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Baa,Baa,Baa. | Week of Dec 15, 2025
【Weekly Picks】パフォーマティブ・マチュリティ
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。
The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。
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🐏 Baa,Baa,Baa.
Weekly Headlines
パフォーマティブ・マチュリティ
神が再び注目されている
チャネルプランニングの終焉
コンビニの靴下がクールなお土産になった理由
身体は、絶え間ない更新を必要とするデバイスの一つになった
シアトルの「静かなブッククラブ」
拡張するアドベントカレンダー
1. パフォーマティブ・マチュリティ
孤独感や社会不安、無制限のネット接続、経済危機といった環境に囲まれて育ち、さらにパンデミックの最中に成人期を迎えたZ世代は、享楽や社交から距離を置く生き方を「落ち着いた」「大人びた」ものとして理想化し、孤立を美徳として語る空気を生み出してきた。夜9時に寝ることやクラブ嫌いを誇らしげに発信するSNS投稿は、その象徴的な表れだ。だが近年、こうした振る舞いに対し、それは本当の成熟ではなく「演じられた成熟 = パフォーマティブ・マチュリティ」ではないか、と批判する声が広がりつつある。この反発が問題視しているのは、外出しないことや一人で過ごす選択そのものではない。そうした行動を、若さゆえに許される無謀さや遊びを早々に手放した証として誇示し、あたかも他者より精神的に成熟しているかのように振る舞う態度だ。孤立を「成熟」の証として演出する言説は、結果的に外の世界との接触を避ける生き方を理想像として広め、若者同士の関係性や社会的スキルが育まれる機会を奪ってきた。「パフォーマティブ・マチュリティ」という言葉が可視化したのは、Z世代の孤独が個人の性格や時代背景だけで生まれたものではなく、仲間内で称賛され、笑いや共感をもって消費されてきた文化の産物でもあるという事実だ。孤立が当たり前で、むしろ格好いいものとして扱われてきたからこそ、孤独は深刻化してきたのではないか。成熟とは世界から身を引くことではなく、他者や社会と関わり続ける力のはずだ——この議論は、若さと楽しみ、そして「大人であること」の意味を、あらためて問い直す契機となっている。
2. 神が再び注目されている
近年、Z世代やミレニアル世代の間で宗教への関心が急速に高まっている。スペイン人歌手ロザリアのアルバム『Lux』における信仰の探求や、ビヨンセ、ジャスティン・ビーバーといったポップスターたちの楽曲に見られる宗教的要素は、この潮流を象徴している。調査によれば、超自然的な神を信じる若者の数は2021年以降倍増しており、世代を追うごとに宗教が衰退しているという従来の想定を覆している。この宗教回帰の背景には、気候変動やパレスチナ問題など現代特有の政治的・実存的不安がある。若者たちは、SNSが提供する単純化された答えではなく、何千年も続く宗教という深い時間の中に指針を求めている。さらに、緊縮財政によってユースセンターなどのコミュニティスペースが削減される中、教会やモスク、シナゴーグは数少ない「サードプレイス」として機能し、コミュニティ形成の拠点となっている。また、新自由主義や消費主義への幻滅も大きな要因だ。自己をブランドや購買行動で定義される世界に疲弊した若者たちは、宗教が提示する「他者への愛と奉仕」という価値観に魅力を感じている。総じて、この世代の信仰への回帰は、コミュニティの発見、政治的な指針、現代生活の混乱に対する超越的な意味の探求という、複雑で多層的な動機に基づいている。ドーキンスらによる「新無神論」の時代を経て、若者たちは、より曖昧さを受け入れ、自分自身で方向性を見出す、繊細で意図的な方法で信仰と向き合っている。
3. チャネルプランニングの終焉
従来のチャネル・プランニングは、TVやOOH、SNSといった媒体を「メッセージをのせる容器」として扱い、それぞれに固定的な役割を与えてきた。しかし今日のメディア環境は、もはやその前提では捉えきれない。TikTokやYouTube Shorts、リテールメディアは「チャネル」ではなく、人々の情報の処理、符号化、記憶の仕方を形成する「認知アーキテクチャ(cognitive architectures)」として機能している。例えばTikTokは、瞬間的なドーパミン反応を最適化するアルゴリズムによりパターン認識を強化するが、深い記憶形成は弱い。一方、長尺の没入型コンテンツは感情的な統合と意味処理を促し、より強固な記憶ネットワークを構築する。重要なのは、リーチが単なる露出数ではなく「認知イベント」だという点だ。同じ広告でも、環境によって記憶への定着度は大きく異なる──メディアはメッセージなのだ。マーケティングサイエンスはリーチの重要性を実証してきたが、認知科学は「どの環境がどのような記憶効果を生むか」を明らかにしている。今後のプランニングは、チャネルではなく認知モードを起点に、ブランドが達成すべき認知的な目標から逆算して設計されるべきだ。
