフ教会の情景に戻りましょう。

ピザを食べた後に200人の若者が連れ立って、夕暮れのグリニッジ・ヴィレッジを歩いていく──あの光景そのものは紛れもない本物です。そこに集った若者たちが、「何かより大きなものに属したい」と切に願っていた肌感覚もまた、本物でしょう。

でも、それが「キリスト教全体の復興」を意味するかといえば、マクロデータはそれを冷徹に否定しています。彼らは教会に向かうと同時に、ランニングクラブやサウナ、自己改善コミュニティにも向かっている。教会は、彼らが求める「構造」の一つの選択肢にすぎません。

いま起きている現象が「本物の復興」なのかどうか。それは今後、客観的なデータが証明していくでしょう。しかし、多くの若者が孤立の中で帰属を求め、そして世間がその光景に激しく揺さぶられたという事実。これこそが、いま私たちが直視すべき現代社会の肖像です。

これは単なる「宗教」のトレンド分析ではありません。孤独化し、断片化したこの世界の中で、人間は本当にもう一度つながり直すことができるのか──その大いなる可能性をめぐる、私たち自身の物語なんです。

今日はここまで。ありがとうございました!

🐏 Behind the Flock

“Sheepcore”で取り上げたテーマをさらに深掘りしたり、補完する視点を紹介します。群れの中に隠された本質を探るようなアプローチを志向しています。

1. ニューヨークの若者たちの新たな人気スポット:日曜日のミサ

ニューヨークの若者たちの間で、日曜ミサが新たな「社交場」として人気を集めている。グリニッジ・ヴィレッジのセント・ジョセフ教会では、若者で礼拝堂が満員となり、立ち見が出るほどだ。その背景には、「Pizza to Pews」のような若者向けコミュニティ企画の存在がある。参加者たちはピザを囲んだ後に集団で教会へ向かい、「一人では教会に行きづらい」という感覚を解消している。背景には、パンデミック以降に強まった孤独感や共同体への渇望、政治的不安や経済不安がある。調査会社Barna Groupによれば、Z世代のキリスト教徒は近年、他世代より高頻度で教会に通っており、特に若い男性の宗教関心が急上昇している。若者たちは信仰だけでなく、「同じ価値観を持つ人とのつながり」を求めて教会へ足を運んでいる。こうした流れは恋愛やライフスタイルにも波及している。ロザリオを手に公園を歩く「Holy Girl Walk」や、TikTokで共有される「wholesome Sundays(心身ともに健全に過ごす日曜日)」文化、さらにはカトリック系マッチングアプリの成長など、教会は単なる宗教空間を超えたコミュニティへと変化している。教会側も若者向けプログラムやボランティア活動を拡充しており、「キャリアや消費だけでは満たされない何か」を求めるZ世代の受け皿になっている。

2. 振興の復興は起きていない

近年アメリカでは、Z世代を中心に「若者の宗教回帰」が注目を集めている。大学のカトリックセンターで改宗希望者が増えたり、若者の聖書購入や教会参加が話題になったりすることで、「新たな宗教復興」が語られている。しかし実際には、その増加は一部の大学や都市部に限られ、数字としても小規模で、全米規模の大きな信仰復興と呼べる状況には至っていない。2023年のアズベリー大学での礼拝ブームも大きく報じられたが、長期的な宗教参加の増加には結びついていないという。現在の若者の宗教接近には、純粋な信仰心だけでなく、保守的価値観やコミュニティへの帰属意識、伝統的ライフスタイルへの憧れといった政治・文化的要因も強く影響している。キリスト教離れの減速傾向は見られるものの、社会全体を覆う「大覚醒(Great Awakening)」が起きているとは言い難く、SNSやメディアによって局地的現象が過剰に増幅されている側面も指摘されている。

3. 英国で「Z世代の宗教復興」説が撤回される

英国聖書協会(the Bible Society)と調査会社YouGovが発表した「若者の教会回帰」を示すレポート『The Quiet Revival』が、不正回答を含む「欠陥データ」に基づいていたとして撤回された。レポートでは、18〜24歳の教会参加率が2018年の4%から2024年には16%へ急増したとされ、「Z世代の宗教復興」として大きな注目を集めていた。しかし後に、海外から報酬目的で回答した不正な調査参加者が多数含まれていたことが判明し、YouGovは人為的ミスにより不正防止システムが適切に機能していなかったと謝罪した。教会関係者は、精神的安定やパンデミック後の価値観変化を背景に若者の信仰回帰を期待していたが、専門家や統計分析では全国規模の顕著な増加は確認されていなかった。今回の件は、オンライン調査の脆弱性と、「宗教復興」論が期待先行で拡散された実態を浮き彫りにした。

🫶 A Lamb Supreme

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