Baa,Baa,Baa. | Week of Mar 9, 2026

【Weekly Picks】シリコンバレーの「ゲイ・テック・マフィア」の実像

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。

The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。

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Weekly Headlines

  1. シリコンバレーの「ゲイ・テック・マフィア」の実像

  2. ブックフルエンサーが主導する新しい出版社モデル

  3. 投資家のためのα世代ガイド

  4. 保守派のCosmopolitan「Evie Magazine」

  5. 「Becoming Chinese」ミームの広がり

  6. ブランドに求められる「ディナーパーティの作法」

  7. クラシックドールのオゼンピック化

  8. KithとOnが複数年パートナーシップ、ランチーム設立

  9. スマホの華やかな光がダンスフロアを沈めつつある

1. シリコンバレーの「ゲイ・テック・マフィア」の実像

シリコンバレーではかねてから「ゲイ・テック・マフィア」と呼ばれる非公式ネットワークの噂がくすぶっている。テック業界にはピーター・ティール、ティム・クック、サム・アルトマン、キース・ラボイスなど影響力のあるゲイ男性が多く、SNSでは彼らが投資や起業の世界を支配しているという陰謀論も広がっている。しかし取材を行ったWIREDは、こうした説の多くが誇張や偏見を含む可能性が高いと指摘。実際、サンフランシスコには大規模なゲイコミュニティと世界最大級のベンチャー資本が集中しており、ゲイの起業家や投資家が自然と集まりやすい環境がある。友人関係や社交イベントを通じて採用や投資を後押しするネットワークが生まれることも珍しくない。その結果、外部からは同じコミュニティ内の人間を優遇しているように見える場合もあるが、その背景にはいくつかの要因が指摘されている。例えば、子どもを持たないライフスタイルの人が比較的多く、週末も含めて仕事や起業に時間を投入しやすいこと。また、マイノリティとして育った経験から「自分の力を証明したい」という強い動機が起業家精神と結びつくこと。さらにゲイコミュニティは世代間の距離が比較的近く、若い起業家と年上の投資家が同じイベントや社交の場で自然につながりやすいという特徴もある。一方で、こうした結びつきではビジネスと私生活の境界が曖昧になりやすい。若い起業家が投資を得るために性的な誘いに晒されたり、望まない接触を経験したと語る関係者もいる。もっとも統計を見れば、LGBTQの創業者に向けられたベンチャー投資は2000〜2022年の期間でも全体のわずか0.5%に過ぎない。「マフィア」という言葉が想起させるほどの支配的構造があるわけではないのだ。つまり「ゲイ・テック・マフィア」と呼ばれる現象の実態は陰謀ではなく、コミュニティ、野心、資本、そして人間関係が複雑に交差するシリコンバレー特有のネットワーク文化の一つの形だといえる。

2. ブックフルエンサーが主導する新しい出版社モデル

出版スタートアップのBindery Booksは、SNSで本を紹介するインフルエンサー「Bookfluencer」を編集者(テイストメイカー)として起用する独自の出版モデルで注目を集めている。出版業界のベテランであるMatt KayeとMeghan Harveyが設立した同社は、インフルエンサーが率いる複数のレーベルを通じて作品を選定し、オンラインの読者コミュニティと結びつけて出版を進める仕組みを採用する。これは、読者ニーズを事前に予測する従来型の出版とは異なり、読者との対話を通じて関心を把握し、その声を出版プロセスに反映させることを目指すものだ。実際に作家Courtney Summersは、旧作『This Is Not a Test』を現代向けに改訂・再出版する際、Binderyのインフルエンサーと密接に連携することで作品への関心を再び高め、書店員が選ぶおすすめリストにも名を連ねた。Summers自身も、従来の出版社では得られなかった手厚いサポートと、読者への直接的な訴求力を実感しているという。同社の特徴として、多くの作品がデビュー作である点も挙げられる。エージェントのいない作家やクィア作家、有色人種の作家など、従来の出版業界で十分に支援されてこなかった層の発掘にも力を入れている。まだ黒字化には至っていないものの、ベストセラーを生むなど一定の成果を上げており、インフルエンサー文化と出版を結びつける新しいモデルとして業界から注目されている。

