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#058_Sheep 「ラグジュアリー」はどこから来て、どこへ行くのか
2015年、ヴィクトリア&アルバート博物館は「What is Luxury?」という問いを掲げた。あれから10年、この問いはいまなお答えを持たない。かつての「Loud Luxury」はリーマンショック後に「Quiet Luxury」へと内面化したが 、パンデミックを経て、その欲望は再び「ともに生きる」利他性 、そして「ダークモード」的な解放へと複層化している。2025年のいま、バレンシアガの「Luxury」フーディを「Quiet Luxury」の女王グウィネス・パルトローが纏う光景が映し出すのは、矛盾と皮肉に満ちた現代のラグジュアリーの姿だ。私たちは今、何をラグジュアリーと呼び、何を求めているのか。
#057_Sheep リップスティック2.0
2025年春、トランプ政権の関税強化策をきっかけに、SNS上で「Recession Indicators(景気後退指標)」が話題となった。卵の価格からクラブのダンスフロアの混雑度まで、あらゆる現象が不況のサインとして語られ始めるなか、特にZ世代は、ローライズジーンズの流行やレディー・ガガの復帰までをも経済不安と結びつけ、ミーム化した。伝統的な「リップスティック・エフェクト」から、Z世代が再定義する「新しい小さな贅沢」——抹茶ラテ、リセール・スニーカー、機能性コスメ——まで辿りながら、景気指標として注目される消費現象の背後にある、より大きな世代的価値観のシフトを読み解く。
#055_Sheep ニューヨーク・グルメグローサー・ウォーズ
2020年に破綻したDean & Delucaが残した空白を埋めるべく、ニューヨークでは新世代のグルメグローサーたちが覇権を争っている。まだ開店していないのにTikTokで13万人のフォロワーを集めるMeadow Lane、ミシュラン星付きレストランが運営するRigor Hill Market、「文化的サロン」を標榜し20ドルのバターを売るHappier Grocery、Z世代の支持を集めて新たなフェーズを迎えた創業100年の老舗Butterfield Market。そして、この戦いに参入するErewhonは、43,000ドルの会員制クラブ内への出店という究極の排他性を打ち出す。グルメグローサーはもはや単なる日常の買い物場所ではなく、「SNSで表現するライフスタイル」や「ウェルネスという名のステータス」を購入するメディアへと変貌している。
#054_Sheep アメイジング・ユニバース・オブ・A24
2012年の創業から13年でアカデミー賞21冠、企業価値35億ドルへと成長したA24。作家主義への徹底したコミットメントと革新的なマーケティングで「A24映画」という新ジャンルを創出し、劇場で観る人の60%以上が「A24だから」と選ぶブランドロイヤリティを確立した。しかし、投資マネーを得て企業価値35億ドルの「アートハウス・ユニコーン」となった今、A24は深いジレンマに直面している。芸術的誠実さと、スタートアップ的な成長論理、すなわち作家主義と資本主義の間で、インディペンデント映画の救世主はオルタナティブであり続けられるのだろうか。
#053_Sheep パワー・オブ・ノスタルジア
古書店街、神保町が「世界で最もクールな街」に選ばれた2025年。AIやデジタル全盛の時代に、なぜアナログが再評価されるのか?実は今、レコードやフィルム写真、カセットテープなど、あらゆる「アナログ」が世界的にリバイバルしている。特に興味深いのは、デジタルネイティブのZ世代こそが、この現象の中心にいることだ。彼らは自分たちが体験したことのない「過去」に憧れる「歴史的ノスタルジア」を抱き、テクノロジー疲れから逃れる手段としてアナログ体験を求めている。一見後ろ向きに見える「ノスタルジア」が、実は未来へ向かうエネルギーとして機能している現代。その知られざる心理メカニズムに迫る。






