#088_Sheep 小咄「和牛」

日本が誇る霜降り牛肉「和牛」が、いまや世界中で「Wagyu」として親しまれている。しかしメニューに並ぶのは、日本産だけではない。アメリカ産、オーストラリア産、ニュージーランド産──半世紀前に海を渡った和牛の血統は、それぞれの土地の気候や食文化のなかで独自の進化を遂げてきた。いまやWagyuはコストコに並び、バーガーやサンドイッチの具材にもなる一方で、その名が広がるほどに「Wagyuとは何か」は分かりにくくなり、誤表示や品質への疑念も生まれている。なぜ和牛は世界へ広がったのか。そして、日本産和牛とAmerican Wagyuは何が違うのか。日米それぞれが「本物」の定義を問い直すなか、世界を魅了した和牛が直面する、新たな価値の物語を紐解く。

“The Rest Is Sheep”は、デジタル時代ならではの新しい顧客接点、未来の消費体験、さらには未来の消費者が大切にする価値観を探求するプロジェクトです。

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そんな思いで交わされた「楽屋トーク」を、ニュースレターという形で発信していきます。

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小咄「和牛」

©︎The Rest Is Sheep

えぇ、本日もたくさんのお運び、まことにありがとうございます。

ここのところ、なんとも暑い日が続いておりまして。こういう日は冷たいビールに焼肉、と相場が決まっておりますが、皆さま最近「美味い肉」食べてらっしゃいますか?

つい先日、久々にシンガポールに行って参りまして。アメリカから移動してくる友人と現地で落ち合いましてね、仕事もひと通り終わったところで「さて晩飯でも行こうじゃないか」となりまして。

私なんかは、えーと、ホーカーっつうんですか?地元の屋台飯なんかつまみながらアジアのぬるいビールでも、なんて思ってたんですが、どういうわけか友人がステーキを食べてぇと。なんとも不思議な野郎ですよ…ステーキの本場みてぇなとこに住んでるやつがシンガポールまで来てわざわざステーキなんか食いたいもんかねぇと思ってですね。

でもまあ私も嫌いじゃないんでね、ガッツリうまい肉でも食おうかってんでスマホで探して、結局「Cut by Wolfgang Puck」ってステーキ屋に行くことにしたわけでございます。ウルフギャング・パックさんというのはハリウッドのセレブ御用達で有名なスター料理人でして、昔ラスベガスで食べたのをふと思い出しましてね。予約も取れたんで、二人で出かけていったんです。

で、メニューを開いてみたら、こんな一行がありましてね。

「WAGYU FROM AMERICA, AUSTRALIA & JAPAN」

アメリカ産の和牛、オーストラリア産の和牛、日本産の和牛、三種類がいかにも自然に並んでやがる。

私なんかはね、それなりに高級なお店で「和牛あります」って言われたらもちろん日本の和牛だと思うじゃないですか。驚いてたら横にいる友人が急にアメリカ風を吹かしてきましてね、「いやぁ最近アメリカはAmerican Wagyuだらけですよ」なんて言い出しやがる(笑)。

Cut by Wolfgang Puck

そりゃあ私なんかもたまに海外行ったりしますんで、タイやらマレーシアやらのスーパーでオーストラリア産の和牛が売られているのはだいぶ前から知ってたんですがね。でも、高級ステーキハウスのメニューに、当たり前みてぇな顔していろんな国のWagyuが並んでるのを見ると、さすがに驚いちまいますな……。

※ 生成AIが客観的な視点でレビューしています🐏🐕

和牛とはなにか

若旦那:
師匠、師匠!ロサンゼルスにできた「Cheesesteaks by Matū」っつうチーズステーキ屋が大行列だってんで、SNS覗きにいってみたら、想像してたもんと全然違いやして(笑)。

師匠:
おおかたサンドイッチじゃなくてステーキだと思いこんでた、ってぇところじゃないかい?

若旦那:
なんで分かっちまうんですか(笑)。てっきり豪快な厚切りのステーキを想像してたらまさかのサンドイッチで。でも写真で見るとこれがまたうまそうで(笑)。

Matū Philly Cheesesteak (Cheesesteaks by Matū)

師匠:
チーズステーキっつったら、薄切り肉と溶けたチーズをロールパンに詰めたフィラデルフィア発祥のサンドイッチ、それが相場ってもんだ。

若旦那:
さすが師匠、よくご存知で。でもね、もう一つ驚いたことがありまして。

師匠:
ほぉ、そりゃなんだい。

若旦那:
そのチーズステーキに使われてる肉が、ニュージーランドのFirst Light Farmsで育てられたグラスフェッド「Wagyu」だっつうじゃないですか。ニュージーランドの和牛なんてもんがあるんですかい?

