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Baa,Baa,Baa. | Week of Dec 22, 2025
【Weekly Picks】ラグジュアリーブランドは最重要顧客向けの「体験」を強化している
カルチャー、アート、テクノロジー、ビジネス、そしてデザインやライフスタイル、ファッションやメディア──日々、私たちの周りでは何が起きていて、それは一体どんな意味を持つのでしょうか。
The Rest Is Sheepの2人が刺激を受けたストーリーを、私たちならではの視点を交えてお届けします。
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🐏 Baa,Baa,Baa.
Weekly Headlines
ラグジュアリーブランドは最重要顧客向けの「体験」を強化している
体験事業に注力するグリーティングカード会社
最高の旅行のお土産?ディナーパーティー用の食材だ
このダンスパーティーには全てが揃っている(場所はスーパーマーケットだ)
アメリカの十八番、ファストフード市場に攻勢をかけるJollibee
アメリカが渇望する「広場」というコミュニティの形
「トレンド疲れ」がファッションを変える
ビアンカ・センソリがソウルで初の個展「BIO POP」
小さな博物館がなぜ話題になるのか
1. ラグジュアリーブランドは最重要顧客向けの「体験」を強化している
世界的なインフレや経済不安により、ラグジュアリーブランドの顧客層が過去2年で約6,000万人減少するという苦境の中、各ブランドは「上位2〜4%の最重要顧客(VICs: Very Important Customers)」の囲い込みに活路を見出している。この一握りの顧客層が売上の約40%を支えているため、単なる商品の販売を超えた「情緒的なつながり」の構築が急務。かつては旗艦店でのカクテルパーティーが主流だったが、現在はより創造的で「金銭では買えない体験」へと進化した。例えば、広大なオペラハウスの舞台上での少人数ディナー、ブランドのクリエイティブ・ディレクターとのプライベートなジュエリー制作セッション、さらにはブランドCEOや著名人と席を並べるイベントなど、パーソナライズされた特別な演出が目立つ。背景には、ラグジュアリーの本質が「美しい物の所有」から「ブランドと共に創る思い出」へと移行しているという認識がある。こうした「体験型」への投資は、顧客のロイヤリティを高め、コミュニティ意識を醸成する上で極めて高い効果を上げている。一方で、顧客のロイヤルティは無条件ではなく、クリエイティブの方向性次第で揺らぐ。ラグジュアリーの未来は、記憶と感情をいかに創出できるかにかかっている。
2. 体験事業に注力するグリーティングカード会社
創業115年を誇るグリーティングカード業界の巨人Hallmarkが、グリーティングカードとメディア事業に続く「第三の柱」として、体験型ビジネスを本格化させている。同社はこれまで、家族向けの心温まる映画制作を通じて強固なファン層を築いてきたが、現在、その物語の世界を現実で体験できる場を提供することで、ブランド価値の最大化を図ろうとしている。具体的な施策として、人気俳優陣と交流できるテーマクルーズや、本社のあるカンザスシティを映画のような空間に変える「クリスマス・エクスペリエンス」を展開。2024年のクルーズは即完売し、数万人のキャンセル待ちが出るほどの熱狂を呼んだ。今後はクリスマス以外の季節にもこのモデルを拡大し、全米各地を巡るツアーなども計画されている。単なるコンテンツ制作に留まらず、カード、映像、そして体験を連動させることで、顧客を「物語の一部」へと誘う独自のファン経済圏を確立しようとしている。
3. 最高の旅行のお土産?ディナーパーティー用の食材だ
旅の土産として最も満足度が高いのは、キーホルダーやTシャツのような「モノ」ではなく、旅先で出合った「食材」だ。現地のスーパーで買った調味料や菓子、保存食を使い、帰国後に友人を招いてディナーパーティーを開くことで、旅の記憶を五感で共有できるからだ。これはかつての「旅行後スライドショー」の現代版ともいえる。近年、旅行中にスーパーを訪れたり、現地ならではの食品を探したりする人が増えており、フードツーリズムの広がりとも重なる。料理の腕は必須ではなく、地元の店の料理に旅先の食材を添えるだけでも十分。調理に失敗しても楽しめるのが魅力で、それも含めて良い思い出になる。最高の土産とは、持ち帰る物ではなく、帰国後に人と分かち合う体験なのだ。