3. 投資家のためのα世代ガイド

2010年から2024年に生まれた「Gen Alpha(α世代)」は、21世紀に誕生した最初の世代であり、世界人口約20億人を占める史上最大の世代である。未成年ながら、米国だけでも年間1,000億ドル以上の消費力を持つとされ、新たな消費トレンドを生み出し始めている。最大の特徴は「AIネイティブ」であることだ。検索や学習、娯楽などあらゆる場面でAIが当たり前に存在する環境で育ち、AIアシスタントは日常生活の重要なツールになりつつある。また、InstagramなどのSNSよりもオンラインゲームをコミュニケーションの場として使う傾向が強く、RobloxやFortniteのようなゲーム空間で友人と交流する。一方、消費面ではメンタルヘルスやセルフケアを重視するウェルネス意識が高く、スキンケアやフィットネスにも早くから関心を示す。さらに、レトロ文化への憧れからリセール市場を支持し、デジタル世代でありながら実店舗での買い物や映画館などリアルな体験も好むという特徴を持つ。企業や投資家にとって、彼らの言語や習慣、価値観を理解することは、将来の市場を読み解く上で欠かせない視点となりつつある。

4. 保守派のCosmopolitan「Evie Magazine」

Evie Magazineは2019年創刊の女性向けメディアで、「保守派版Cosmopolitan」を掲げ、伝統的価値観を持つ若い女性を主な読者に想定している。創業者ブリタニー・ヒューゴブームは同誌を「フェミニストではなくフェミニンな女性のための媒体」と位置づけ、美しさやロマンス、家庭とキャリアの両立といった価値観を肯定する内容を発信。美容やライフスタイル記事に加え、避妊やワクチンを保守的視点から論じる健康記事も掲載する。従来の保守系メディアは年配男性が主導してきたが、EvieはSNSを主戦場に、華やかでファッショナブルなブランドイメージで差別化を図った。保守的価値観を政治的主張としてではなく、日常のライフスタイルとして提示する点も特徴である。こうした姿勢は既存メディアに疎外感を抱いていた若い女性層の共感を集めた。ニュースメディアへの不信の拡大やトランプ再選後の政治環境も追い風となり、現在では月間約1億7500万ビューを記録するなど一定の影響力を持つ。収益はサブスクリプションやグッズ販売、ブランドコンテンツが柱で、広告依存を避けたビジネスモデルを採用。ピーター・ティール系ファンドからの資金調達も受け、独自のメディア経済圏を築きつつある。

5. 「Becoming Chinese」ミームの広がり

TikTokやInstagramを中心に、「Becoming Chinese(中国人になる)」というジョーク的なミームが広がっている。白湯を飲む、室内でスリッパを履く、アジア系スーパーで買い物をするといった中国の日常習慣を取り入れることが「中国人的」とされ、民族や国籍を問わず誰でも参加できるトレンドとして人気を集める。その背景にあるのは、中国のソフトパワーの台頭だ。かつて中国の文化発信は国家主導のプロパガンダ色が強く、海外での影響力拡大には苦戦していた。しかし近年は、Labubuやゲーム「黒神話:悟空」といったマーケット主導のポップカルチャーが世界的な支持を獲得しており、ビザ免除の拡大や外国人旅行者による動画投稿も、中国への親近感を高めている。NYUのShaoyu Yuan教授は、このミームを「中国文化への親しみが広く浸透した結果」と分析する。中国政府もこの潮流を好機と捉え、外務省スポークスマンや駐米大使がミームに言及しながら観光客誘致に活用している。一方、一部のアメリカ人にとってこのミームは、国内政治や社会への失望を映す鏡でもある。国民の健康維持を顧みない政府への静かな抵抗として習慣を取り入れる人もいれば、社会的混乱の中で「他に何かあるはずだ」というオルタナティブへの渇望として受け止める若者もいる。

6. ブランドに求められる「ディナーパーティの作法」

過去10年以上、企業やブランドのコミュニケーションを支配してきたのは、KPIやリーチといった数値指標を重視する「ダッシュボード・カルチャー」だ。そこでは可視性や話題性が優先され、本来の価値や意味は後回しにされる傾向があった。その結果、声の大きさを競う情報環境に人々は疲れ、グループチャットや有料ニュースレター、ポッドキャスト、ニッチなコミュニティなど、アルゴリズムに左右されない小さく閉じた場へと移動している。しかし多くの企業は、依然として旧来の「拡声器型」の戦略のまま、この新しい文化空間に入り込もうとしている。Matt Kleinはこの状況を「文化はディナーパーティのようなものだ」と表現する。文化的な場には暗黙のルールがあり、ブランドは「良いゲスト」として振る舞う必要がある。場の雰囲気を理解し、価値を持ち寄り、会話を重ねながら関係を築く。そして自分がホストではないことを理解し、謙虚さを保つことだ。文化を攻略の対象ではなく関係性の場として尊重するブランドこそが歓迎され、やがて自ら文化を形作る存在になっていく。

