- The Rest Is Sheep
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#098_Sheep ぼくらが列に並ぶ理由
ニューヨークの街に増殖する「行列」は、単なる人気店のサインではない。TikTokやInstagramで可視化された行列は、社会的証明やFOMOを生み、それ自体が新たな需要をつくり出す「人気の装置」へと変わりつつある。一方で歩道を塞ぐ行列は住民や店にとって新たな負荷にもなり、「活気」と「迷惑」、「ダサさ」のあいだで揺れる文化的な論争も呼んでいる。待つ時間を他人に外注するサービスや、行列をリアルタイムで監視する仕組みまで登場するなか、私たちが本当に並んで手に入れているのは、味そのものより先に、「いま話題に参加できている自分」なのかもしれない。効率化が進む時代に、なぜあえて並ぶのか──歩道に伸びる人びとの列から、現代における熱狂と時間の格差の行方を読み解く。
#096_Sheep イン ザ・マメスープ
料理動画の投稿には「その食材、苦手なんですが」、誰かの日常のポストには「恵まれた人の話ですよね」──「ビーンスープ理論」、あるいは「What About Me Effect」とも呼ばれるSNS上のこうした振る舞いの正体は、単なるネットマナーの崩壊ではない。論点をずらす「whataboutism」とは似て非なる、自己を論点の中心に置き直す「読解の型」だ。パーソナライズされたアルゴリズムが育てる「画面はすべて私向け」という錯覚と、「包摂」の言語の武器化が、それを加速させる。他者の文脈を受け止めるしなやかさを失った私たちと、静かに侵食されるネットという共有地。「おすすめ」に慣れすぎた私たちが手放しつつある、世界を他者と共有する思考を紐解く。
#095_Sheep 有名になんてなりたくない
かつて多くの若者が夢見た「有名になること」は、いまやZ世代にとって、むしろ慎重に距離を置くべきものになりつつある。有名人志望はわずか9%。インフルエンサー志望も、数年で大きくしぼんだことを示す調査が出ている。背景にあるのは、若者像そのものへの誇張、有名になっても報われにくい経済的現実、そしてSNSによって可視化されること自体がリスクになったという、三つの構造変化だ。目立つことへの警戒は「クリンジ」という新しい行動規範を生み、憧れの対象も、露出の多いスターから、あえて見せすぎない静かな成功へと移っている。この揺れは一時的な反動なのか、それとも成功の定義そのものが変わりつつあるのか。輝きの価値が問い直される時代の感覚を追う。