4. このダンスパーティーには全てが揃っている(場所はスーパーマーケットだ)
北米最大のフィリピン系スーパー「Seafood City」では、11月初旬からクリスマスソングが響き渡り、レジ横のDJブースを囲んで買い物客が踊るという異例の光景が広がっている。これは「Late Night Madness」と題されたイベントで、フィリピンの伝統的なクリスマス祝祭「Noche Buena(ノーチェ・ブエナ = 聖夜)」の精神を現代的に、そしてコミュニティに根ざした形で表現したものだ。国民の90%以上がキリスト教徒(80%以上がカトリック教徒)であるフィリピン文化において、クリスマスシーズンは「Ber Months(「-ber」がつく月)」を通じて続く非常に長いもので、特に「Noche Buena」は家族や友人と深夜まで豊かな料理を分かち合う大切な行事とされてきた。食卓にはレチョン(豚の丸焼き)や伝統的な米菓子ビビンカ、アメリカ植民地時代の面影を残すフルーツサラダなど、貧困の歴史を背景とした「豊かさへの願い」が込められた贅沢な料理が並ぶ。カリフォルニアの店舗で始まったこのDJイベントは、若年層への文化継承とフィリピンのストリートフードの提供を目的としている。かつて母国において貧しさを経験した親世代にとって、音楽と食事、そして人との繋がりは唯一無二の娯楽だった。その「共生の精神」は、今やスーパーマーケットという日常の場を、世代を超えて自らのルーツを祝福する熱狂的なダンスフロアへと変貌させている。
5. アメリカの十八番、ファストフード市場に攻勢をかけるJollibee
フィリピンといえば、同国発のファストフードチェーン「Jollibee」が、米国市場で急成長を遂げている。現在アメリカ国内に約80店舗を展開し、その独特な味わいが注目を集めている。Jollibeeの看板商品「Chickenjoy」は、ニンニクや柑橘類、発酵調味料の風味が特徴で、USA TodayとEaterから全米ファストフード最高のフライドチキンと評価された。また、グリルパイナップルを挟んだ「Aloha Burger」や、甘いミートソースとホットドッグのスライスがトッピングされた「Jolly Spaghetti」など、アメリカ人にとっては型破りなメニューが並ぶ。同社は1978年にフィリピンで創業。アメリカ植民地時代の影響を受けつつ、フィリピン独自の味覚──酸味、甘味、塩味、旨味を最大限に引き出した料理を開発してきた。1980年代にマクドナルドがフィリピンに進出した際も、より濃厚な味わいと手頃な価格で対抗し、市場シェアで勝利を収めた。フィリピン系移民の多い地域から北米展開を開始し、2030年までに北米で500店舗展開を目指している。タイムズスクエアの旗艦店はマクドナルドのすぐ近くだ。かつてアメリカが輸出したファストフード文化が、独自の進化を遂げて逆輸入されている。
6. アメリカが渇望する「広場」というコミュニティの形
ヨーロッパの都市に見られる広場(PiazzaやPlaza)は、人々が歩いて集い、消費を前提とせずに佇み、自然な交流が生まれる「コミュニティの中心」として機能してきた。近年、多くのアメリカ人が海外旅行を通じてその魅力を体験する一方、帰国後には車移動が前提で人と出会いにくい米国都市の孤立感に直面する。ヨーロッパの都市が自動車以前に人間中心で設計された広場と街路のネットワークを持つのに対し、戦後の米国は自動車と郊外のマイホームを「豊かさの象徴」とし、高速道路や駐車場を優先して都市を再編してきた。その結果、歩行可能性の世界ランキングで北米の都市は最下位に沈み、半数以上の人が「歩ける場所」に住みたいと望みながら、実際にそうした環境が整うのは全体の8%未満にとどまっている。一部の歴史的都市を除けば、米国の公共空間は通過や消費の場に偏り、偶然の出会いや滞在を許す広場は希少だ。しかし孤独感の拡大やデジタル化への反動を背景に、歩行者中心の生活空間への需要は高まりつつある。広場を核にした自家用車不要のコミュニティ「Culdesac Tempe」もその兆しだ。欧州型の広場文化を即座に再現するのは容易ではないが、旅によって培われた「歩ける街」への欲求は、アメリカの都市像を問い直す静かな原動力になり始めている。