師匠:
お前さんそんなことで驚いてちゃいけないよ。アメリカ産にオーストラリア産、ニュージーランド産、今や世界中にいろんな和牛がある時代ってことさ。

若旦那:
そうおっしゃいますがね、「和牛」って「和の牛」って書くくらいですし、日本の牛のことじゃないですか。それがニュージーランド産ってのはいったいどういう理屈でそうなるんですかい?

師匠:
確かに字面だけ読んだらそうなるな。じゃあお前さんのいう和牛ってのはどういう定義になるんだい?

若旦那:
そりゃまあ……日本で生まれて、日本で育てられた牛ってことになりますかね。

師匠:
残念だがそれじゃ50点だな。日本で「和牛」と表示できるのはな、農林水産省が決めた四つの品種だけよ。黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種──この四品種とそれらの交雑種で、かつ日本国内で育ったもの、これが条件だ。だから逆にいうと、日本で育った牛でも、この品種に当てはまらなければ「和牛」じゃあねえ。

JFOODO

若旦那:
日本で生まれて日本で育った牛なのに和牛じゃない牛がいるんですかい。

師匠:
その通りよ。そういうのは「国産牛肉」とは呼べても「和牛」にはなれねえんだな。実は国内で流通している牛肉のうち、和牛はざっくり全体の2割くらいしかねえんだよ。

若旦那:
へえ、2割!意外と少ないんですねぇ。ちなみにその四品種、一番多いのはどれですかい?

師匠:
和牛の9割以上が黒毛和種だよ。お前さんの大好きな松阪牛も、神戸牛も、近江牛も、米沢牛も、ブランド牛のほとんどが黒毛和種だ。

若旦那:
なるほどねぇ。あ、師匠、ついでにお聞きしたいんですがね、「A5」とか「A4」ってのはありゃいったい何ですかい。A5が一番うまそうで高そうだってことくらいは想像つくんですが。

師匠:
ありゃあ和牛とは関係のねぇ枝肉の格付けでな。「A」「B」「C」ってのは一頭の牛からどれだけ肉が取れるかっつう「歩留まり」のことだ。Aが一番多く取れる、Bは普通、Cはちょっと少なめ。で、数字の「5」「4」ってのは霜降りの具合や肉の色なんかを組み合わせた肉質の評価さ。

JFOODO

若旦那:
じゃあ「A5」ってのは「一頭からたくさん肉が取れて、その肉質も最高」ってことですかい。

師匠:
そういうこった。ただな、ここが一番肝心なんだが、A5というのはあくまで業者がセリで取引するための指標として生まれたもので、消費者が食べたときの「旨さ」を保証するスコアじゃあねえんだ。近頃じゃ「A5」が魔法の言葉みたいになっちまって、グルメ番組なんかじゃA5ランクの牛肉を「最高級の牛肉」なんつって紹介してるけどよ、あくまでも「歩留まり」と「肉質」。消費者が食べて感じる「旨さの点数」じゃあねえのさ。

若旦那:
勝手に「A5=一番美味い」だと思い込んでやした(笑)。でも、和牛っていやぁやっぱり、肉に網の目のように入り込んだ霜降りのイメージがありますけど、それも「肉質」に関係あるってことですかね?

師匠:
その通りよ。専門用語で脂肪交雑(BMS: Beef Marbling Standard)って言うんだがな。この霜降りのモノサシは国際的には1から12までの基準があるんだよ。アメリカン・ビーフの最高格付けである「USDAプライム」もジューシーで素晴らしい肉だが、このBMSのモノサシでいうと、せいぜいスコア「5」で頭打ちになっちまう。ところがだ、日本のA5和牛の霜降りは、その遥か上、最高値のスコア「12」まで突き抜けるんだよ。

若旦那:
ひええ!12!異次元の霜降りってことなんですねぇ!

JFOODO

師匠:
しかもその脂がな、人間の体温に近い非常に低い温度で溶け始めるのさ。だから口に入れた瞬間に、まるで飴玉のようにトロリと溶けて、甘みと濃厚なコクが広がる。向こうはな、だいたい若いうちに出荷する。日本の和牛は、そこからさらに長く手ぇかけるんだ。

若旦那:
時間と手間をかけた分だけ、あの脂ができるわけですかい。

師匠:
和牛は日本の生産者さんたちが長い間かけて蓄積してきたノウハウの結晶なのさ。

世界に広がる「Wagyu」

若旦那:
なるほどねぇ。和牛の凄さはよぉく分かりやした。でも師匠、それにしても「日本国内で育ったもの」っつぅルールがあるってんなら、なんでアメリカ産だのニュージーランド産だのの「海外産Wagyu」が存在できるんですかい?

