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#079_Sheep グローサリーはいま、何を売る店なのか?
TikTokで開店前から現象化したMeadow Lane、イベントやコミュニティを組み込むHappier Grocery、食とライフスタイルを接続するBig NightやGem Home、会員制クラブや高級レジデンスと結びつくErewhonやCorner Shop──新世代のグローサリーが売り始めたのは、食品そのものではない。世界観であり、所属感であり、そこにいる自分のイメージだ。ナイトクラブやランウェイの機能まで引き受けながら、日常の買い物空間は何へ変わろうとしているのか。

“The Rest Is Sheep”は、デジタル時代ならではの新しい顧客接点、未来の消費体験、さらには未来の消費者が大切にする価値観を探求するプロジェクトです。
役に立つ話よりもおもしろい話を。旬なニュースよりも、自分たちが考えを深めたいテーマを――。
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カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネスなど、消費者を取り巻く多様なテーマをThe Rest Is Sheepのフィルターを通して紹介します。結論を出すことよりも、考察のプロセスを大切に。
グローサリーはいま、何を売る店なのか?

©︎The Rest Is Sheep
🐕「お疲れさまですー」
🐏「お疲れさまです。そういえばトライベッカのMeadow Lane、オープンしたみたいですね」
🐕「TikTokでずっと準備を見せてたから、むしろ「開かないほうが完成形なんじゃないか」なんて笑って話してましたけど、11月にちゃんと開きましたね(笑)」
🐏「オープン当日の行列、凄かったみたいですよ。極寒の中、高級パーカーを着た若者たちが延々と並んで。しかも翌日はさらに列が伸びたらしくて」
🐕「開店2週目には黒字になったって言ってましたし。開店前から13万フォロワーを抱えてたんですから、そりゃそうですよね(笑)」
🐏「で、噂のドアマンは…?」
🐕「しっかり立っているらしいですよ、グローサリーストアなのに(笑)」
🐏「バウンサー付きの八百屋(笑)」
🐕「もはや何の店かよく分からない(笑)」
@ilanawiles I respect the lack of special treatment, Meadow Lane. #nycmom #meadowlane #tribeca #nyc #nyctiktok
※ 生成AIが客観的な視点でレビューしています🐏🐕
「買う瞬間」を売る店と、「買ったあと」まで売る店
🐏「でも最近、こういうお店増えてません?食だけじゃなくて、花とか器とか本とか、空間ごと編集してる感じの」
🐕「増えてますよね。ニューヨークだとたとえばBig Nightとか、シェフのFlynn McGarryが去年開いたGem Homeとか。食料品とホームウェアを一緒に置いて、暮らし全体を見せるタイプの店」
🐏「Meadow LaneやErewhonとも、似てるようでちょっと違いますよね」
🐕「Big Nightは「買い物できるアパート(shoppable apartment)」を標榜してて、チーズを買ったら、それを盛りつける器も、ホスト役になるための空気感も全部ここで揃えられる、という発想。Gem Homeは「レストランの舞台裏を公開する」コンセプトで、厨房で実際に使っているものを全部ここで売る」
🐏「「食材を買う」じゃなくて「食をめぐるライフスタイルを丸ごと買う」ということですね」

Gem Home(Remodelista)
🐕「そうなんです。ただ、ErewhonやMeadow Laneとの違いを考えるとおもしろくて。Erewhon的な消費って、「SNS映え」「今っぽさ」「ラグジュアリーな日常の演出」──つまり買う瞬間にピークが来るようになってるわけじゃないですか」
🐏「Erewhonで撮って、シェアして、「こんなライフスタイルを生きてる私」を発信する瞬間がクライマックス(笑)」
🐕「Big NightやGem Homeはどちらかというと、買ったあとどう暮らすかまでを設計してる。いずれにしても、もう「効率よく食品を買う場所」ではないですよね」
グローサリーは「食品売場」ではなくなった