7. クラシックドールのオゼンピック化

米国の人気ドールブランド「American Girl」が新シリーズ「Modern Era Collection」を発表し、その大胆な「現代化」がファンの間で波紋を広げている。ブランドはInstagramで、クラシック版と新作の人形を並べた画像を公開。Felicity、Josefina、Kirsten、Addy、Samantha、Mollyといった代表的キャラクターを、現代的な視点で再解釈している。もともとこれらのドールは、それぞれの時代背景を反映した歴史考証に基づく衣装が特徴だった。しかし新作では、ロングスカートがデニムジーンズに置き換えられ、ミニドレスや短いスカートが採用されたりするなど、ヘアスタイルやアクセサリーも含めて現代的なスタイルへと刷新されている。クラシック版と並べて公開されたこともあり、SNSではファンから批判が相次いだ。特に、人形の体型が以前より細く見える点や、ミニスカートなどの衣装が挑発的だと指摘され、「歴史的キャラクターをオゼンピック化(Ozempify)した」と皮肉る声も出ている。ノスタルジーを期待していたファンにとって、看板キャラクターの変貌はブランドの伝統を損なうものだと受け止められている。

8. KithとOnが複数年パートナーシップ、ランチーム設立

ューヨーク発のストリートブランドKithと、スイスのランニングブランドOnは、ランニングを軸とした複数年パートナーシップを正式に発表した。Kithの創業15周年の節目に合わせて公開された2026年春コレクションでは、両社の協業によるオリジナルスニーカー2モデル「K-Tech 1」と「K-Tech 2」が登場する。K-Tech 1は通気性の高いメッシュにスエードオーバーレイを重ねたパフォーマンス志向のモデル。一方のK-Tech 2は、日常からトレーニングまで対応する高い汎用性を備える。両モデルには、On独自のCloudTec®クッショニングやHelion™フォームミッドソールなど最新のランニング技術が採用された。シューズに加え、Onのコアコレクションをベースにしたアパレルラインも展開。ランニングジャケットやTシャツ、スポーツブラ、ショーツなどにKithのカラーパレットを落とし込んだ。さらに両ブランドは、ニューヨークのランナーやコーチを中心としたコミュニティベースのランニングチーム「Kith Run Team」を立ち上げ、4月に開催されるニューヨークのハーフマラソンへの参加を目指して活動をスタートさせている。

9. スマホの華やかな光がダンスフロアを沈めつつある

エレクトロニック・ミュージックのクラブカルチャーがSNSと商業化の影響によって大きく変化している。かつてコミュニティと身体的なつながりの場であったダンスフロアが、いまや単なる「鑑賞イベント」へと変わりつつあるためだ。パンデミック後に再開したナイトライフでは、観客が踊るよりもスマートフォンを掲げて撮影する光景が常態化。TikTok文化の影響もあり、ダンス自体もカメラ映えを意識した形式へと変化している。こうした流れのなかで、クラブは巨大スクリーンや派手な演出を備えた空間へと変貌し、体験そのものが次第に「コンサート化」している。チケット価格も高騰し、ヘッドライナー中心のラインナップが組まれるなど、観客がステージを眺める構造が強まっている。本来クラブ文化は、DJとフロアの相互作用や即興性、自由な解放感に支えられてきた。しかし短時間のDJセットや視覚演出重視の構成は、音楽の物語性を損なうとの批判も強い。実際、DJの61%が「音楽の腕よりSNSフォロワーが重要」と感じているという。こうした状況に対し、一部のクラブでは「スマホ禁止」を掲げ、ダンスフロア本来の熱量を取り戻そうとする動きも生まれている。見知らぬ者同士が心身を開き合う場としてのクラブが残るのか、それとも単なる「騒がしい上映会」になるのか。いまその価値が問われている。

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