師匠:
日本の農水省のルールってのは、日本国内にしか及ばないわけだからな。海外でどう名乗ろうが、日本の法律が口を出せるもんじゃあない。

若旦那:
それを言っちゃあ元も子もねぇっすね。アメリカだろうがオーストラリアだろうが、どこで育てようがどんな肉だろうがそれぞれの国のルールで「Wagyu」ってつけられちまうってことですかい。

師匠:
いやいや、話はそう単純じゃあねえんだよ。今、海外でまっとうに流通している「Wagyu」は、ただ名前を騙っているわけじゃない。少なくとも建前上は、日本の和牛にルーツを持つ牛たちなんだ。

若旦那:
ええっ!?日本の和牛の血統が、どうして海外の牛に受け継がれてるんです?

師匠:
1976年、今からちょうど半世紀前だ。アメリカのコロラド大学が研究目的で黒毛和種と褐毛和種の種雄牛各2頭を米国に持ち込んだのが最初のきっかけでな。

若旦那:
日本の外に出しちまったわけですかい?

師匠:
1999年にようやく生産者団体の輸出自粛が始まったんだが、それまでに生体で247頭,凍結精液1万3千本が輸出されちまってた。

若旦那:
それが広がってっちまったってことですかい。研究目的とはいえ和牛の生体や精液の輸出って厳しく管理されてるもんだと思ってました。

師匠:
ところがな若旦那。和牛が世界で人気になった頃、日本はまだ「遺伝資源をどう守るか」って話が追いついてなかった。

若旦那:
後手に回っちまったんですかい。

師匠:
その通りさ。2019年には和牛の受精卵を中国へ持ち出そうとした事件まで起きてな。

若旦那:
あぁ、ありましたねぇ。ニュースで見たの、覚えてますよ。

師匠:
その時ですら日本にゃ和牛の遺伝資源の海外流出を取り締まる法律がなくてよ。適用できる法律が「家畜伝染病予防法」──要は病気の流行を防ぐための法律しかなかった。ようやく2020年になって、遺伝資源の流出を取り締まる法律が整備されたってわけだ。

若旦那:
2020年!ついこの間じゃねえっすか。ってことは、それまでに海外に渡っちまった和牛の子孫たちは、もうどうしようもない、と。

師匠:
そういうこった。アメリカに渡った和牛の遺伝子は、そこからさらにオーストラリアなんかにも広まってな。今やオーストラリア国内だけで、和牛の血を引く牛が49万頭も育てられてるっつうんだから、もう止まりやしねえよ。

アメリカン和牛の広がり

若旦那:
なるほどねえ。つまり日本の和牛には日本のルールがあるが、海外はもうそれとは別に独自の「Wagyu」文化が育っちまってる、ってことですかい。

師匠:
昔はな、海外で「Wagyu」つったら日本から来た、あの超高級な霜降りの塊をありがたがるもんだったんだ。ところが今じゃアメリカでも、オーストラリアでも、ニュージーランドでも、和牛の血を引く牛が当たり前のように育てられてる。

若旦那:
でも師匠、アメリカ人がそんなに和牛好きだとは思いませんでしたよ。あっちの人は、噛みごたえがあって、肉の旨みがしっかりある「ビーフらしさ」が好きなんだと勝手に思ってましたがね。

師匠:
そこがおもしろいところでな。いまアメリカで作られてる「American Wagyu」ってのは、アメリカ人の味覚にあわせてどんどんと改良が進んでるのさ。

若旦那:
アメリカ人の味覚に合わせた和牛?それってどういうことですかい?

