Baa,Baa,Baa. | Week of Feb 2, 2026

【Weekly Picks】LVMHベルナール・アルノーの後継者問題

カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。

The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。

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Weekly Headlines

  1. LVMHベルナール・アルノーの後継者問題

  2. 現代の「ミニ・メディチ」

  3. 映画館は再びクールになったのか?

  4. スニーカーはついにピークを迎えたのか?

  5. シカゴの文房具店に買い物客が殺到している

  6. インフルエンサーとOnlyFansモデルが米国のO-1ビザを独占している

  7. リスニング・パーティが至る所で開催されている

  8. ディナーパーティ化するファインダイニング

1. LVMHベルナール・アルノーの後継者問題

LVMHの株主の間で、ベルナール・アルノー会長の後継計画をめぐる不透明さへの懸念が強まっている。76歳のアルノーは約40年にわたり、70以上のブランドを擁する時価総額3,500億ドル規模のラグジュアリー帝国を率いてきた。しかし後継者は明確にされておらず、昨年4月には同社のCEO兼会長職の年齢上限が85歳まで延長されたことで、問題は改めて注目を集めている。一部の主要株主は、この承継計画の不透明さがガバナンス上のリスクとなり、将来的に株価へ悪影響を及ぼす「ガバナンス・ディスカウント」を招きかねないと指摘する。これに対しLVMH側は、緊急事態を含む後継計画は存在するとしながらも、その詳細を公表する考えは示しておらず、投資家との認識の乖離が浮き彫りになっている。さらに2022年の組織再編により、アルノー引退後は5人の子どもが持株会社を共同で管理する体制が整えられたが、専門家からは、経営が引き継がれた後の体制で、意思決定の停滞や対立が生じる可能性を懸念する声も上がる。長年トップに君臨してきたカリスマ経営者の後継問題は、いまやLVMH株主のみならず、市場全体が注視する現実的な経営課題となりつつある

2. 現代の「ミニ・メディチ」

テック業界の富裕層による、新たなアート支援の動きが広がりつつある。StripeのCEOであるパトリック・コリソンと、経済学者のタイラー・コーエンが「21世紀の新しい美学」を問う最大25万ドル規模の助成金プログラムを発表したことをきっかけに、VCや個人による少額・無条件のマイクログラントが相次いでいる。背景にあるのは、AIの急速な台頭による人間性や創造性の希薄化への危機感、そしてテック業界に集積する莫大な富と、慢性的に困窮する芸術家との格差の拡大だ。従来の機関投資や非営利団体による支援と異なり、こうした個人パトロンたちは、煩雑な申請手続きを排し、用途や成果を縛らない資金提供を重視している。それは、合意形成や成長指標が優先される現在のテック投資の文脈からこぼれ落ちた、非主流で人間味のある創造性を下支えしようとする試みとも言える。この支援モデルは、芸術が権力と正統性をもたらすと理解し、積極的に後援したルネサンス期のメディチ家を彷彿とさせる。現代の「ミニ・メディチ」たちもまた、紐付きではない資金提供を通じて、制度化された助成金とは異なる回路を模索している。一部には「美学は人為的に創出できるのか」という懐疑もある。しかし、経済的リターンではなく、表現者が生き延びるための時間と余白を手渡すこの動きは、技術と芸術の乖離を埋める、静かな文化政治の始まりでもある。

3. 映画館は再びクールになったのか?

映画館の未来は、ストリーミング大手の台頭によって危機に瀕していると語られがちだ。とりわけNetflixによるWarner Bros. Discoveryの買収は、劇場の独占上映期間を縮め、映画館の衰退を決定づける象徴的な出来事と受け止められてきた。しかし最新の調査データは、そうした見方に疑問を投げかける。Z世代の映画館利用は前年比で25%増加し、年6回以上来場する層も大きく伸びている。さらにα世代の約6割は、自宅視聴より劇場鑑賞を好むと回答している。デジタルネイティブである彼らにとって、ストリーミングはもはや特別な技術ではない。その反動として、映画館に足を運ぶ行為が、デジタル疲れから距離を取る知的かつ社交的なホビーへと再定義されつつある。Letterboxdや#FilmTokといったSNS上の交流は、鑑賞体験を語り、共有する文化を生み出している。映画館側も快適な座席や飲食、話題性のあるグッズなど体験価値を高め、A24やNeonといった配給会社もSNS戦略で若者を引き寄せる。ストリーミング全盛の時代にあっても、良質な作品と共有体験の場として、映画館の文化的価値は再び注目され始めている。

4. スニーカーはついにピークを迎えたのか?

