Baa,Baa,Baa. | Week of Apr 13, 2026

【Weekly Picks】いつもスマホをいじっているのは、今やダサいことだ

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。

The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。

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Weekly Headlines

  1. いつもスマホをいじっているのは、今やダサいことだ

  2. なぜ今、ランフルエンサー批判が強まっているのか

  3. なぜATMは銀行窓口の仕事を奪わなかったのに、iPhoneは奪ったのか

  4. 誰もが愛する『East Village Cookbook』

  5. Blank Streetが小型店舗から脱却へ

  6. Paramountが書籍事業に再参入

  7. 『KPop Demon Hunters』続編のビッグ・ディール

  8. Alo Yogaの進路

  9. 酒が売れない時代の外食ビジネス

  10. 「完璧なパイント」の注ぎ方を教えるギネス検査官

1. いつもスマホをいじっているのは、今やダサいことだ

1990年、作家のDonald R. Katzは、個人化されたニュースやメール、映像を一体化した端末の登場を予見した。しかし、その利便性の裏に潜む「依存」までは見抜けていなかった。現在、アメリカ人は平均5分に1回スマートフォンを確認し、過半数が依存を自認するなど、「慢性的オンライン状態(chronically online)」が常態化している。コロナ禍はこの傾向をさらに加速させ、SNS上では、現実の複雑さを削ぎ落とした単純で過激な言説が拡散した。だが今、その流れに変化が生まれている。「常にオンラインでいることはむしろダサい」という価値観の台頭だ。文筆家のKate Lindsayが指摘するように、スクリーンタイムの少なさは新たな社会的シグナルとなり、オフラインで過ごすこと自体が価値を帯びつつある。こうした動きは、過去10年の過剰なSNS利用が一時的な「熱狂」に過ぎなかった可能性も示唆する。実際、若年層を中心にSNSの有害性を指摘する声は増えており、スマートフォンとの距離を見直す機運もじわじわと高まっている。一方で、Metaはスマートグラスなど新たな接続手段を模索しており、依存のかたちは今後も変容していく可能性が高い。完全な離脱は現実的ではない。だからこそ今求められているのは、テクノロジーに支配されるのではなく、適切な距離を取り直すことなのだろう。

2. なぜ今、ランフルエンサー批判が強まっているのか

コロナ禍以降のランニングブームとともに台頭したランニング系インフルエンサー「ランフルエンサー(runfluencer)」への風当たりが強まっている。発端の一つは、インフルエンサーの怪我がSNS上で過剰に拡散されたことだが、これは単なる偶発的な騒動ではなく、これまで蓄積してきた不満と不信感が一気に噴出した結果でもある。背景には複数の問題がある。過酷なトレーニングによる怪我の増加、SNS上の申告タイムと公式記録の乖離を暴く不正疑惑、AI生成のトレーニングプランの流通、さらには一般ランナーが抽選でしか出場できない大会への優先招待といった特権構造だ。アルゴリズムに駆動され、休息なく走り続ける彼らの生活は実質的にアスリートに近い。しかしそれが「誰でも再現可能なライフスタイル」として提示されることで、視聴者は過度な比較や無理な追従を強いられ、違和感と反発を募らせていく。憧れと共感のバランスの上に成り立っていたはずの関係は崩れつつあり、持続不可能な理想を売る構造そのものが問われている。特権性や制約を含めた実態の開示と、それに見合った責任ある発信こそが今、問われているのだ。

3. なぜATMは銀行窓口の仕事を奪わなかったのに、iPhoneは奪ったのか

ヴァンス米副大統領はAIが雇用に与える影響について語る中で、「ATMは銀行員の仕事を奪わなかった」という例を引き、技術は人間を置き換えるのではなく生産性を高めると主張した。この指摘は、ATMが銀行員の雇用を直ちに減らさなかったという点では正しい。実際、ATMの導入は支店運営コストを引き下げ、その結果として店舗数の増加を促した。銀行員は現金処理から営業や顧客対応へと役割を変え、雇用はむしろ維持された。つまりATMは労働を代替するのではなく、役割を再編する補完的な技術だった。しかしこの見方は、技術が雇用をどのように「消す」のかという観点を欠いている。2010年代以降、銀行員数は大きく減少したが、その主因はATMではなく、iPhoneに代表されるスマートフォンの普及だった。モバイルバンキングの浸透によって来店の必要性は消え、銀行は物理的拠点からアプリへと再定義された。その結果、支店とともに銀行員という職種自体の前提が崩れた。この対比が示すのは、技術の本質的なインパクトは「作業の自動化」ではなく「前提の書き換え」にあるという点だ。既存の枠組みの中での効率化は雇用を残すが、新たなパラダイムは仕事そのものを消しうる。AIについても同様で、既存業務への単なる導入にとどまる限り影響は限定的だが、構造そのものが再編されるとき、初めて本格的な雇用変化が生じるのだ。