4. コンビニの靴下がクールなお土産になった理由
日本のコンビニエンスストアで販売される「ラインソックス」が、今や世界的な人気を誇る土産物となっている。2021年、ファミリーマートが衣料品ライン「コンビニエンスウェア」の一環として発売した店舗ロゴを思わせる青と緑の二色ラインが入った白ソックスは、390円という手頃な価格ながら、旅行者やSNSクリエイターの間で注目を集めた。日本のコンビニは、1970年代以降、共働き世帯の増加を背景に、食事の提供にとどまらず、チケット購入や公共料金の支払い、清潔なトイレや無料Wi-Fiなど多様な機能を備えた「ワンストップショップ」へと進化してきた。そうした文脈において、ファミリーマートが衣料品を展開したこと自体は自然な流れだったが、ロゴカラーを前面に押し出した「ラインソックス」は想定以上のヒットとなった。コロナ禍で在日外国人の間に広まった人気は、国境再開後に観光客へと波及し、現在では3,000万足以上を販売。季節限定色や『ストレンジャー・シングス』などとのコラボ商品も登場している。ローソンやセブンイレブンも追随し、コンビニソックス市場は拡大を続ける。軽量でかさばらず、日本の日常文化を象徴するこの靴下は、実用性と記憶を兼ね備えた現代的な土産物として支持を集めている。
5. 身体は、絶え間ない更新を必要とするデバイスの一つになった
2025年、身体はもはや常に調整、更新されるデバイスのように扱われている。SNSでは身体改変や極端なトレーニングを発信するインフルエンサーが人気を集め、かつては周縁的だったバイオハッキングが大衆文化として浸透した。美容領域では、looksmaxxing(自分自身の外見を徹底的に磨き上げ、魅力を最大限に高めようとする活動やトレンド)やtweakments(メスを使わない、侵襲性の少ない美容外科治療)といった言葉が一般化し、高額な整形の代替として非侵襲的施術や「寝ている間に整える」セルフケア習慣が広がっている。一方、パフォーマンス面でも、睡眠や体調を数値化するデバイスが普及し、身体は常に測定・管理される対象となった。こうしたツールは有用な場合もあるが、過度な最適化は不安や強迫観念を助長しかねない。さらに、男性の間にも成果主義的な自己改良思想が広がり、身体が欲望や価値を獲得するための「最短ルート」と見なされつつある。最適化の先には、身体がステータス化し、技術に左右される社会の影も見える。私たちは今、自己改善と自己消去──身体を良くしようとする過程で、「自分らしさ」や判断する主体としての「私」が後景に退き、代わりにスコア、トレンド、技術が意思決定を行うようになること──の境界線に立たされている。
6. シアトルの「静かなブッククラブ」
シアトルで、「Silent Book Club」という読書コミュニティが静かな盛り上がりを見せている。課題図書も強制的な議論もなく、参加者は各自好きな本を持ち込み、約1時間静かに読書する。その後、希望者だけが本について語り合うという負荷の低いスタイルだ。10年以上前にサンフランシスコで創設されたこの活動は、現在62カ国で2,000以上の支部を持つまでに成長している。特にユネスコ創造都市ネットワークに文学分野で認定されており、内向的な気質と長く暗い冬を持つシアトルには最適な活動として根付いている。キャピトル・ヒル支部を立ち上げたビバリー・ジェームズは、友人6人から始めた集まりがSNSを通じて70人規模まで拡大したと語る。参加者の中には新しくシアトルに引っ越してきた住民や、暗く雨の多い季節に引きこもりがちになるのを避けたい人々も多い。ある参加者はこのコミュニティについて「デバイスを置き、本と人間的交流に集中できる素敵な逃避空間」「人と一緒にいたいけど、今は世間話はしたくない、という微妙なニーズに応える場所」と評している。
7. 拡張するアドベントカレンダー
先週に引き続き、現代においてアドベントカレンダーが驚くほど多様化している、という記事。いまやチョコレートだけでなく、ポートワイン、ポーク・スクラッチング、プロテインパウダー、工具、スライム玩具など、あらゆる商品が24日間の小窓に詰め込まれている。高級品では、12日間分のキャビアのカレンダーが約1,000ドル、美容ブランドSpace NKの化粧品カレンダーは数週間で完売する人気ぶりだ。背景には「小さな贅沢」志向があり、景気後退期であっても口紅が売れる「リップスティック・エフェクト」と同じく、手頃な高級感が需要を刺激する。また、限定品やコレクター向けアイテムがSNSで話題を生み、TikTokには130万本もの「#AdventCalendar」動画が投稿されている。ブランドにとっても新規顧客獲得の絶好の機会となり、近年はハロウィン向けカレンダーなどクリスマス以外への拡張も始まった。母の日、誕生日向け向けカレンダーなど一年中「カウントダウン」を楽しむ文化への拡張も予想される。
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