師匠:
和牛をアンガスと交配させたり、さらに和牛の血を掛け合わせる「戻し交配」ってぇのを重ねたりしてな。和牛特有のトロリと溶ける霜降りと、アメリカ人が大好きな肉本来の旨味、ガッツリとした噛み応え──その両方をいいとこ取りした、理想の高級肉へと仕上げていってるのさ。

左から米国産ビーフのリブアイ、アメリカン和牛、日本産和牛(Outside)

若旦那:
へぇぇ!ただのパクリじゃなくて、あっちの好みに合わせてデザインされた独自のWagyuってことですか。

師匠:
最近のアメリカじゃWagyuがバーガーやピザ、ケバブやバーベキュー、サンドイッチにまで入り込んでる。昔は高級店で小指の先くらいのひとかけをありがたく食うもんだったのが、今じゃコストコまで扱う時代だってんだから、ずいぶん身近になったもんだよ。

若旦那:
Wagyuってラベルがついてりゃ客が喜ぶ。すごい時代になったもんですなぁ。

師匠:
昔は「神戸牛」って書いてありゃありがたかった。今じゃ「Wagyu」って書いてありゃありがたい。それだけでハクがつくブランドになったわけさ。ただ、人気が出りゃ当然、裏で問題も起きててよ。偽装肉もあるし、不当な長期冷凍や脂肪注入肉なんて怪しい詐欺まで横行してる。

若旦那:
悪いやつがいるもんですなぁ。Wagyu人気がここまで広がっちまうと、そういう輩がどんどんでてきやがる。しかも海外だと日本の厳格なルールも適用できねぇときてる。

師匠:
それがよ若旦那。去年「American Wagyu Association(米国産Wagyu協会)」が、USDA認証の「Authentic Wagyu」ってぇ新しい表示制度を始めたんだ。霜降りの度合いを厳しく検証したり牛の血統を日本の和牛まで遡って、ちゃんと「本物のWagyu」だと証明しようってわけさ。

Authentic Wagyu Label (American Wagyu Association)

若旦那:
「The End of fake Wagyu」ってなかなかに強烈じゃねえっすか(笑)。日本の和牛の遺伝資源が勝手に広まっちまった先で、「Wagyu」の信頼と品質を守ろうとしてるってのはあっしには何だか不思議な話に聞こえますがねぇ(笑)。

師匠:
まあただ、アメリカの生産者たちも分かってはいるのさ。Vermont Wagyuっつう牧場を経営するシーラ・パティンキンさんは「最高品質のアメリカン和牛では、日本の和牛に迫るほどのサシが入るようになっています。でも、それが言いたいことではありません。アメリカン和牛は日本の和牛のコピーではないのです。アメリカン和牛は独自の個性と価値を持つ存在として発展してきました」って胸を張ってるよ。

若旦那:
日本は日本で「本物の和牛」を守ろうとしてる。アメリカはアメリカで「本物のAmerican Wagyu」を作ろうとしてる。そういうことですな。

Vermont Wagyu

和牛の未来

師匠:
そう。日本の和牛の遺伝資源が思わぬ形で世界に流出しちまったのは不幸だったけどな、海外で日本と全く同じ環境の和牛が育てられてるかっつぅと、そういうわけでもねえ。

若旦那:
日本の生産者たちが長い時間をかけて築き上げてきたお宝はきちんと管理しなきゃならねえが、もうこれだけWagyuが全世界に広がっちまってるわけで、前向きに未来のことを考えたいもんですな。

師匠:
若旦那にしちゃ良いこと言うじゃねえか。そういやニューヨークでTogyushiっつうレストランの総料理長をやってる山崎賢一郎さんが「カリフォルニアロールが参考になるんじゃないか」っておもしれえこと言っててな。

若旦那:
ほう、カリフォルニアロール、ですかい。

師匠:
そうよ。「寿司は日本発祥ですが、その国際的な普及を大きく後押ししたのは、カリフォルニアロールに代表されるアメリカならではの創意工夫でした。そうした新しい試みは、伝統的な寿司の価値を損なうどころか、寿司そのものを世界的な食文化へと押し上げる原動力になったのです」と。

若旦那:
言われてみりゃあ、そうとも言えますなあ。変わり種のロール寿司が流行れば流行るほど、日本にあるカウンターの江戸前の鮨屋が、かえって輝いて見える。

師匠:
アメリカン和牛の普及は、純血の日本産和牛の価値を損なうものなんかじゃなくて、むしろその魅力を支える役割を果たしているんじゃねえかって。

若旦那:
寿司もそうですが、ワインだって日本酒だっていまや世界中で作られてるわけですもんなぁ。

師匠:
日本の和牛は日本の和牛としての価値を保ちながら、世界中の多様なWagyuと共存していくことになるのかもしれねぇな。

若旦那:
師匠、そう考えてみると、なんだかあっしもアメリカン和牛ってやつを食べてみたいって気になってきましたよ。

師匠:
お前さんそれがよ、アメリカン和牛はもう日本にたくさん入ってきてるんだよ。

若旦那:
えええ、そうなんですか?