Happier Grocery(The New York Times)
🐏「その流れでいくと、前に話してたHappier Groceryもまさにそんな感じですよね。読書室にミツバチが飛び交うルーフトップガーデン、地元アーティストの展示がされてたり」
🐕「店の2階のイベントスペース「Apartment」ではチェスナイト、シェフを招いたディナー、ヨガや編み物まで開いてる」
🐏「食料品の購入はあくまでも入口で、中身は完全に別物ですね」
🐕「ニューヨーク・タイムズがHappier Groceryを「ある種の世界観(exclusive, inside knowledge)を共有したい人たちのコミュニティへの入口」と表現してたのがまさにそれで。ニュースレター「Snaxshot」のAndrea Hernándezも「グローサリーが「テイストをシグナルする場所」になった」って指摘してて」
🐏「どこで買い物するかが、その人がどういう人かを示す、と」
🐕「おもしろいのは、ビジネスの順番が逆になってることで。従来のグローサリーってどうやって効率よく回して、たくさん売るかが中心だったじゃないですか」
🐏「回転率の商売ですね」
🐕「でも今の店は、まず先に「どんな人が集まる場所か」を作る。そのあとで、その人たちに合うものを横展開していく」
🐏「客を選んで、まず集めて、それからビジネスを考える」
🐕「まさに。食品を買いに集まった人たちが同じ美意識や同じ情報感度を共有してるとしたら、その先に続くビジネスチャンスは無限にある。服も、サプリも、イベントも、メディアも、その「共通の美意識」を持つ人たちのために用意すれば良い」
🐏「もはや「食料品店」という言葉は実態を表していない(笑)」
🐕「Happier Groceryの共同創業者のWells Stellbergerは「食料品を売って利益を出すことより、自分たちが本当に興味を持てることに動かされている」とまで言い切ってて」
🐏「食料品店の皮をかぶったコミュニティプラットフォームを作ろうとしてますね」
🐕「ロンドンのCorner Shopはその最前線で。テムズ川沿いの高級レジデンス「180 The Thames」の一階に入ってて、ファッションデザイナーのAlex Eagleがクリエイティブディレクターを務めてる。彼女が言うには「食も買えるし、美容品、サプリ、服、スポーツ用品、文化的なものも全部手に入る。そうすれば、もうそこから出る必要なんてない」と」
🐏「グローサリーが不動産のアメニティになってる。もはや「食料品店という業態」じゃなくて「ライフスタイルのOS」というか、「会員制クラブ」というか。そこにいれば全部揃うプラットフォームですね」

Corner Shop(The Infatuation)
🐕「そう考えると、Erewhonのニューヨーク出店が「入会金・年会費合計で4万3千ドルする会員制クラブの中」だったのも、実は必然だったのかもしれないですよね」
🐏「排他性そのものが商品ですからね(笑)」
ナイトクラブからグローサリーストアへ
🐕「コミュニティ・プラットフォームでもあり、会員制クラブでもある。で、この「場を売る」感じ、どこかで見たことあるなと思ったら、ナイトクラブ・カルチャーで。あのMeadow LaneをオープンさせたSammy Nussdorf──」
🐏「あのお騒がせの(笑)」
🐕「はい。彼が「ニューヨークのナイトクラブは、ある意味、死んだ」って言ってるんですよね」
🐏「たしかに、ナイトクラブ、元気ないですよね。でもなんでグローサリーストアのオーナーがナイトクラブの話を?」
🐕「「ナイトクラブの代わりにいま、健康・ウェルネス業界が勢いを増しているんだ」と」
🐏「ああ、たしかに。昔だったらクラブに並んでたような若い人たちが今はMeadow Laneに並ぶわけですもんね」
🐕「昔は「夜に酔って踊る場所」がソーシャルの中心だったけど、いまはその中心が「昼に腸活ジュース飲みながら並ぶ場所」になった。時間帯も内容も変わったけど、「そこにいること自体がステータスになる」という構造は同じで」
🐏「入場制限があって、選ばれた感があって、中で過ごしたことをSNSに上げる(笑)」
🐕「かつてはVIPラウンジに入れることが「社会的通貨(Social Currency)」だったけど、今はそれが高級グローサリーの「選ばれた客」であることへ移行した」
🐏「おしゃれをしてグローサリーストアに行って、写真を撮って、あらゆるものを試食する(笑)」
🐕「はい。なので、Meadow Laneが「バウンサー付きのグローサリー」っていうのはナイトクラブ・カルチャーのDNAが食の空間に移植されたって捉えるととても象徴的だなあと」
ランウェイとしてのグローサリーストア