4. 誰もが愛する『East Village Cookbook』

2025年には豪華な装丁の料理本が数多く出版された。その中で、ニューヨーク・イーストヴィレッジ発のコミュニティ・クックブック『East Village Cookbook』が、異例のベストセラーとなっている。本書はコロナ禍のロックダウン中、シェフのウィル・ホロウィッツら3人が地域の炊き出し支援の資金を集める目的で企画したものだ。当初は簡素な冊子として企画されたが、地元デザイン会社Championsやプロの編集者が無償で参加したことで、伝統的なコミュニティ本の素朴さと洗練を兼ね備えた一冊へと発展した。収録内容も、VeselkaやMomofuku Noodle Barといった人気店のレシピから、住民の家庭料理まで多岐にわたり、地域の多様性をそのまま映し出している。こうした構成は単なる料理本を超え、街の記憶や口承文化を記録する試みとして評価され、海外からの注文も集まるなど、その裾野は着実に広がっている。デジタル化が進み、均質化されたコンテンツが増えるなかで、本書の持つ手作りの質感やローカルな物語性が、読者の共感を呼んでいる。結果として本書は、食を通じてコミュニティの記憶と連帯を次世代へ手渡す、新たな文化的価値の体現といえる。

5. Blank Streetが小型店舗から脱却へ

ニューヨーク発のコーヒーチェーンBlank Streetは、狭小店舗による徹底した効率化と低価格、スピードを武器に急成長し、企業評価額は5億ドルを超えた。さらに現在、1億ドル超の資金調達に向けた初期交渉を進めているとされ、今回のラウンドでは企業価値が10億ドル近くに達する可能性もある。しかし成長が鈍化する中、同社は戦略の大転換に踏み切ろうとしている。新コンセプト店舗は約120平方メートルと従来の約3倍に拡張。自撮り用の大型ミラーやSNS映えを意識した照明に加え、「カンバセーション・ブース」を設置し、滞在を前提とした空間へと刷新した。さらに、スタッフが目の前で仕上げる演出「ザ・ポア(the pour)」を導入し、TikTok時代に最適化された体験価値を強化。従来の「持ち帰り特化」から、Starbucksに近い滞在型の「サードプレイス」へと舵を切っている。背景には、来店客の滞在時間の伸長や、抹茶ドリンクを中心とした午後のドリンク需要拡大がある。Z世代を主軸に、コーヒー提供の場から交流・体験の場へと再定義を図る構えだ。今後の新規出店はすべてこの形式とし、既存店も2年以内に転換する。一方で、この戦略には大きなリスクも伴う。大型化に伴う賃料や人件費の増加に加え、原材料費高騰で価格は上昇。16オンスのアイスラテは2021年の4ドルから5.4ドルへと値上げされ、Starbucksとの差はわずか55セントに縮まった。さらに、ニューヨーク100店舗計画に対し、現在の全世界店舗数は97店にとどまる。市場は今、効率を突き詰めるモデルと滞在価値を強化するモデルへと二極化している。Dutch Brosが前者で成長を続ける中、Blank Streetは後者へと大きく舵を切った格好だ。ただし、効率性を核としてきたブランドにとって、店舗の複雑化はアイデンティティの希薄化にもつながりかねない。この大胆な転換が差別化となるのか、それとも中途半端さを招くのか。その帰趨が問われている。

6. Paramountが書籍事業に再参入

Paramountは年内、新たな出版部門「Paramount Global Publishing」を立ち上げる。2023年にSimon & SchusterをKKRへ売却して以来、約3年ぶりの出版事業への再参入となる。新部門は、自社が保有するキャラクターや物語といったIPの書籍化に加え、将来的な映像化を見据えたオリジナル作品の開発も担う。紙・デジタル・音声など複数フォーマットで展開し、対象年齢やジャンルも幅広くカバーする計画だ。組織上はジョシュ・シルバーマン率いる「Products & Experiences」部門に属し、グローバル出版責任者のエイミー・ジャラショーが指揮を執る。背景にあるのは、業界で顕在化する「フランチャイズ疲れ」だ。既存ファンを持ちながら新規性も備える原作として、書籍の価値が改めて見直されている。物語の奥行きを補完し、映像化の起点としてのその役割は、今や欠かせないものとなった。Fox CorporationがHarperCollinsと組んで同様の出版レーベルを立ち上げるなど、映像と出版を往復するIP戦略は業界全体で加速しつつある。