師匠:
牛丼チェーンやファストフード、カジュアルなステーキハウス。実は日本でも知らず知らずのうちに、輸入のアメリカン和牛を扱う店が増えてるのさ。

若旦那:
じゃあもう既にアメリカン和牛食べてる可能性、かなり高ぇってことですかい(笑)。

🐏 Behind the Flock

“Sheepcore”で取り上げたテーマをさらに深掘りしたり、補完する視点を紹介します。群れの中に隠された本質を探るようなアプローチを志向しています。

1. 「アメリカン和牛」が注目を集めている理由

米国で「アメリカン和牛」が急速に存在感を高めている背景には、日本産和牛への憧れと、米国人の肉文化に合った新たな高級牛肉への需要がある。アメリカン和牛の多くは、和牛種とアンガス牛などを掛け合わせた交雑種で、和牛特有の豊かなサシや柔らかさを持ちながら、米国人が好む「肉らしい噛み応え」や大ぶりなステーキ向けの食感も備えている。和牛人気は、2000年代の日本産牛肉輸入規制や「神戸牛」ブームをきっかけに拡大したが、米国では表示規制が曖昧で、「Kobe」や「Wagyu」の名称が広く商業利用されてきた経緯もある。一方で近年は、消費者側の知識向上により、血統や飼育方法、脂肪交雑度(BMS)への理解が進み、透明性が重視されるようになった。日本産A5和牛は、口の中で溶けるような脂の甘さと繊細さが特徴だが、濃厚すぎると感じる米国人も多い。その中でアメリカン和牛は、和牛由来の複雑な脂の風味と、従来の米国産プライムビーフの力強い肉感を両立した「中間的存在」として支持を広げている。品質差は大きいため、信頼できる生産者や明確な情報開示が重要であり、単なる模倣ではなく、米国独自の高級牛肉文化として発展しつつある。

2. アメリカン和牛の拡大

アメリカン和牛は、日本の和牛品種とアンガス牛を交配させたもので、純血種(フルブラッド)に比べて手頃な価格でありながら、豊かな霜降りと旨味を楽しめる高品質な牛肉として注目を集めている。2025年1月にはUSDAが「Authentic Wagyu」認定制度を導入し、DNA追跡により100%和牛であることを証明できるようになった。これにより、2010年代初頭に問題となった虚偽表示への信頼回復が進み、導入した農場ではオンライン販売が22%増加したという。フルブラッドの和牛は飼育期間が通常の約900日と長く、筋肉内脂肪が多くオレイン酸を豊富に含むため、深い旨味と滑らかな食感が生まれる。遺伝改良の進歩により、アメリカのフルブラッド和牛の霜降り度は急速に日本産に近づいている。レストラン業界でもアメリカン和牛の採用が広がっており、輸入A5和牛に比べ価格面・流通面で優位性があると評価されている。寿司文化がカリフォルニアロールを通じて世界に広まったように、和牛も多様な生産スタイルを包括しながら国際的な食文化カテゴリーへ発展する可能性を持つとの指摘もされている。

3. 米国で流通する「神戸牛」の真実(2014年)

2009年以降、米国では日本産牛肉の輸入が禁止されていたため、それ以前に「神戸牛(Kobe Beef)」をメニューに掲載していた数百のレストランはすべて偽物を提供していた。2012年8月にUSDAが輸入規制を緩和したことで輸入が再開されたものの、その量は極めて少量にとどまる。日本には年間約3,900頭しか基準を満たす神戸牛は存在せず、うち輸出されるのは約1割のみ。香港やシンガポールなどアジア各国の需要急増もあり、2013年11月までの米国への輸入量はわずか約1,460kgに過ぎなかった。欧州への輸出はゼロであり、現地のメニューに「神戸牛」と記載があればすべて偽物とみなせる。米国でも偽物が横行しており、さらに、「Japanese Beef」や「Wagyu」、「Domestic Wagyu」といった表記には明確な規制がなく、交雑種も多いため、消費者には判別が難しい状況が続いている。消費者が本物を見分けるには、神戸肉流通推進協議会の認定を受けた正規輸入業者・レストランを利用すること、個体識別番号を公式サイトで照合すること、そして極端に安価な場合は偽物と判断することが有効な手段となる。

🫶 A Lamb Supreme

The Rest Is Sheepsが日常で出会った至高(笑)の体験をあなたにも。

今週もお休みです 🐏

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