Chanel(REUTERS)
🐏「この流れで、2014年にChanelがグローサリーストアを舞台にファッションショーやったの思い出しました(笑)」
🐕「お、たしかに突然(笑)。ガーディアン紙が「間違いなく、彼がこれまで手掛けた中で最も素晴らしいランウェイの再解釈だった」って評したやつですよね」
🐏「グローサリーストアと高級ブランドっていう、普通だったら結びつかないような2つを組み合わせたのはインパクトありました」
🐕「グローサリーは最も日常的で、大衆的な空間なんだ、っていう前提があったわけですよね。食料品の買い物なんて「日常的で退屈な行為」の象徴だ、と(笑)」
🐏「だからこそ非日常の象徴である高級ブランドが映えたわけですもんね」
🐕「その意味では、いまはグローサリーそのものが本当に「ランウェイ化」しちゃったってことですよね」
🐏「ですね。いまのグローサリーって、もう「退屈な日常空間」じゃない。照明も、動線も、陳列も、見せ方も、ほとんど舞台として設計されてる」
🐕「舞台美術が青果売り場まで入り込んだ(笑)」
🐏「しかも来店者の側も、ただの客じゃないんですよね。見る人であると同時に、見られる人でもある」
🐕「買い物客というより、半分モデル(笑)」
🐏「ここまでくると、グローサリーってもう何なんですかね。OSであり、会員制クラブであり、ナイトクラブであり、ランウェイであり……」
🐕「はい。例えが増えるたびに、「食料品店」から遠ざかっていく(笑)」
🐏「唯一ブレずに残ってるの、野菜が置いてあるってことと、「グローサリーストア」っていうラベルだけ(笑)」
🐕「OSは最新で中身は全部アップデートされたのに、名前がバージョン1.0のままっていう(笑)」
🐏「グローサリーストアで一冊本書きますか(笑)。第1章「OSとしてのグローサリーストア」、第2章「ナイトクラブとしてのグローサリーストア」、第3章「ランウェイとしてのグローサリーストア」…」
🐕「…やめといたほうが良さそうですね(笑)」
🐏 Behind the Flock
“Sheepcore”で取り上げたテーマをさらに深掘りしたり、補完する視点を紹介します。群れの中に隠された本質を探るようなアプローチを志向しています。
1. グローサリーストアだが、食品を売ることが目的ではない
ニューヨークの高級グローサリー、Happier Groceryは、単なる食品販売ではなく、コミュニティとライフスタイルの構築を主目的とする新しい業態だ。店内には読書室や屋上庭園、アート展示、宿泊可能な空間「Apartment」を備え、ヨガや食事会、ワークショップなど多様なイベントを開催。商品販売はあくまで入口であり、「内輪的な知識」や趣味性を共有するコミュニティ形成が重視されている。この動きは、グローサリーが「テイストを示す場」へと変化したことを象徴するもので、来店そのものがライフスタイルの選択となる。さらにオフィス、会員制クラブ、ホテルへと拡張する構想もあり、収益よりもコミュニティ起点のビジネス展開が特徴。同様の潮流は他の高級店にも広がり、食品小売を超えた文化的プラットフォーム化が進んでいる。
2. Erewhonは、裕福な買い物客がチキンスープにいくらまで支払うか試している
ロサンゼルス発の高級グローサリー「Erewhon」は、富裕層が日常的な食品にどこまで支出するかを試す存在として注目を集めている。SNS映えする店内や高額なスムージー、セレブ支持を背景に、「センスの象徴」としての地位を確立。ラグジュアリー消費がバッグなどの高額商品から「手の届く贅沢」へシフトする中、その戦略が奏功した。1960年代のマクロビ思想にルーツを持つ同店は、2011年の買収後に高級路線へ転換し、会員制や限定商品で排他性を強化。さらにウェルネス志向や簡便な食習慣を取り込むことで、若年層の需要を捉えた。一方で出店はロサンゼルスに限定され、ラグジュアリーが一部の人々に向けたものであることを体現している。
3. ブティック型グローサリーストアの黄金時代
2014年、カール・ラガーフェルドが手がけたChanelのショーは、ランウェイにスーパーマーケットという「日常の風景」を持ち込むことで、ファッションという非日常との鮮やかな対比を生み出した。それから約10年、食料品店は体験型空間へと進化する。ロサンゼルスのErewhonやニューヨークのHappier Grocery、Meadow Laneなどは、カフェや雑貨、イベントを融合し、「発見」と「審美性」を提供する場となった。パンデミック以降、買い物は単なる補充ではなく小さな楽しみを求める行為へと変化し、空間デザインも価値の中核に位置づけられる。たとえばニューヨークのBig NightやGem Homeは、食と生活雑貨、さらには滞在体験までを横断的に編集し、「過ごすための店」として再構築されている。一方で日用品はECが担い、実店舗は嗜好的体験へと特化。収益性確保のため空間の多用途化も進む。かつてはランウェイが日常を取り込んだが、いまや日常のグロサリーそのものが演出される側へと反転し、日常のありふれた買い物の風景は大きく書き換えられつつある。
🫶 A Lamb Supreme
The Rest Is Sheepsが日常で出会った至高(笑)の体験をあなたにも。
今週もお休みです 🐏
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