スニーカー市場が歴史的な転換点を迎えている。フットウェア市場の約60%を占め、長年成長を続けてきた同市場だが、バンク・オブ・アメリカ(BofA)は、2025年の成長率が1.3%にまで鈍化すると予測し、長期的な減速局面の始まりを示唆した。BofAは、長く続いた「カジュアル化」の潮流が終焉に向かいつつあるとして、Adidasの投資判断を引き下げ、業界に波紋を広げている。背景には、NikeやAdidasといった巨頭の伸び悩みに加え、Adisasの「Samba」など定番モデルの勢いに陰りが見え始めたことがある。市場の成熟が進む中、OnやHoka、New Balanceといった新興勢力との競争は激化し、市場全体が拡大しなければ、誰かの成長が誰かの縮小に直結する局面に入りつつある。一方で、多くの専門家は悲観論に慎重だ。BCE Consultingのマット・パウエル氏は、現在の減速はパンデミック期の反動にすぎず、歴史的には年3〜5%成長が標準だと指摘する。実際、Circanaのデータではパフォーマンスやアスレジャー分野は前年比約4%増と堅調だ。2026年のワールドカップという追い風も控える中、今回の減速が一時的な調整にとどまるのか、それとも本格的なピークアウトなのかは、スニーカーに代わる新たな潮流が現れるかどうかに委ねられている。

5. シカゴの文房具店に買い物客が殺到している

シカゴの文房具店が、空前の「アナログ回帰」ブームに沸いている。SNS上でインフルエンサーやクリエイターが、デジタル疲れへの対抗としてペンや紙の価値を発信したことで、万年筆や手帳、シールを求める客が殺到した。人気店「Paper & Pencil」では入場制限が行われ、老舗の「Atlas Stationers」も2025年の売上が前年比45%増を記録するなど、かつてない活況を呈している。この動きを支えているのは、単なる事務用品需要ではない。自己表現やマインドフルネスを求める若者層が、手書きという行為に意味を見いだしているのだ。中でも「ほぼ日手帳」に代表される高いカスタマイズ性を持つ製品は象徴的で、関連イベントのチケットが即完売するほどのコミュニティを形成している。生活の多くが自動化・デジタル化される現代において、人々は触覚的で時間のかかる体験を通じ、自分自身と向き合おうとしている。SNSはその価値観を拡散するエンジンとなり、文房具は今、道具を超えた「文化的メディア」として再発見されている。

6. インフルエンサーとOnlyFansモデルが米国のO-1ビザを独占している

近年、米国でインフルエンサーやOnlyFansモデルなどのコンテンツクリエイターが、卓越能力者向けのO-1ビザを取得するケースが急増している。O-1ビザの発給数は2014年から2024年にかけて約50%増加し、従来は俳優や音楽家が中心だった制度が、SNSフォロワー数や視聴数、収益実績といった「デジタル上の影響力」を評価軸として拡張されている。実際、コロナ禍を機に活動を始め、多額の収益や安定したファン層を証明してビザを取得した事例も増えている。バズの大きさや注目度を評価軸とすることに対する批判する声もあるが、移民弁護士らは、購買行動や文化消費を動かす存在としてクリエイターを評価すべきだと主張する。当事者たちは「これこそが現代のアメリカンドリームだ」と語り、成功の定義そのものが変化している現状を浮き彫りにしている。

7. リスニング・パーティが至る所で開催されている

音楽ストリーミングが聴取体験の中心となった現代において、リスニング・パーティーが新たなアルバム発表の形として存在感を強めている。ロザリアやビリー・アイリッシュといったトップスターから、ローカルな草の根コミュニティに至るまで、このムーブメントが目指しているのは、単なるプロモーションではない。断片化されがちなデジタル環境のなかで、音楽を再び「純粋な体験」として取り戻すことだ。これらのイベントに共通するのは、暗闇や静寂、高品質な音響設備が整えられた空間で、スマホを封印し、アルバム一枚を最初から最後まで全員で聴き通すという、強い集中を伴う設計である。個々に消費されがちなストリーミング体験とは対照的に、ここでは他者と同じ時間を共有しながら音楽に向き合うこと自体が価値となる。こうした体験が支持を集める背景には、Z世代を中心としたアナログ的で意図的な体験への志向がある。リスニング・パーティーは、ライブとインスタレーションの中間に位置する、新しい音楽の受容形式として機能しているのだ。ロンドンのShai SpaceやMeet in the Midiでは、デジタル疲れやアルコール中心のナイトライフ文化に代わる場として、瞑想にも近い深い傾聴の時間が育まれている。アーティストにとっても、ツアーコストが高騰する現在、制作意図を親密に伝えられる現実的な選択肢となっている。リスニング・パーティーは、バイラリティではなく「その場に居合わせること」によって価値を生み出す。音楽を「コンテンツ」から「共有される儀式」へと引き戻すこの動きは、効率と速度が支配する時代において、私たちが注意を向け、共鳴することの意味を静かに問い直している。

8. ディナーパーティ化するファインダイニング

近年シカゴのファインダイニングでは、静かに料理と向き合う場から、他の客やシェフとの交流を前提とした「ディナーパーティ」型の体験へと変化が進んでいる。この潮流は、食事を味覚中心のイベントから、時間と人を共有する社交の場へと再定義するものだ。例えばAtsumeruやEsméでは、食事に入る前にカクテルとカナッペを囲む立食の時間が設けられ、ゲストは自然に会話へと導かれる。Class Actでは、共同皿を囲むカクテルタイムから始まり、やがて一つの大テーブルを全員で囲む構成へと移行することで、隣席との私的な会話が次第に場全体の物語へと広がっていく。ミシュラン星店を率いたTrevor TeichによるChef’s Table at Astor Clubでは、少人数の相席で豪華な食材を味わいながら、同席者の人生までもが共有される。Feldでは、食後に焚き火を囲む演出によって、形式を超えた対話が生まれる。こうした設計が生み出すのは、料理以上に「誰と、どんな時間を過ごしたか」が記憶に残る体験であり、現代の高級レストランは、まるで誰かの邸宅に招かれたような親密さを提供する場へと進化している。

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