7. 『KPop Demon Hunters』続編のビッグ・ディール

Netflixのアニメ映画『KPop Demon Hunters』は、配信開始から3カ月で3億2,500万回以上の視聴を記録。さらに賞レースや音楽チャート、マーチャンダイズ展開でも成功を収め、異例の社会現象となった。映画楽曲を軸にしたライブツアーの開催も視野に入っている。この大ヒットを受けて続編制作が正式決定、その公開は2029〜2030年頃になる見通しだ。制作を担うソニー・ピクチャーズの契約条件は大きく見直され、報酬も約4,000万ドルへと増額、さらに遡及ボーナスやマーチャンダイジング収益の分配も加わった。注目すべきは監督マギー・カンとクリス・アッペルハンスの契約だ。続編オプションが存在しなかったことで強い交渉力を持った両者は、交渉決裂寸前まで至る協議の末、Netflixと約5年の独占契約を締結。両者で年間約1,000万ドルの報酬に加え、マーチャンダイジング収益への参加という異例の条件を引き出した。続編では音楽収益にも関与する見込みで、多数のK-POPアーティストが参加に関心を示している。Netflixは本作を単発ヒットではなく、ディズニー型の長期フランチャイズとして育成する構えで、コンサートや派生展開も視野に入れる。従来の買い切り型から、IPを軸に収益を分配する共同運営モデルへ──ストリーミング企業が「フランチャイズを持つ側」へと転じる流れが、ここに明確に表れている。

8. Alo Yogaの進路

米アクティブウェアブランドのAlo Yogaが、次の成長フェーズに差し掛かっている。創業者Danny HarrisとMarco DeGeorgeは、Miu Miu元CEOのBenedetta Petruzzoを初の国際CEOに招聘した。レギンスを主軸に急成長し、米国売上は15億ドル規模に達する同社だが、その狙いは単純なラグジュアリー転換ではない。シャンゼリゼへの旗艦店出店や、3,600ドルのイタリア製レザーバッグ投入といった動きは、ブランドがどこまで通用するかを探る試みと捉えるべき動きだ。アスレジャー市場の飽和や競争激化が進む一方で、コア事業は依然として堅調に推移している。非上場ゆえの自由度を背景に、短期的な成長圧力に縛られず、新たな領域を試す余地も大きい。その戦略は、主力商品を核にラグジュアリーへと拡張したMonclerに通じる。日常着としてのレギンスを基盤にしながらブランド価値を引き上げることで、Aloがどのような持続的成長モデルを築くのか。今、米国小売の中でも特に注視すべき存在となっている。

9. 酒が売れない時代の外食ビジネス

米国の飲食店で、従来収益の柱だったアルコール売上が急減し、経営を圧迫している。アルコールは原価や手間が比較的低く、利益率の高い商品とされてきたが、その前提が崩れつつある。2025年のGallup調査では飲酒率が過去最低の54%となり、多くの店が「料理4割、酒6割」という従来モデルの見直しを迫られている。背景には、健康意識の高まりやGLP-1の普及、物価高による節約志向がある。その中でも世代交代の影響は大きい。市場を支えてきたミレニアル世代が年齢とともに飲酒量を減らす一方、Z世代は「酔うこと」よりも体験や希少性を重視する。彼らは高価な酒を何杯も飲むのではなく、1杯だけ楽しんで店を移る、いわゆる「One and Done」の行動をとる傾向がある。対策としてノンアルコール飲料の拡充も進むが、手間やコストの割に価格を上げにくく、利益面での代替にはなりにくい。一方で、アガベ系スピリッツや希少なワインなど、ストーリー性のある高付加価値商品に特化し、好奇心の強い若年層を取り込む動きも見られる。現在起きているのは単なる飲酒離れではなく、「どう飲むか」という行動の変化だ。この変化は、飲食店にビジネスモデルそのものの再設計を迫りつつある。

10. 「完璧なパイント」の注ぎ方を教えるギネス検査官

全米で、ギネスビールが空前のブームを迎えている。健康志向によるアルコール離れが進む中でも同ブランドは異例の成長を記録し、SNSでは「Split the G」に代表される参加型文化も広がっている。このブームを陰で支えているのが、ギネス米国の品質責任者ライアン・ワグナーだ。彼は全米のバーを巡回し、ときに自ら一杯を注文して味と状態を確かめながら、スタウトが常に最高の状態で提供されるよう指導している。ギネス特有のクリーミーな口当たりは炭酸ではなく窒素によるもので、その提供には「芸術」と「科学」の両面が求められる。具体的には、119.5秒をかける二段階注ぎ、泡は18〜22mm。さらに樽は約3℃で管理し、提供温度は約4〜6℃とするなど、極めて厳密な基準が設けられている。こうした細部の積み重ねが、一杯ごとの品質を左右する。元ボルチモア・オリオールズの球場アナウンサーという異色の経歴を持つワグナーは、話術と専門性を武器に現場教育を担うだけでなく、新たな提供手法に挑むバーにも足を運び、共に最適解を探る。ギネスは見た目の美しさが売上に直結するビールであり、注ぎ方ひとつで次の一杯の注文が決まるこうした徹底した品質管理が、顧客に「もう一杯」を選ばせる体験を生み出し、ブランドの成長を下支えしているのだ。

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