7. 「トレンド疲れ」がファッションを変える
近年、SNSやファストファッションの台頭により、流行が数日で移り変わる「マイクロトレンド」が加速した。しかし、パーソナルスタイリングサービス「Stitch Fix」の最新レポートによると、消費者の3分の2がこの目まぐるしい変化に「トレンド疲れ(trend-fatigue)」を感じ、流行から目をそらし始めている実態が明らかになった。具体的には、「クワイエット・ラグジュアリー」など特定の美学を追うのではなく、黒のトップスや白のシャツといった「時代に左右されない定番アイテム」への回帰が鮮明となっているという。消費者は、ジェニファー・アニストンのような一貫性のあるクラシックなスタイルを求め、ベーシックな装いにジュエリーやチリ・レッドの小物で個性を添えるスタイルを選んでいる。こうした「空白」や「平穏」への欲求は、PANTONEが2026年の色に白系の「クラウド・ダンサー」を選んだことにも象徴されている。このトレンド離れは、衣類の大量廃棄を防ぎ、環境負荷を軽減するサステナビリティの観点からも好ましい変化であり、業界の流行に振り回されず、質の高い定番に投資する「ポスト・トレンド」の時代は、私たちを過剰な消費から解放する一歩となるかもしれない。
8. ビアンカ・センソリがソウルで初の個展「BIO POP」
Ye(カニエ・ウェスト)の妻として、また過激なファッションで物議を醸してきたビアンカ・センソリが、韓国、ソウルでパフォーマンス作品「BIO POP」を発表し、現代アートの世界へ正式に足を踏み入れた。BIO POPは「客体化」「家庭性」「女性性」をテーマにしたセルフポートレート的な試み。赤いラテックスのボディスーツに身を包んだビアンカは、キッチンでケーキを焼く儀式を行い、それを医療用松葉杖を組み込んだ家具に拘束された「自分に似たパフォーマーたち」へ捧げる。キッチンを「ケア、労働、期待が交差する起点」と定義し、私的な場での役割が公的な人格を形成する過程を表現した。彼女はインタビューにおいて、自身の活動を「生物(BIO)と大衆文化(POP)が交差するスペクタクル」と称し、自身を「人々の精神を映し出すための記号」として扱っている。既存のアーティストの模倣であるとの批判も一部で見られるが、自身の「公的人格」そのものをアートに昇華させる彼女の姿勢は、支配と自律の境界線を問い直すものだ。本作は今後7年間にわたる全7部のシリーズの序章としての位置づけで、現代社会における身体と消費のあり方を巡る、長い対話の始まりを告げている。
9. 小さな博物館がなぜ話題になるのか
アメリカの小規模美術館が、TikTokを活用した新しい広報戦略で注目を集めている。マサチューセッツ州のウスター美術館やニューヨーク州のフェニモーレ美術館などは、所蔵する絵画や彫刻に流行の音楽やミームを組み合わせた動画を制作し、若年層へのアピールに成功している。フェニモーレ美術館のソーシャルメディア担当者は、19世紀の作品と1990年代のヒップホップ曲を組み合わせるなど大胆な手法で2万9千人以上のフォロワーを獲得。ある母親は、こうした投稿をきっかけに子どもたちが民俗芸術に興味を持ち、数時間かけて実際に美術館を訪れる計画を立てたという。美術館側は、この取り組みを「アートの民主化」と位置づけ、「高尚で排他的」というイメージの払拭を目指している。メトロポリタン美術館も「象牙の塔ではない」姿勢を示すためTikTokを活用。ゲティ美術館では、18世紀の磁器猫の動画が28万9千回以上再生され、実際に来館者が作品を訪れる効果も出ている。直接的な来館者増加との因果関係は測りにくいものの、認知度向上という教育機関としての目的は達成されており、文化的な会話の中心に美術館を位置づける新しい試みとして評価されている。
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